二人目の追うもの 6
淡々と硬質な声で次を促してきたキャンビア。
「私たちはあるデータを見て、もしかして、アナリズはガンビーザを追っていたんじゃないかって、推測を立てた」
ルーチェが応じて話を続ける。間髪を入れずに通信端末の向こう側から言葉が戻ってきた。
「ほう。それは我々もつかんでいない、データ、なんだろうな。確認したいところだが……まあいい。それで? アナリズが我々の所に来ている、と?」
「おそらくだけど……それで、警察に現れたの?」
「本来なら情報を出す必要はないと思うが……まぁいい。我々のところにアナリズは来ていない」
キャンビアの答えを聞いたポラーレの眉がわずかに動いた。通信端末に向かって、ポラーレが静かに声をかけた。
「キャンビア……アナリズを捜索してもらうことは……?」
「ポラーレ。わかっていると思うが、現状、無理だ。ほとんどの人員を暴走しているアルテファットを抑えるのに割いている。こちらから頼んだ部分もあるが……ハッキリ言うぞ。俺も対応に行かなければならない。市民を守る必要がある。ポラーレ。お前からの連絡だから受けている、ということを忘れるな」
キャンビアが通信端末の向こう側から断じた言葉をぶつけてきた。しかし、その声は大きなものではなく、努めて音程差がないような平板な言い方だった。
ポラーレがメガネの向こう側の目を閉じ、まぶたの下でその目を揺らしていた。細く長く息を吸い込んでゆっくりと吐き出していたのをルーチェは見ている。吐ききったのか、ポラーレが目を開けた。
「わかりました。キャンビア。こちらが勝手に捜す分には?」
「それは自由だ。ただし、今のアバラックバーイアの状況だと危険だと言わざるを得ない、と言うことも理解しておいてくれ」
答えとともに、通信が切れた。ポラーレは黙って通信端末を自分のジャケットの中にしまった。そのポラーレがルーチェをじっと見てきた。ルーチェは黙って頷き、自室に戻る。
「あ、あの!? どうするんですか!? 捜しに行くんですか!?」
オリチェが誰に向けてかわからない問いを投げかけていたのを背中で受けるルーチェ。返答をしないでいると、ポラーレが答えた。
「向かうのは、こちらとルーチェさんの二人で、です。マスターとオリチェさんはこちらに——」
「わたしはぁ、いくわよぉ! アナリズちゃんはぁ、ここでぇ預かってるんだからぁ」
ポラーレの言葉をさえぎったマスターの声が、ルーチェの部屋に飛び込んできた。そのまま部屋を進み、チェストの上のナイフホルスターを手に取る。ジャケットを脱いで、ホルスターを装着し、再びジャケットを羽織った。
「あ、危ないですよ! マスター! オリチェとここにいましょう!」
「ダメよぉ、オリチェちゃぁん。大人の責任てぇやつよぉ」




