ピエノパッチで暴れる赤 12
キャンビアがため息をもらしながら告げ、左手一本で近くにいた警察の一人から盾を奪い取った。大きな盾だったが、それを片手で取り回し、本来は攻撃を防ぐ側を赤い髪に叩きつけた。その動きは早く、盾が振り下ろされた時に、風切り音が聞こえたほどだった。およそ、盾が出すとは思えないような鈍い音が響き渡った。
「グオッ」
直後、キャンビアが持つ盾の下から小さな悲鳴があがった。その声が聞こえた後、小さく跳んでいた警察は跳ぶことがなくなっていた。キャンビアが盾を奪い取った警察に返してから、赤い髪の顔をのぞき込んだ。何度か角度を変えながらのぞき込みつつ、反応がないところを見て、左手で首筋や顔を何度もさわっていた。それから、手を引いてから顔をあげた。
「よし。とりあえず、気絶してもらった。手錠だけじゃなく、足にも錠をかけておいてくれ。アルテファットがある以上、どのような力があるかはわからない。また、途中で意識を取り戻すかもしれない。そのあたりも十分に注意をして対応をしてくれ」
体を起こしながら、周囲の警察に指示を出したキャンビア。警察たちが短く返事をして、あわただしく動き出した。キャンビアの方はというと、盾を叩きつけた時にスーツについたほこりを手で払っていた。ほこりを払いながら、まるで今頃気づいたような顔をして、ルーチェを見てきたキャンビア。
「そろそろ、痛みは治まっただろう? 起き上がれるんじゃないのかい?」
ゆっくりと体を起こして壁にもたれかかるルーチェ。左手は痛みを放っている腹に置いている。頭が後ろに下がりそうになり、後ろにあった壁にもたれかかる。同時に崩れそうになったバランスを右手で取る。起き上がった影響か、一瞬、ルーチェの視界が狭くなったがすぐに戻る。
ルーチェが座ったのを確認したところでキャンビアが近づいてきた。右手をズボンのポケットの中につっこみながら、近づいてきて見下ろしていた。痛みに目を細めながら、ルーチェはキャンビアを見る。
「そう、ね……なんとか」
絞り出すように答えるルーチェ。その様子を見ていたキャンビアはわずかに口角をあげてから、口を開いた。
「それは良かった。あのアルテファットの蹴りを受けて、それだけっていうのもなかなか頑丈だ。大概の人間は内臓にダメージを負って、血を吐きそうなものだけれども……。さすがルーチェといったところなのかな?」




