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罠の中を駆ける

「は、はなしてくれ!」


 ルーチェの姿を見てなのか、目の前で男はあらぬ限りの抵抗をして暴れ始めた。ペルデの腕が巻き込まれるようにして引っ張られた。ルーチェはそれを見て、金の卵の男の後ろに回り込む。白衣が風を受けた帆のようにピンと張っていて、ちょうど真ん中にある縫い目がはっきりと見える。


 ルーチェはナイフをジャケットから出し、一気に振り上げる。白衣が縫い目に沿って真っ二つに裂かれていった。左の袖はペルデの手にもたれたまま、右の袖は金の卵の男の右腕にまとわりついた。


 次の瞬間、ルーチェは不思議なものをみる。白衣の男が流れるように、左腕を動かし袖を外した。右腕の白衣はそのまま、転がるようにして走り出し、壁の隙間に向かっていった。ちょうど、ルーチェから右手の方向に。


「金の卵がぁッ! 待ちやがれッ!」


 ペルデが手に残った白衣を投げ捨て、金の卵の男が走っていった壁の隙間に走りだした。それを追うようにして、ルーチェもナイフをジャケットの中に戻し駆け出す。金の卵の男が廊下に出れば、それを追ってペルデが廊下に出た。廊下から部屋に戻ればそれを追うということを続けていた。


 金の卵の男が明らかに速い速度でクルリと空中で一回転し廊下へと飛び出す。しかし、ペルデはそれを追わずにわずかに速度を緩めただけで、すぐに別の方向へと走り出した。


 二人が道を分けた場所にはガラスのなくなった窓があった。ルーチェはその窓枠に手をついて跳び越えようとしたが、手をつくことを止める。窓枠には錆びた有刺鉄線が張り巡らされ、触れれば無用なダメージを負うことになる。


 それでもルーチェは窓枠へと跳躍をする。金の卵の男と同じように身を丸め、空中で一回転し、その途中でジャケットからナイフを取り出す。ジャケットが有刺鉄線に絡みつく前に、ナイフを振り抜く。振り抜かれた先の鉄線は完全に断ち切られ、ルーチェはジャケットをひっかけることなく、廊下に着地する。衝撃にわずかに足に痺れが走るが、それを無視して足を動かす。


 わずかにペルデよりも早い位置になり、ルーチェは金の卵の男を追いかけることになる。

 金の卵の男はというと、左へ曲がる角に差し掛かっていて、右の壁へと跳んでいた。右足で壁を蹴った反動で曲がる直前に見えていた壁を左足で蹴りすすんだ。さらに一歩右足で壁を走り、左の壁に姿が消えていった。


「どけッ! ルーチェッ!」


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