表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/125

白い影 2

 ルーチェは毒づきながら即座にバランスを取りなおし、ナイフを壁から抜きながら細い足場を駆け下りる。ペルデの跳躍とほぼ同じ速度で移動し、最後の足場から踊り場へと向かって跳びあがる。


 ドンッ、と三つの音が鳴った。二つはルーチェとペルデが踊り場に着地した音。もう一つは、真っ白な人間が金の卵の男に向かって、長細いものを突き立てた音。衝撃に残された階段の踊り場が揺れ、金の卵の男は尻もちをついた。


 さらに次の瞬間、ルーチェは真っ白な人間に、ペルデは金の卵の男にそれぞれとびかかる。真っ白な人間は地面に突き立てた何かを抜いて壁際に跳んだ。金の卵の男のほうは三階へと崩れた階段を跳んでいた。


「このっ! 金の卵がッ!」


 叫びながら追ったペルデ。ルーチェはその叫びを尻目に真っ白な人間と対峙する。


 ルーチェの目に映ったのは、男の顔。真っ白なものを着ているためなのか、どこか青白い印象の顔。もみあげから続くひげはあごを通り、口周りすべてを覆っていた。そのひげも少し高い鼻を隠すことはなかった。黒い髪が束になって前に垂れ、細い目がその隙間からのぞいていた。その目は鋭いがどこかぼんやりとも見えた。


 真っ白な男の視線がルーチェから逸れた。ルーチェもつられるようにして視線を追いかける。ルーチェの視界の隅に白いものが映る。視線を戻すと、すでに真っ白な男は宙に跳びあがっていた。残されている階段のすべて無視して、金の卵の男がいる三階への入口へと向かっていった。しかし、飛距離がやや足りず、空中で落下を始めた真っ白な男。その落下が突然、上昇へと変わり金の卵の男の近くの場所へと着地した。


「なっ!?」


 ルーチェとペルデの口から同じ言葉が飛び出してくる。金の卵の男も真っ白な男の行動に動きを止めてしまっていた。ただひとり、真っ白な男だけが金の卵の男へ、静かにしかし確実に動いていた。


「逃げろぉ!」


 叫びながらルーチェは壁に向かって走り出す。崩れた階段を跳ぶにはあまりにも時間がなかった。三階入口の足場の上あたりまで足場と平行に壁を蹴って移動。真上に来たところで、今度は垂直に下りるため、壁を蹴って加速する。勢いをつけたまま真っ白な男へとナイフを振り下ろす。


 金の卵の男にあと一歩といったところまで真っ白な男は迫っていた。真っ白な男ひゃルーチェの方を見ることなく、金の卵の男へと腕を伸ばした。ルーチェに対して全く反応を見せない真っ白な男にナイフを突き立てる。


 しかし、ナイフは真っ白な男の腕によって止められた。


 真っ白な男の腕は金の卵の男へと伸ばしていた方の腕。ローブにしか覆われていないはずの腕。そこにナイフがぶつかったとき、明らかに何か硬いものに触れた感触がルーチェの手に伝わってくる。押し込み、切断することもできず、反対に真っ白な男に押し返される。


 ルーチェは宙返りをして足場に降りる。入れ替わるようにして、階段を跳んできたペルデが真っ白な男に殴りかかった。彼の手は白いものに覆われていた。真っ白な男はルーチェのナイフを防いだ腕を今度はペルデに向けた。


 硬いもの同士がぶつかり合う鈍い音が階段に広がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