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罠だらけのビル 6

「ドア自体か、それともドアの向こうか……」


 わずかにハンドルに荷重をかける。ハンドルにはわずかな遊びが残っていて、ルーチェはその遊びより少しだけハンドルを下ろして止める。ドアには何の変化もなかった。息を止めていたことに気づき、溜まっていたものを吐き出す。何度か呼吸をしてから、ハンドルをさらに下げる。指の位置を変え、ドアを押しやすい位置に変える。今度は最後まで下ろす。異常がないと判断したルーチェは、ゆっくりとハンドルを押し込む。


 ドアはこすれ合う音を出しながらルーチェの押す力に合わせて動いた。半分ほど開いた時だった。どこからか別の音がしてルーチェはドアを動かすのを止める。


 金属に何かがぶつかる音が定期的に鳴っていた。そして、その音が不意に止まった。


 ルーチェはドアの開いた隙間から頭を出し、外の非常階段を見上げる。


「えっ?」


 思わず声をあげるルーチェ。非常階段の先に白い影が見える。その白い影もまた、ルーチェを見ていた。白衣を着た男。黒い前髪が目もとをわずかに隠していた。その男はポラーレから送られてきた画像の男だった。男が着ていた白衣はこのビルにいたためか土埃がついて、茶色く変色していた。男の目が見開かれた。


 ルーチェが声をかけようとする。しかし、それよりも男の動きのほうが早かった。踵を返して非常階段を駆け上がっていった。


「ま、待てっ!」


 制止の声をだすルーチェ。同時にドアを開けて追いかけようとする。しかし、ドアの向こうからブチッという不自然な音と振動がやってきた。反射的にルーチェは右手をドアから離し、姿勢を低くしながら非常階段へと滑り込み、一気に駆け上がる。


 数段あがったところで、ドンッという音が響いた。見るとそこには穴が開いているコンクリートのブロックが数個、固まって落ちていた。それらには麻紐がくくりつけられていた。どうやら、ドアを開けきると麻紐が切れ、ブロックの塊が落ちてくるようになっていたようだ。


 階段をさらにのぼる。すでに白衣の男の姿はなかった。どうやら上の階に行ったようで階段を走る音が響いていた。ルーチェは三階の非常口に到着するが、音はさらに上から聞こえてくる。三階の非常口を無視して、四階へとかけていく。


「保護するだけなんじゃないの? どうして逃げる?」


 疑問を口にしながら走るルーチェ。しかし、そんなことを口にしても階段を走る音が止まることなどなかった。四階の非常口が開き、その脇に白衣の裾が入っていくのがみえる。


 ルーチェもあとを追う。ドアが閉まる直前に到着したルーチェは、右手でドアハンドルをつかんで思い切り手前に引く。ドアは勢いよく限界まで開き、ビルの壁に衝突しかかる。


「逃げるなぁ!」


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