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なれあわないもの 5

「全員、動くなッ!」


 音に続いてルーチェの真後ろで大きな声が響いた。命令口調のそれは、ルーチェ自身も従ってしまいそうになるほどの威圧感があった。振り返ることもできず、ただじっとしていることを選ぶ。ルーチェの視界の端に、真ん中あたりと完全に折れた角材と誰かの左手が見える。その左手が角材をへし折ったのか、拳の先にわずかに木材の破片がついていた。


「よぉし、いい子たちだ。全員、持っている武器を捨てろッ! 我々に抵抗するなら、片っ端からしょっぴくからな! 早くしろ!」


 後ろの人物が命令口調で話し続けた。何かを出しているのか、あるいは仕舞ったのか。ガサゴソという音がしきりに聞こえてくる。


 後ろの人物が発した命令が効いたのか、あるいは何か見せた物が効果を発揮したのか。襲い掛かってきていた人たちが次々に武器を地面に捨てていた。いや全員ではなかった。素直に武器を捨てた人もいたが、持ったまま逃げていく人もいた。それを追っていく人たちもいた。その負った人たちは同じ格好をしていた。青色の服に黒いベストを着て手には細い棒を持っていた。


「……警察?」


 ルーチェは小さく口にする。なぜここに警察が、と疑問に思った時に後ろから声が聞こえてきた。


「まったく……ネスシトゥラはアルテファットに武器を使っていいなんて誰が決めたんだか。確かになければ抵抗が難しいことはわかっているが、何も袋叩きにすることはない。いくら何でもやりすぎだ……おい、キミ?」


 振り返るタイミングを失っていたルーチェの後ろで、命令口調の人物が独り言のように早口で話していた。と、いきなり視界の端に映っていた左手が引っ込んだ。直後にルーチェの右肩がポンッと叩かれた。


 軽く叩かれたはずなのにルーチェ自身が負ったダメージと疲労の影響か、素早く動けないルーチェ。それでもゆっくりと叩かれた右肩側へと振り返る。


 最初に目がいくのは見下ろしてきていた三白眼。続けて視線が下りてはっきりと存在を強調している濃紺のジャケットの胸。


「……見たい気持ちはわかる。こればかりは仕方がないのでな。だが、ジロジロとみられることを俺は好まない」


 硬い口調とその割にハスキーな声が上から降ってきた。見ると、筋の通った鼻とその向こうの三白眼が目に入る。短く切られている髪は毛先が外側にはねるような動きがついていた。濃紺の上下のスーツをキッチリと着こなし、シワひとつ見えなかった。


 体型から女性だろうとルーチェは考える。ただ、自分より背が高いのでどうしても見上げるような形になる。


 三白眼の女性の薄い唇が動いた。


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