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9/9

#9 115万キロのフィルム・True End.


 あの現実改編ゲームをめぐる最後の出来事から、三日が経った。

 パソコンを開くと、あのゲームのアイコンは消えていた。役目を終えたのだろうか。

 ショップのページには別の知らないゲーム。

 そのゲームのタイトルは、『デジタルシスター・パラドクス』。うん、全然知らないタイトルだ。

 値段を見ると、二百円だった。ちゃっかり倍になっていたことに少し笑いつつ、お気に入り登録しておいた。


 大学に向かうと、「ねえ、ハコベくん」と話しかけられる。

「や、セリカ」

「わかってるじゃないですか。さすがまいぶらざーハコベくん」

「冗談きついぜマイシスター」

 ふたりでぴーすぴーすと真顔でふざけあってみる。このノリも慣れてくると意外と楽しいものだ。

「ところで、ですが。今日ってなんか予定あります? どうせないでしょうが」

「一言余計なんだよ。……ないけどさ」

 なんだよ、と聞こうとすると、セリカはいたずらな微笑みを浮かべて告げた。

「わたしと付き合ってください」

「は?」

「間違えました。わたし『に』付き合ってください。おねーさんの様子を見に行きましょう!」

「なんなんだよ!」

 期待させるなよ。僕はわざと大きなため息をついてやった。

 すずなさんのセルフネグレクト改善のために様子を見に行ってるのは素晴らしいことだとは思うがな。僕を連れていく必要あるか?

 あと、僕には心に決めた人がいるんだ。悪かったな。


「こっちですこっち」

 セリカに手を引かれて京浜東北線の電車に乗る。

 加速していく電車の中。

「ひゃっ」

 小柄な少女と手がぶつかった。

「ごめ――」

 謝ろうとする僕の目に映ったのは。

 すべすべつるつるの足。フリルのブラウスに包まれたぺたんこの胸。ミディアムボブのさらさらな髪はきれいな茶色。

 僕は目を見開いた。隣ではニヤニヤしているセリカ。……僕を連れてきたのは、このためだったのか。

「……もしかして、はーくん?」

 鈴の鳴るような声。ここ数日であまりに聞きなれてしまった声に、僕は思わず彼女を抱きしめた。

「きゃっ!?」

「……ごめん、突然すぎかも、だけど」

「…………もうすこし、このままでいいや」

 加速していく電車の車内。次は川崎、とアナウンス。

 互いにしばらくの沈黙。そののち、彼女は。

「久しぶりだね」

 なんて言った。

「……そうだね」

 話を合わせる僕に、彼女は顔を赤らめつついたずらな微笑みを浮かべて。

「わたしと再会したら、何をしたいんだっけ。答え、聞かせてよ。……お兄ちゃん」

 やっぱり久しぶりじゃないじゃん。僕は少しだけ目を細めてから、意を決して、深呼吸して――告げる。


「好きです。――付き合ってください」


 Fin.


 ここまでお読みくださりありがとうございます。

 本編はここで終わりですが、書籍版には書き下ろし後日談がございます。よければお読みください。発売中です。


 面白かったら、ぜひ下の星マークやハートマークをクリックしてくださると作者が喜びます。ブックマークや感想もお待ちしております。


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