なれあわないもの 13
ポラーレのスーツの胸元から機械的な音が鳴りだす。ポラーレは小さく手の平をルーチェにむけてから、流れるようにしてスーツのジャケットに手を入れた。中から取り出してきたのは通信端末。画面は見えなかったので名前はわからなかったが、通信が入っていることはわかる。
「はい。どうされましたか? ルーチェさん? はい、無事ですよ。……戻ってきてほしい? 何かあったのですか? わかりました。すぐに戻るようにします」
慌てた様子で強引に通信端末をジャケットの中にねじ込んだポラーレ。そして、ルーチェの方を見ながら、早口で告げた。
「ルーチェさん。どうやらピエノパッチで何かあったみたいです。急いで戻らないと」
「何かって――」
「そうか、大変なんだな。どうする、貸しをもう一つ増やすかい?」
何度目かわからないが、ルーチェの言葉が遮られた。ポラーレの会話の後に割り込んできたのはキャンビアだった。ルーチェたちが座っている警察車両に右腕をのせて、のぞき込むようにポラーレを見ていた。ルーチェとポラーレも見上げている。ポラーレのほうが明らかにキャンビアよりも背が高いはずなのに座っていることもあってキャンビアの方が高く見えた。ポラーレは下にズレたメガネを直さず、フレームの上にできた隙間から見上げていた。
「警察が貸しを作るというのもどうなのですか?」
「キミこそ何を言っているんだい? これはあくまで俺とキミとの間での話だ。警察の話でもなければ組織間の話でもない」
「それは当然なのですが、こちらはあくまで民間人ですので、公権力がそのようなことをするのはどうかとお話しているだけです」
ポラーレの返した言葉に、ふん、と鼻を鳴らしたキャンビア。
「よく言う」
言って空を見上げたキャンビア。体を伸ばしたためかスーツを着ていても、無駄な肉がほとんどないように見える。あくまで、ほとんど、ではあるが。
「……まあいい。どうするんだ、ポラーレ? 時間が惜しいんじゃないのか?」
しゃべりながら、体を折り曲げてのぞき込んできたキャンビア。三白眼がポラーレを見下ろし、口の端が少しだけ上がっていた。ポラーレの眉がピクリと動き、ぎゅっと眉が真ん中によった。すぐさま下を向いたポラーレはメガネの位置を直し、キャンビアを見た。その視線が鋭くなっていた。
「……聞いていたんですか?」
「いや、わかっただけさ」
「……その勘の良さというものが、ある意味で羨ましいですよ」




