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イセカイロセカイ  作者: Elisu Arina
橙の章
93/130

第92話 王子の実力


 「これって、いったい……⁈」

啞然とするコチニールに緋色(ひいろ)がワクワクしたように言う。

「ビスタが紫星(むらさきぼし)の王子に戦いを挑んだんだっ!」

「えええっ⁈」コチニール、葡萄(えび)、ヘンナの声が揃った。

が、彼らと共にいるマゼンタだけは相変わらずの無表情で、輪の中心のビスタとマロウ王子を眺めている。

ビスタから少し離れた所に立ったラセットは、プルプルと震えながら言う。

「ビ、ビ、ビスタ、い、いくら何でも、相手がちょっと、というか、かなり、ヤバすぎじゃ……」

「るっせえっ!俺はこいつが気に食わねえんだっ!紫星だか王子だか知んねえがチヤホヤされやがってっ!」

ビスタの言葉に葡萄とヘンナが呆れた。

「あのバカ」

「とても正直ですね」

 だがクラスメイトが無礼なことを述べても、マロウ王子は一切微笑みを絶やさない。

さらにビスタは続ける。

「それにな、ここは相手と体術で戦って勝つためのクラスだ。ただ突っ立って女子とペチャクチャおしゃべりしてるだけでいいわけねえだろーがっ!」

コチニールは苦笑いだ。

「結局そこ」

「そことは?」マゼンタが兄に尋ねる。

「ビスタは女の子にチヤホヤされているマロウ王子が羨ましいんだよ」

「は?」

するとビスタがコチニールに鋭い視線を向けながら指を差した。

「てか聞こえてんぞコチニール!」

「あは、ごめん」

一応謝ったコチニールからマロウ王子に向き直ったビスタは、

「俺は別におまえが女子にチヤホヤされてるから突っかかってるわけじゃねえからなっ!断じて違うからなっ!」鼻息を荒くして答えた。

葡萄が呆れ果てる。(そうだと言ってるようなもんでしょう)

 目の前で怒る相手を眺めて、マロウ王子は口を開いた。

「わかっています、私のことを気遣って下さっているのは」

「え?」コチニール、葡萄、ヘンナの目が点になる。

「あなたのおっしゃる通り、このクラスでは体術で戦って相手を倒さなければなりませんものね。しかし誰も私の相手にはなっていただけなくて困っていたのです。明らかに力の弱い女子生徒の皆様を相手にするわけにも参りませんし」

マロウ王子の後方に集まっていた女子生徒たちがしゅんとした。

「ですから声をかけて頂いてありがとうございます。とても助かりました」

ビスタは相手の感謝にうろたえる。

(お、俺はそういう意味で誘ったわけじゃ……)

マロウ王子の言葉を聞いたヘンナはぽつり呟く。

「異常に力の強い女子生徒ならここに一人いるけどね」

ヘンナ、コチニール、葡萄がマゼンタに視線を向けた。

しかし当の本人はマロウとビスタのやり取りを冷静に眺めている。

 と、緋色が叫んだ。

「てかさ、さっさと始めてよっ!王子との試合っ!」

「わかってるよガキんちょ」ビスタが答える。

「ガキじゃないっ!というかオレ、ビスタに勝ってんだからなっ!」

「くっ……!」

それを今こいつの前で言うなっ……!

