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罠だらけのビル 5

 つぶやきながら、ルーチェは足を天井近くに置かれていた荷物に下ろす。足をのせて、わずかに体重をかけて一気に跳びあがる。同時に右手を離し、二階に着地。すぐにしゃがんで床を確認する。抜け落ちる気配はなく、ルーチェは静かに息を吐き出す。それから、物に突き立ててあったナイフを抜き取る。硬いものに突き刺したにも関わらず、歯こぼれ一つみられなかった。柄の部分にはルーチェの血がついた。左手でナイフの刃を持ち、振って血を払う。それから右手の血がなるべくつかないようにしてジャケットの中に片付ける。


「さて、と。ペルデはどこにいったんだか。それにチラッと見えたあの白い影もいるのかどうか……」


 つぶやきながら、通信端末を取り出すルーチェ。表示された場所と写真を見るが、実際にこの行方不明者なのか、ルーチェには判断がつかない。ルーチェはこのまま罠を警戒しつつ進むことを選ぶ。


 エレベーターのあったところに到着するが、やはり動いていなかった。ルーチェには上に行く手段がない。エレベーター横にはかすれているものの、地図のようなものがあった。


「避難……経路」


 書かれている文字を口に出す。その文字の下には薄くなっているが地図があった。そこにはエレベーターのあるところから逃げるための道順が示されていた。矢印が二本あり、一本は登ってきた階段を示していたが、もう一つは通ってきた道の途中でどこかの部屋に入っていた。


「これは……外階段!」


 ルーチェは叫ぶとともに今来た道を走り出す。ちょうど物が置かれて通路が狭くなる直前のところにドアがあった。進むときには物陰にあるため、気づきにくくなっていた。ドアにつけられているレバーハンドルを握り、ゆっくりと動かす。建物が歪んでいる影響でドアの動きは悪いが、それでも開くことはできた。


 部屋はオフィスだったのか、みえるのはデスクが数台と倒れたイス。何かの配線のようなものもみえた。正面の窓にはやはりガラスは一枚もなく、くすんだ色の壁が見えていて光もほとんど射し込まず薄暗かった。


 ルーチェは部屋の中を調べることはせず、目的の物へと慎重に近づいていく。


 非常口の下のドア。


 そこまでの間に罠は仕掛けられていなかった。


「…………」


 ルーチェはドアをみる。金属製で今までと同じくレバーハンドルがつけられていた。ドアには窓がつけられていないため、向こう側の様子をうかがい知ることはできない。蝶番が見えず、ドアの上に金具がつけられていた。


「……当たり前か。非常口だから」


 ゆっくりとドアのハンドルに右手の指先をかけるが、ハンドルを下ろすことはしない。何が起きてもすぐに反応できるように、膝を曲げて姿勢を低くし、ドアからも距離を取る。左手で足元に転がる石を一つ握っておく。


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