同居人たち
「ふぅん。まぁだ、起きてないのねぇん。死んではなさそうだけどぉ、大丈夫なのかしらぁん?」
誰かが話している声が聞こえる。聞き慣れた声。
ルーチェの意識が沈んでいるところからゆっくりと浮き上がっていくのがわかる。
完全に浮き上がりそうになった時、何かが開かれる音がした。その音と同時に光が射し込んできた。
「……うっ」
「あっ……起きたぁみたいねぇん、ルーチェちゃぁん」
目を開く。強い光が差し込んで来た。世界が白い。ルーチェは何度かゆっくりと瞬きする。徐々に目を慣らし、感覚を取り戻そうとする。
「良かったわぁん。いつまで経っても起きないからぁ、どうしようかなぁって思ってたところよぉん」
どこからか声が聞こえる。声は聞こえるものの、声の主を探すことができないでいる。視界がはっきりとせず、どこからなのかわからないでいる。
「一日くらいならぁ、寝かせてても良かったかなぁって思うんだけどねぇ。あんまり長いとぉ、死んじゃうんじゃないかってぇ思ってたのよねぇん。だってさぁ、ルーチェちゃぁんって、点滴とかできないでしょぉ? ファンタズマドローレが起きちゃうじゃないぃ? そうなったら、わたしじゃどうすることもできないからねぇん」
誰かが一人でまくしたてるように話していた。それがルーチェに向けてということは話の流れからわかるものの、いまだ視界が十分に戻らない状態ではどこにいるのかもわからない。ルーチェはとりあえず、声の聞こえた方へと顔を向けてみる。
「もしかしてぇ、ルーチェちゃぁん、見えてなかったりぃするぅ?」
コツコツという床を叩くような音が聞こえ、声の主がルーチェに声をかけてきた。その声はルーチェが向いている方向とは異なるところから聞こえた。促されるように顔の向きを変える。顔の向きを変えるとさっきまで感じていた強い光が薄らいでいった。そのおかげかぼんやりとだけ人の輪郭が見える。
「こっちなら見えるかしらぁん?」
「……す、少し……だけ」
声がかすれて出る。口の中が張り付いて上手く声が出せない。舌も上手く動かず、歯の裏にぴったりとくっついていた。
「ちょぉっと、お水飲んでもらおうかなぁ」
声の主がそう言って、視界から人影がいなくなった。足音が室内を動いていった。少し離れたところで何かを動かしている音と、水が何かに入れられる音がしてきた。




