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同居人たち 17

「……わかったわぁ。だったらぁ、ルーチェちゃぁん!」



 マスターがルーチェを呼んだ。返事をせずに、マスターへと顔を向ける。


「アナリズちゃんの面倒見てあげてねぇ? 一緒にお仕事してきてねぇ」


「ちょっ!?」


 突然のことにルーチェは声をあげると同時に立ち上がる。立ち上がった拍子にテーブルを叩き、テーブルの上にあった料理が少しだけ宙を舞った。カランカランという音とともに、皿が踊っていたが、マスターはそれをスプーンで上から押さえた。


「しかたないでしょぉ? ルーチェちゃぁんが目を覚ますまでの間にぃ、ピエノパッチの店員さんしてもらおうかなぁって思ったけどぉ、包帯は取れないしぃ、料理できないしぃ、重たいものを持ったりぃ、オリチェちゃぁんみたいに、お皿いっぱい持って運ぶこともできないしぃ……」


 マスターが話すたびにどんどん小さくなっていくアナリズ。包帯に隠されていない目でにらんでいたが、マスターはそれに気づいた様子はなかった。ルーチェはため息を一つつく。


「だとしても、私が面倒見るって、安全じゃない。自分の身ぐらい守れないと、命がいくつあっても足りない」


「確かにそうだけどねぇ……ルーチェちゃぁん覚えてるぅ? 下でガン何とかと戦ってた時にぃ、一つももらわなかったのぉ」


 ルーチェは静かに腕を組んで視線を上にあげる。


「……そういえば、私が着いた時に戦ってたのは、この子だったか……」


 記憶を手繰り寄せながら話すルーチェ。それを聞いたマスターが胸の前で手の平を叩く。乾いた音がリビングに響いた。なぜかそれはひどく大きな音になった。


「そうよぉ。全部避けて、一回も当たらなかったのよぉ。だからぁ、ルーチェちゃぁんのお手伝いをしてもぉ、問題ないんじゃないかしらぁ? それにぃ」


 手で小さくルーチェを呼びながら、ルーチェとマスターはテーブルから少し離れたところに移動した。アナリズに背を向けながらマスターが話し始めた。他の人に聞かれないような声で。


「ちょぉっとだけぇ、お家賃勉強してあげるわよぉ」


 マスターが微笑みながら言ってきた。無垢な表情に目だけは真剣さがともっていたのをルーチェは見逃さない。しばらく、目を合わせていたが、やがてルーチェからため息をついて視線を外す。


「……わかった。面倒見る」


「アナリズちゃん! ルーチェちゃぁんが面倒見てくれるってぇ! 良かったわねぇ!」


 パッとすばやく振り返ったマスターがアナリズに声をかけた。その時、マスターがどんな顔をしていたのか、ルーチェにはわからない。ただ、アナリズの視線はまっすぐルーチェに向けられていた。にらむような表情ではなく、胸をなでおろしたような、そんな表情にルーチェには見える。


「あ、ありがとうございます」


 小走りにルーチェのところまで来て、深々と頭を下げたアナリズ。真新しく巻き直された包帯が後頭部から見える。


「はぁ……そんなことしなくていい」


 盛大にため息をつき頭に手をあてながら、ルーチェはアナリズに告げた。


「それでぇ? 何かお仕事ぉ——ってルーチェちゃぁん、部屋から何か鳴ってなぁい?」


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