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失ったもの 2

「移すぞ!」


 どこからかそんな声がきこえた。ルーチェは、何を、と問いただしたくなる。ひどくはっきりと聞こえる今の状況に違和感を感じる。


「こちらも、移すぞ!」


 近くで言われたその言葉の意味はすぐにわかった。


 奇妙な浮遊感にルーチェは包まれる。ただ、それも一瞬のことで、すぐに体が固い何かに触れていた。感覚が戻ってきたと思う以上に、妙なことを感じている。右側、特に腕あたりの感覚が鈍い。どうしてそう感じたのかはわからない。そこだけがひどく鈍い感じがしている。


「こちらは右だ!」


「二人でそれぞれ片方ずつというのは、妙な感じだな」


 やり取りの声がはっきりときこえる。意識が戻ってきたせいかもしれない。


「傷口からの出血はほとんどない! 高温で一気に焼かれたんだろう、肩部は三度の熱傷及び上腕骨の露出。側腹部は深達性二度の熱傷」


「こちらも同様です! 肩部は三度の熱傷と上腕骨の露出。側腹部は深達性二度の熱傷」


「いったい、何をどうしたら、こんな鏡写しみたいな火傷をするんだ?」


 話している言葉の意味がわからない。ルーチェの視界が一気に動く。どう動いたのかはわからないが、青い人以外のものが目に映る。白とは違う色でわずかに光を放っているものが広がっている。何かの上にのっている。


 視線を少しずつ遠くに動かすとはっきりとはみえないが、人が見える。その人も何かにのせられていた。青い人間が何人もいて、その人を見るには邪魔だった。しかし、誰がのせられているかはわかる。


「ねぇ……」


 ルーチェは唇を動かすが、やはり声にならない。でも、見間違えるはずなんてない。金色の長い髪、白く透き通った肌。その人だけがはっきりと見える。


 そこに横たわっているのはルーチェにとって大切な存在。


 姉のリナシッタ。


 彼女にむかって手を伸ばそうとする。左手がわずかに動く。


「こちらの患者、意識があります!」


「わかりました! オペの準備を! 時間との勝負になります!」


 言葉が飛び交う中、構わず左手に力をいれる。這うようにして、動かした左手に何かがぶつかる。動かそうにも何かが邪魔をして動かせない。動かそうとしていたルーチェの左腕に何かをされ、冷たいものがゆっくりと流れ込んできた。流れ込んできたそれは、染みるようにして、ルーチェの中に混ざりあっていく。


「ルート! 確保しました!」


 ただ、手を伸ばそうとする。さっきまでぶつかっていたはずのものはない。なので、手を動かす。手は持ち上がらないまでも、ゆっくり何かの上を這わせていくことができる。近づけて持ち上げようとする。


 と、ルーチェの左手に力が入らなくなる。眠気のようなものも感じる。


 眠るわけにはいかない。ルーチェはなんとか手を伸ばし、リナシッタに届かせようとする。だが、その手は届くことはなかった。代わりに暗闇にゆっくりと視界と意識がのみこまれていった。


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