冷汗を流すビスタにマロウ王子が言う。

「へえ、そうなんですか」

「あ、あのガキに負けたからって俺をバカにすると痛い目に遭うからな!」

「馬鹿になんてしておりません」

「あれはあのガキが予想以上におかしかっただけでっ!」

「おかしくなんかないよっ!」緋色が地団太を踏んだ。

 そこへ柑子(こうじ)王子とマルーンが、集まる生徒たちを掻き分けてやって来た。

「ひ、緋色、なに二人の試合を()きつけてるのっ⁈」と、柑子。

「焚きつけてる?」

「紫星のマロウ殿下なんだよ、王子様なんだよ、それをあんな大きな彼と戦わせるだなんて……!」

柑子が言うと緋色の目が輝いた。

「えっ、だってすっごく面白そうじゃん!」

「お、面白……?」

「マロウ王子がどんな風に戦うのか、めっちゃ楽しみじゃないっ⁈」

「えー……」

緋色の思考回路っていったいどうなっているのだろう……

啞然とする柑子の隣で、マルーンが密かに柑子を見つめていた。

「それじゃあ、ガキの要望もあることだし早速始めようか」

ビスタがそう言うと、マロウ王子も賛成する。

 すると今度は生徒たちを掻き分け、担当教師の丁子茶(ちょうじちゃ)が慌ててやって来た。

「ちょっと!あたしが休憩してる間に何やってんのあんたたちっ!」

コチニール、葡萄、ヘンナが呆れる。

「先生休憩してたんだね」とコチニール。

ヘンナも「どうりで静かだと思った」

「本当にこの学園大丈夫なんですか……」と葡萄。

 けれども生徒たちの小言など耳に入らない丁字茶は、輪の中心で向き合っているビスタとマロウ王子を見て啞然としていた。

「なっ、こ、今度は何をしようってのよっ!」

「ビスタとマロウ王子が戦うんだよっ!」緋色が興奮しながら伝える。

「なにいいいいっ⁈」

「大丈夫だって、ちゃんと手加減してやるから」首をバキバキと鳴らすビスタ。

「お手柔らかにお願いします」微笑むマロウ王子。

「なっ、なっ、なっ、なっ⁈」

紫星の王子にもし何かあったら、最悪この学園は、いやこの星は……!

丁子茶の血の気が引きそうになる。が、

「じゃあ行くぜ」

「はい」

「ちょっ⁈」

「うりゃあああああっ!」ビスタがマロウ王子に向かって走っていく。

「ちょっとおおおおっっ‼」

丁子茶の悲鳴がグラウンドに響き渡った――次の瞬間、

マロウ王子の姿は消えていた。

緋色と柑子が思わず目を見開く。

 その場の全員が気づいた時、既にビスタは尻餅をつき、マロウ王子は彼の側に立っていた。

ビスタは尻餅をついたまま、目をパチクリとさせている。

「ビ、ビスタ……?」と、ラセット。

コチニールも「え……」

「何が、どうなって……」と葡萄。

「ど、どういうこと……?」丁子茶もポカンとなった。

マロウ王子がビスタを見下ろして言う。

「一本、頂きました」

ビスタは目をパチクリとさせたまま、マロウ王子を見上げた。

丁字茶も、周囲を囲んだ生徒たちも、今目の前で何が起きたのかわからずポカンとしている。

だが何が起きたのかわかった人間だけは、啞然としつつも溜息を漏らした。

「す、っげー……」

「緋色、もしかして見えた?」コチニールが少年に問う。

「えっ?」葡萄とヘンナが緋色に顔を向けた。

「王子が一瞬でビスタの側に移動して、ただ足をかけただけなんだけど……」

「足をかけた?」と、コチニール。

「うん、それでビスタがバランスを崩して尻餅をついたんだ」

緋色の説明に葡萄が首を左右に振る。「全くわかりませんでした……」

「僕もだよ……」コチニールの声がしぼんでいく。

「てかあんたもどんな動体視力してんの」ヘンナは緋色少年に呆れた。

緋色は思う。

(でも、スピードが普通じゃなかった……まるで……)

