同居人たち 3
マスターはつぶやくように言いながら、背を向けて横飲みを近くにあった小さなテーブルの上に置いた。
ルーチェは周りを見回す。見慣れた光景が広がっていた。
一番近くにあったのはベッドの近くにあるカーテンが開かれた窓。窓自体も少し開いていて、外の空気が流れ込んできていた。何の装飾もされていない半透明の白いカーテンとその手前に無地で厚めのライトグレーのカーテンがかけられていた。窓の向こうは青い空が広がり、ところどころに雲が浮かんでいた。陽が高いのか、少し射し込んできていて、ルーチェが横になっているベッドの上とその先の木の板が貼られた床に、光が当たっていた。
室内に目を向けると、天井からピエノパッチの店内で使われているのと同じ照明が吊り下げられていた。今は陽光が入り込んでいるためか、自らは光を放っていなかった。
視線を下げれば、少し離れたところに見慣れたチェストが一つ。マスターの胸の高さほどのチェストの上には、ナイフホルスターに納められた愛用のナイフが二振りと写真立てが二つ置かれていた。チェストの横には見慣れないテーブルが一つ。そこに水差しと透明なコップがあった。ルーチェのベッドの近くにも小さなテーブルが持ち込まれていた。そこにはさきほどルーチェが口にした横飲みが置かれていた。
壁につけられたハンガー掛けにはルーチェの暗赤色のレザージャケットがかけられていた。
あとは部屋から出るドアとトイレやバスルームにつながるドアが見えるだけ。
ほとんど物が置かれていない部屋。それがルーチェの部屋だった。
「どれくらい経った?」
「どれくらいぃねぇ……それってぇ、あの店で暴れてたやつのことよねぇ?」
「……ええ」
マスターの顔から微笑みが一瞬、消え去った。顔の表面から感情が完全に消し飛んだかのような、まるで顔のすべてのパーツが線で描かれたような表情になった。しかし、それもすぐに戻り、微笑んでいた。ルーチェに向けてマスターが右手を向けてきた。その手は指が三本立っていた。
「三日、かしらねぇ。ルーチェちゃぁんが帰ってきたときぃ、もう日付が変わってたからぁ、二日、かもしれないわねぇ」
話しながら、三本だった指が二本になっていた。
「……マスターはいつ動けるように?」
「あらぁ。心配してくれてるのぉ? ありがとうねぇ。ルーチェちゃぁんほどダメージはうけてなかったぁみたいでねぇ。次の日にはぁ、動けるようになったわぁ。ホント良かったわぁッ」
言いながら、マスターは右手を顔に当てて目を閉じていた。腹部を一撫でだけ左手でしていた。
「お店はどうしたの?」




