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罠だらけのビル 3

「ペルデ?」


 ナイフを仕舞いながらルーチェは通路に出る。柄からは手を放さない。今のところ敵ではない、とルーチェは判断する。しかし、油断する気もない。


「ああッ? ルーチェかぁッ。痛ッ……」


 ペルデは服に血をつけながら現れた。それもただ血がついているだけではなく、何カ所も服が破れていた。ルーチェが見た限り、どれもかすり傷程度のようで、応急処置をした様子はなかった。


「おいッ! あの白い影はどうしたッ?」


 ルーチェの姿を見たペルデが大きな声で問いかけてきた。ルーチェは左手はそのまま、右手を上に向けて開きながら答える。


「アンタが追っていったんでしょ? 何? 見失ったの?」


「あいつの逃げ足が早いだけだッ! てめぇが見てねぇか確認しただけだッ!」


「はぁ……そういうのを見失ったっていうのよ……」


 ため息をつきながらルーチェは答える。あきれつつもペルデの姿を捉えながら歩みを進めるルーチェ。足元のガラスを何枚も踏んでいく。 


「何言ってやがるッ! てめぇが見てねぇなら行き先はわかってんだよッ!」


 ペルデは叫ぶと同時に猛然と走り出しした。ルーチェのほうへと突っ込んできたようだった。と、壁がなくなっているところにスルリと入り込んでいった。


「っ!」


 ペルデの体が視界から消えた。それと同時にルーチェが駆け出す。ガラスが割れる音がルーチェの足元から響いた。ブーツの底から伝わってくるガラスの感触を無視して、ルーチェはペルデが入っていった通路へと踏み込む。


 そこには階段があった。


 ペルデの姿はすでに上に見える階段の踊り場を折り返す直前だった。すぐに姿が見えなくなった。ルーチェもまた、階段を駆け上がろとするが、不自然に瓦礫が転がっていて思うように進めない。登りながら、いったいどこから、という疑問が浮かぶ。


「なにぃッ!?」


 踊り場を折り返したところで何度目かもわからない大声が響いた。


「くそッ! こっちかッ!?」


「今度は何?」


 ルーチェは上から聞こえた大声に反射的に返事をしてしまう。答えが返ってくることは当然なく、ルーチェは階段を上りきる。やがて二階に入る通路が見えてくる。そこにペルデの姿はなかった。すでに上に上ったのか。ルーチェはペルデを追うために上の階に上ろうとスピードをあげる。


 しかし、それは驚きに変わり、強引に足を止める。


「なっ?」


 そこに階段はなかった。ただ、完全になくなっているわけではなく、三階に続く階段がないだけに見えた。上のほうには階段の踏み板らしきものがあるように見える。


「まるで迷路じゃない!」


 ルーチェは毒づいて、すぐに二階の通路に踏み込む。


 一階と同様二階もまた床にガラス片がばらまかれていた。ルーチェは左右を見渡すが、ペルデの姿はなかった。


「くっ! どっちだ?」


 ルーチェの口から焦りが漏れる。ただ、焦るだけで、足を動かすことができないでいる。


「迷っても仕方ない!」


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