少年は側に立つマゼンタに目をやった。

彼女は変わらぬ無表情でマロウをじっと見つめていた。

「緋色」

「ん……?」

隣に立つ柑子に名を呼ばれて、緋色は呆然としたまま彼に顔を向ける。

柑子王子は何かを必死に考えるような素振りをしたと思ったら、意を決して、

「私に……体術稽古をつけてほしい……!」両目をつぶってそう言った。

緋色は柑子の言葉が上手く飲み込めず、しばし呆然となる。

 やがて我に返ると、

「ええっ⁈」今度は緋色の叫び声がグラウンドに響いた。

緋色と柑子の側に立っていたマルーンも驚いている。

「いいけど、どうして急に?」

緋色が尋ねると、柑子は拳を握りしめながらマロウ王子のほうに視線を移した。

紫星の王子は地面で尻餅をついているビスタに、片手を差し伸べていた。




 昼休みの学食は忙しい。

限りある時間の隙間に大勢の生徒と教職員が殺到して、平日の厨房は毎度のことながら戦場だ。

学食の奥に並ぶ調理台ではあっちで野菜を切り、あっちで肉を炒め、あっちで鍋を掻き回し、出来たものからさっさと手前の台に並べていく。

それを生徒たちが自由にプレートに盛り付けて、テーブルへと運んでいってはむしゃむしゃと頬張り、午後の授業に備えるのだ。

 ここは軍事学園。生徒たちの多くは育ち盛りで筋骨たくましい者も多く、食べる量が尋常じゃない。

だからとにかく決められたメニューを切らさないよう努めるのが、調理人たちの掟だった。

 厨房を取り仕切るのは柿渋(かきしぶ)渋紙(しぶがみ)夫妻だ。

共に四十八歳でウェーヴのかかった短い髪に、よく焼けた肌、夫の柿渋のほうが鮮やかな茶色の髪と瞳で、妻の渋紙のほうが落ち着いた茶色をしている。

二人は良く言えばいい体格をしていたが、悪く言えばそのほとんどは贅肉でこしらえてあった。その体を全身白い布でパンパンに包み込み、頭には白く丸い帽子をちょこんと乗せている。

 しかし彼らの料理は評判がいい。

メニューの多くは橙星(だいだいぼし)の家庭料理で、特にこのカイクウの都の名物ばかりだ。

メインはありとあらゆる動物の肉を焼いたもの、サイドディッシュは野菜を炒めたり豆を煮詰めたもの、そして主食は()かした芋を潰したもの、これぞカイクウ料理だ。

 柿渋渋紙夫妻は、この料理の素材をとっかえひっかえしながら、生徒教師研究員作業員その他学園に従事する全ての人間のために、毎日毎日毎日毎日、丹精込めた料理を提供し続けているのである。

 夫の柿渋は大鍋の中身をお玉でぐるぐるとかき混ぜながら言った。

「いやーやっぱ昼間は忙しいねえ!忙しいの最高だねえ!」

すると妻の渋紙が包丁を掲げて叫ぶ。

「ちょっとあんたっ!喋ってないで手ぇ動かせ手ぇっ!」

渋紙の前にはまな板の上で大量に刻まれた橙色の葉野菜が載っかっていた。

「お、おう……」

包丁下ろしてっ……!

柿渋のこめかみから冷汗が流れるのも気にせず、妻の渋紙はまた包丁で野菜を一心不乱に刻み始める。

凶器を持った妻を怒らせてはいけない……

柿渋はそう思いつつ、周辺を見回した。

「つ、つーか、洗柿(あらいがき)のヤツ、どこでサボりやがってんだ?」

 柿渋が厨房の調理台で息子の愚痴を吐いている頃、厨房から離れた奥の席では、マゼンタ、コチニール、葡萄が、緋色、柑子、マルーンと向かい合うように座って昼食を取っていた。

が、緋色だけはすっかり食べ終えたプレートの前に突っ伏して、一人大騒ぎしている。

「あああああっ、体術の筆記抜き打ちテストって何⁈なんでそんなえげつないことすんのっ⁈テストやるならやるって前もって言ってくれなきゃ準備出来ないじゃん!」

「前もって言ってもあなたは準備しないでしょう?」葡萄が緋色に冷たく言い放つ。

コチニールが葡萄をたしなめるように彼の名を呼んだ。

 先日、体術クラスの担当教師である丁子茶が突然、いつもなら外のグラウンドで行うはずの授業を中央棟の講堂内に変更した。

そして生徒をおもむろに座らせると、透けるような画面を机の上に各自開かせ、筆記テストを開始したのである。

体術クラスでそんなことが行われるのは前代未聞で生徒たちは困惑したが、どのクラスも合格して通過するには筆記と実技のテストが設けられているのだから、座学のテストがあっても何らおかしくはないのだ。

