同居人たち 12
「すいませんルーチェさん。もう大丈夫です。続けてください」
「わかった。あのアルテファットの威力については私も知ってる。実際にこの身で受けているし……」
「はい……」
「気にしなくていい。問題は威力じゃなくて、いつ作られたものなのかってこと」
意味が分からなかったのか、オリチェは小首をかしげていた。かけていたメガネが少し下がった。それにも気づかずに、ルーチェを見ていた。
ルーチェはオリチェの姿を見ながら、小さくうなずいてから話を続ける。
「わからなくても仕方ないと思う。いつ作られたっていうのは、いつの世代のアルテファットかってこと……」
話しながらオリチェに自分の右腕を見せるルーチェ。相変わらず白い色の右腕は、一応血が通っているとはいえ、パッと見、健康的にはとても見えない。血流が悪く、栄養も行き届いていないようにしか見えない不健康な腕。それがルーチェの右腕が他者に与える印象だ。
「オリチェ。私の右腕が第一世代だってことは覚えてる?」
「はい。前に聞きましたから。オリチェ覚えてます」
「良かった。第一世代のアルテファットがつけられるのは、戦時下の時。兵数不足解消で作ったようなものなんだから当然ね」
「そんな……言い方」
オリチェがルーチェの言葉に反応して、口元を両手で隠す。ズレたメガネのレンズの向こうの目はハッキリと大きく見開いていた。ルーチェはオリチェの両手に、左手で触れる。
「気にしなくていい。何が言いたいかっていうと、第一世代のアルテファットをつけているってことは、多分、元軍人の可能性がある。そして、元軍人は同じ過酷な状況を乗り越えてきているから、仲間意識が強い。そんな人間だったら、何かあれば元仲間に連絡をとるんじゃない? 連絡を取ったら、その仲間たちがとる行動は一つ……」
「復讐に来るっていうことですか! それが《《報復》》ってことですか!?」
オリチェが大きな声とともに立ち上がった。ガタンという音とともに、座っていたイスが倒れた。直後にさらに大きな音が床から響いた。そして、オリチェはすぐにアナリズのところまで歩いていった。その歩き方には、明らかに怒りがのっていて、床を鳴らして歩いていた。ルーチェはオリチェを黙って見ている。オリチェはアナリズの前に立って、腕をつかんでいた。
「ど、どうしたのぉ? オリチェちゃぁん!?」




