押し付けられる 4
目の前まで来たアナリズが尋ねてきた。ルーチェは自分の部屋のドアを開けたまま、アナリズを部屋の中へと招き入れる。アナリズはルーチェの後ろについて部屋へと入ってきた。
ルーチェは持っていた通信端末をチェストの上に置いてあったナイフホルスターに立てかける。アナリズと一緒に見られるようにするためだ。
「ポラーレが話があるって」
「ポラーレさん? ……えーっと、はい。何でしょうか?」
アナリズが戸惑いながら通信端末の向こうにいるポラーレへと声をかけた。
ポラーレはというと小さく咳ばらいをしてから、話し始めた。
「アナリズさん。先日から大変だったと思います。お疲れ様です」
「い、いえ。大丈夫です」
「それならよかったです。話というのは今後のことです。警察やピエノパッチのマスターと相談した結果、しばらくの間、ルーチェさんと行動を共にしてもらいたいという話になりました。お願いできませんか?」
ポラーレの話の意図がわからず、どこかぼんやりとしていたアナリズ。答えを口にした時も先ほどと同じく戸惑ったものになっていた。
「あー、えーっと、どうしてですか?」
「そうですね。簡単に言えばアナリズさんを守るためと思っていただければ」
ポラーレの答えを聞いたアナリズが隣にいるルーチェへと視線を向けてきた。ルーチェはその視線を見返しながら、黙ってうなずく。
「さっきルーチェさんが話していた、報復、とかいうやつのためですか?」
「そう」
一言だけルーチェは答える。それを聞いたアナリズは視線をポラーレへと向けた。横から見た限り、どこかおどおどとしているようにも見える。
「あのー一緒に行動するっていうのは、具体的にどういうことをするんですか? 守ってもらえるのはありがたいですけど、何にもしないというわけにもいかないでしょうし」
「話が早くて助かります。そうですね。具体的には、ルーチェさんの仕事の手伝いになります。といっても、たいていはこちら、またはルーチェさんからお願いすることに従ってもらえればいいのですが」
「わ、わかりました。今何かお手伝いする仕事があるんですか?」
「っと、その前に一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
ポラーレが指を一つ立てながらどちらに聞くともなく話しだした。拍子抜けしたようにルーチェとアナリズはお互いの顔を見合わせ、同時に通信端末の画面へと目を向ける。
画面にはニコリと二人を見ているポラーレの顔があった。
「お聞きしたいのはアナリズさんに、です。ここ数日、マスターからそちらにいらっしゃるとお聞きしていました。ご自宅に帰らなくてもよろしいのですか? ご家族が心配されていないのでしょうか?」
顔は正面を向けたまま、視線だけで横にいるアナリズへと視線を向ける。包帯に隠れていない左目だけが、通信端末をじっと見ていた。じっと見つめたまま、アナリズは鼻から息を吐き出す。
「それは、問題ないです」
その口調はさっきまで聞いていたものとは異なり、はっきりとしたものにルーチェには聞こえる。あえて口は挟まず、静かに成り行きを見守ることを選ぶ。
「アナリズさん、それはどういう?」
「言葉通りの意味です。問題は、ありません」