 と、緋色がテーブルから顔をガバッと上げる。「準備するよっ!たぶん」

「ほらね、絶対しませんよ、確実に」

「やらないかもしれないけど、前もって教えてくれんのが礼儀ってもんだろっ⁈」

「それじゃ抜き打ちテストになりませんよ」

葡萄の言うことなどさておいて、緋色はまたテーブルに突っ伏した。

「あっはああああっ!なんでこんなことすんだよおおっ!テストの意地悪ぅぅっ!」

少年の嘆く様子を、コチニールと柑子は苦笑いで眺めた。

コチニールの隣に座るマゼンタは、今日もプレート上の豆をスプーンでゆっくりとすくっては感動している。やはり箸より使いやすい。

「で、何点だったの?」

マルーンが緋色に尋ねた。

緋色は突っ伏したままぼそぼそと答える。

「……三点」

「え……」マルーンがさすがに愕然とした。

まさか、そこまでとは……

コチニールはすかさずフォローして、「ほ、ほら、一問は正解出来てる」

「そ、そうだよ、零点よりはまだいいというか……」柑子も友人を励まそうと必死だ。

しかし緋色は顔を勢いよく上げると、「じゃあおまえら何点だったんだよっ‼」

「えっと……」と、柑子。

「それは……」と、コチニールも言葉を濁す。

その場の全員が先日の体術クラス抜き打ち筆記テストの点数を頭に思い浮かべた。

(九十点)と、コチニール。

(九十八点)と、マルーン。

(百点)と、柑子。

(百点)と、葡萄。

(百点)と、マゼンタ。

彼らの表情を確認した緋色が叫ぶ。

「ほらあっ!断然オレよりいいじゃんかっ!」

「それは日頃の行いが違いますから、あなたと私たちとでは」

コチニールは再度、葡萄をたしなめるように彼の名を呼んだ。

緋色は続ける。

「百歩譲って柑子王子とマルーンは橙人(だいだいびと)だからいいとしてっ」

ん?

柑子とマルーンが首を傾げる。

「さらにもう百歩譲って葡萄とコチニールが頭いいのはわかってるからいいとしてっ」

ん?

葡萄とコチニールも首を傾げた。

「なんでマゼンタまで超イイ点数取ってんだよっ!おまえの頭脳はオレとおんなじレベルだろっ⁈てかオレがおまえに勉強教えたことだってあったじゃんっ!なのにっ!」緋色は赤紫色の少女をびしっと指差して叫んだ。

