なれあわないもの 8
「彼女のプライベートに関わることかもしれません。ですので、ルーチェさんに断っておきたいのです」
「はっ! だったら、当人が話せば問題ないのではないか? 少なくとも俺はそう思う。後ろめたいことがないのであれば、話したところでなんら不都合はないだろう?」
「キャンビアさん。そちらこそ忘れておられませんか? ルーチェさんは被害者なのですよ? 少なくとも話すにしても本人の都合というものを考えなければならないと思います。ダメージや疲労もあるでしょう。少し休むなりなんなりしてからでも遅くはないのではないでしょうか?」
ポラーレとキャンビア。互いの間に薄い膜が張られているかのような距離感を保っていた。同時に、二人の間で言葉の応酬が繰り広げられていた。それは二人とも自分の主張を曲げるつもりはないということを表していた。
柔和な表情でありながら、どこかにらみ合った二人。
と、ルーチェの手をつかんでいたキャンビアの力が緩み、離れていった。
ルーチェが自分の手、それからキャンビアの手を順に見る。それから最後にキャンビアの顔を見る。いつのまにかキャンビアの視線は動いていた。キャンビアは軽く肩をすくめてルーチェを見返していた。
それからすぐにポラーレへと視線を戻したキャンビア。
「ふむ。それもまあ一理ある。いいだろうポラーレ。ルーチェを休ませて確認をしてくれたまえ。傷の治療もしてもらおうか。そうすれば、一息くらいできるだろう。それから、代理のポラーレが答えてくれればいい。それでどうだ?」
「ご配慮に感謝いたしますよ。キャンビア」
「何を言っている? 貸し二つだ」
そう言ってキャンビアが数歩後ろに下がった。それからある場所を指し示した。多くの警察が捕まえたネスシトゥラを何人も連行していた。その人の壁の向こうには白と黒で塗装された警察車両が何台も置かれ、赤色灯が回っていた。警察車両に押し込まれていったネスシトゥラ達。その中の一台だけが赤色灯をつけていなかった。キャンビアはそれを示していた。
キャンビアが車両から視線を外した時、警官がやってきて、何か報告をし始めていた。
キャンビアが示した警察車両をみて、ルーチェは体の力が抜けていくのを感じる。膝の力が抜け、バランスを崩しそうになる。
「おっと。ルーチェさん、大丈夫ですか?」
「ああ。なんとか」
すんでのところで、ポラーレが手を伸ばしてきた。ポラーレに肩を支えられながら、ルーチェは静かに答える。