「そうだったんですか?」と、柑子。

「あー、赤星(あかほし)にいた頃に」マゼンタが豆をすくいながら答える。

「へえ」

マゼンタさんが緋色から勉強を教わるって、いったいどうしてそんなことに……

柑子王子は目を丸くした。

柑子にとってマゼンタはどんなクラスであろうと、座学も実技も完璧にこなせる存在だったのだ。

だから彼女が緋色と同じレベルと言われても、そう簡単にはピンとこない。

 すると葡萄が丁寧に説明をする。

「マゼンタはこの星に来る前から勉強熱心でしたし、この学園に入学してからもかなりの時間を座学に費やしておりましたからね」

「そうだね」いつの間にかネット関連にも相当詳しくなったみたいだし。

コチニールも葡萄に同意した。

「どこかの誰かと違って体術やら剣術やらにばかりかまけていたわけではありませんから当然筆記テストで良い点数を取るのは当たり前なのですよ」

葡萄が褒めるのを聞いているのかいないのか、マゼンタは相変わらず豆をスプーンで慎重にすくっている。

緋色はうんざりしたようにテーブルに顎を乗せた。

「あー、こうなったらさぁ、もうオレと柑子王子を足して二で割ったらちょうどいい人間が出来上がんじゃねえかなぁ」

「え?」柑子が何度か瞬きをする。

「何を馬鹿なことを。というか私の話をちゃんと聞いていましたか?」と、葡萄。

「だってさぁ、オレは実技めっちゃ得意だし、でも筆記はボロボロじゃん?でも柑子王子は逆で実技は全く出来ないのに、筆記はいつも満点じゃん?」

「あー……」

柑子はガクッとうなだれた。

 目の前で落ち込む橙星の王子を見たコチニールは、最近の出来事を思い返す。

体術クラスで紫星のマロウ王子とビスタが試合をして、ビスタがあっさり負かされたその日から、柑子王子は自分たちの自主稽古によく顔を出すようになっていた。

どうやら柑子王子の中で何かしら思うことがあったようなのだけれど、相変わらず王子の受け身は完璧でも恐怖心は拭えないようで、そこから前進する気配がほぼ感じられないのだ。

そのせいでいつも緋色から励まされたり、この頃は少し(つつ)かれてもいる。

 緋色がその場の全員に提案する。

「だからさ、オレと柑子王子の能力を半分ずつにすれば、筆記も実技も出来る人間が誕生するじゃんか」

マルーンが力なく微笑んだ。

葡萄も「何をアホな……」そう口にした時だ。

「それだっ‼」

柑子の瞳がキラキラと輝く。

「え?」コチニール、葡萄、マルーンの三人がポカンとなった。

柑子が言う。

「まさにその通りだよ緋色!私と君の能力を足せば完璧な人間が出来上がる!そうすれば体術クラスだろうと筆記テストだろうと怖いものは何もないじゃないか!」

「だろっ⁈やっぱそうだよなっ!」

緋色が柑子の両手をガシッと握った。

「うんっ!間違いないっ!」

柑子もその手をブンブンと縦に振る。

コチニール、葡萄、マルーンは言葉を失くし、マゼンタは豆を口に運びながら緋色と柑子を呆然と眺めていた。

「やっぱオレたちは運命共同体だっ!だからオレの筆記テストは全部柑子王子が受けて、オレが代わりに王子の体術クラスを全部まかなうよっ!」

「うん、素晴らしい考えだね緋色!」

「殿下……」マルーンが悲しげに呟く。

「緋色の側にいすぎて殿下までおかしくなってしまったみたいですね」葡萄は呆れ果てた。

「あのさ、緋色、柑子殿下……」コチニールが言う。

二人がコチニールに顔を向けた。

「どうやってそれをやるんですか……?」

「だからあっ!」緋色が言いかける。が、

「殿下が緋色の分の筆記テストを受けられたら本来のご自分のテストはどなたが受けられるんですか?」

葡萄の質問が飛んだ。

「え?」と緋色。

「あ……」と柑子。

葡萄の質問は容赦ない。

「第一、緋色が殿下の代わりにどうやって体術クラスを受講するんですか?」

「です、よね……」

途端に柑子がしゅんとする。

しかし緋色は諦めない。

「変装とかっ!オレが王子に変装するのっ!」

「アホですか?すぐバレますよ」

「そんなことっ!やってみなきゃわかんねーじゃん!」

わかるよ。

コチニール、葡萄、マルーンはそう思ったが、柑子王子の手前、敢えて口には出さなかった。

彼らのやり取りを聞きながら、マゼンタは豆を咀嚼して考えを巡らせている。

緋色は叫ぶ。

「だから柑子王子、あきらめんなっ!オレたちならなんとか……!」

なりません(・・・・・)!これ以上殿下に変なことを吹き込まないでください!」

「葡萄ぃぃぃぃっ!このクソオヤジぃぃっ!」

緋色の言葉にコチニールがぷっと吹き出した。

その瞬間、葡萄がコチニールを横目で睨む。

「あっ、ごめん」

オッサンからオヤジに進化した……コチニールは笑いをこらえながら思った。

葡萄が瞼を吊り上げて緋色に言う。

「私はオヤジでもあなたの父親でもございません」

「そういう意味で言ったんじゃねーよっ!」

 その時だ。

「えー、なんかおまえら楽しそうじゃーん。何の話ぃ?派手なご一行さん」

自分たちのすぐ側に、二十代前半、Tシャツにハーフパンツ姿の男が、にやついた笑顔を浮かべて立っていた。




















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