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イセカイロセカイ  作者: Elisu Arina
赤の章
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第74話 最終戦に選ばれた者


 ソファに座っていたマゼンタが目を見開く。

と同時に、室内にいた全ての楽師が彼女に注目した。

その顔はあまりの衝撃ですっかり固まってしまっている。

(私が、最終戦に……?)

マゼンタの中にその文言が渦を巻いた。

 会場内が一層ざわつき、二階客席のクリムスン家の男たちは互いに顔を見合わせる。

彼らの中に含まれる葡萄(えび)は啞然とし、

「クリムスン……あなた、いったい何を……」頭首の采配を人生で初めて疑った。

葡萄の隣に立つカーマインは目を見開いたまま、

「なんで、俺じゃないんだ……?」呆然と呟いた。

 反対側、西側二階客席の緋色(ひいろ)とストロベリーも驚きのあまり腰を抜かしそうになっている。

「ええっ⁈マゼンタっ⁈」と緋色。

「じょじょじょ冗談でしょぉっ⁈」

マゼンタと同じ塾のクラスメイトだったストロベリーも、言葉を嚙みまくっている。

茜色(あかねいろ)家の跡取り息子対、クリムスン家の子女だって……?)

ストロベリーの隣に座るローズも眉を吊り上げた。

 二階客席の通路に立ちっ放しだった塾講師アガットは、手摺を両手でガシッと掴む。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛なんでこんなことにぃぃぃぃっ!」

彼が地を這うような雄叫びを上げる隣で、臙脂(えんじ)ももう何も言葉に出来なかった。

 三階の紅国(くれないこく)特別室では、執政の紅樺(べにかば)が上段の席から思い切り立ち上がる。

「何をふざけたことをっ!マゼンタはあなたの大切な娘でしょうっ⁈それをこんな武闘大会の、しかも決勝の最終試合に出場させるだなんて何をどう考えてもおかしいでしょうがっ‼」

室内の全員が驚いたように彼を見上げた。

ただし一人だけ、第二王女の韓紅花(からくれない)姫は紅樺を振り返って首を傾げる。

「マゼンタ?」

姫の記憶は、鮮やかな赤紫色の髪と瞳を持つ楽師の姿を思い起こしていた。

 リング上の茜色が吹き出す。

「ぷっ、あははははっ!狂ったのはやはり君のほうだよ。あの子を?あの娘を第三試合に出場させるというのかい⁈これは可笑しい、可笑しすぎる!」

クリムスンは茜色から目をそらさずに言う。

「敢えておまえと同じ言葉で返そうか」

「なんだって?」

茜色は笑いを(こら)えて相手を見やった。

「そう言って余裕でいられるのは今のうちだけだ」

茜色がはっとする。

相手の目は恐ろしく真剣だった。

この顔……まさか君は本気なのか?あの子が戦えると?

茜色の脳にマゼンタの顔が浮かび上がる。

白く透き通る肌、信じられないくらい左右対称の顔の作り、これまで見たこともない鮮やかな赤紫色の髪と瞳……

茜色は軽く首を振った。

いや有り得ないだろう。

どこの誰かもわからない記憶喪失の養女で、今は楽坊の楽師だよ。そんな子が武術で緋色と戦うだなんて、そんなこと出来るわけが……!

 するとクリムスンがふっと息を吐いた。

「だが本人が出場することを承諾すればの話だがな」

大男は三階の客席にせり出す楽坊特別室を見上げた。


 その楽坊特別室では、マゼンタが目を見開いたままクリムスンを見下ろしている。

決勝戦第三試合。

この試合に勝てば茜色家がクリムスン家の傘下に入り、負ければクリムスン家が茜色家の傘下に入る。

そんな大事な試合を、父上は私に……!

その瞬間、彼女の中に記憶を失くしてからこれまでの間の思い出が、まるで走馬灯のように駆け巡った。

自分が丹国(にこく)の王子に銃口を向け、そのせいで謹慎を言い渡された時、クリムスンが電話で言ったこと。

ジョーガの都で発生した行方不明事件の後始末で、自分が表に出したくないデータをクリムスンたちが抹消してくれたこと。

楽坊に入る際、屋敷の前でクリムスンが掛けてくれた言葉。

自分がクリムスン家にとってどういう存在なのか問うた際、父が言ったこと。

養女であるにも関わらず、私の意思を尊重してくれたこと。

自分自身が、何かあればコチニールとカーマインのところにも、家にもすぐに駆けつけると約束したこと。

そして、風が吹き荒れる荒野。

周囲には何十人もの人々が倒れ、自分も襲われそうになった時、クリムスンが助けてくれたこと……!

あの時、クリムスンがいなかったら、私は今ここにはいない!

赤紫色の少女はすっと立ち上がった。

「マゼンタ……?」

隣に座るシェルが呆然と彼女を見上げる。

桃色(ももいろ)様」

マゼンタは同じ列のソファに座る楽坊の主の名を呼んだ。


 リング上ではクリムスンが茜色に疑問を投げかけていた。

「そっちこそ、おまえは自分の息子を出場させると言うが、本人の意思はいいのか?」

茜色の頬が若干引きつる。

「ああそれなら……」

「問題ないっ‼」

会場内に少年の大声が響き渡った。

観客が声の出所を捜し、クリムスンと茜色、審判錆色(さびいろ)も客席を見上げる。

 西側の二階客席から、黄みの鮮やかな少年が客席を跳び越えるように下へと降りてきた。

「緋色っ⁈」

少年の背後でストロベリーが彼の名を叫ぶも、彼は振り返らない。

 東側二階客席の葡萄とワインが、驚きの表情で少年の姿を追う。

「あの子……!」

葡萄が眼鏡の蔓を引き上げた。

隣でカーマインは尚も呆然としている。

「なんで俺じゃないんだ……」

兄コチニールが大会に出場し、本来なら次男の自分が選ばれるはずなのに、父が選択したのは妹のマゼンタだった。

その衝撃は彼にとって計り知れないほどの痛みを与えたのだ。

確かに妹と言えどマゼンタのほうが明らかに年上で、身長もあって、体格もいいかもしれない。

でも自分は父クリムスンの実子で、兄で、生まれた時からたくさん稽古を積んできた。

なのに、どうして……!

 カーマインが混乱する間に、緋色は一階客席の最前列に到達し、その壁からリング脇へと跳んだ。

「っと!」

少年は綺麗に着地すると「父上っ!」と、リングへ向かって走った。

 リング上の茜色は、「やっぱりやる気満々だね」と微笑む。

クリムスンが緋色の姿を確認して啞然とした。

「本気なんだな」

二人の間に立つ審判錆色も「お、幼い……」と正直な感想を述べた。


 紅国特別室では窓ガラスにへばりついた韓紅花姫が叫ぶ。

「ええええええっ⁈あれってヒッ……!」

 お隣の朱国(しゅこく)特別室でも真朱(しんしゅ)王子が目をぱちくりとさせた。

「緋色じゃねえかっ‼」

王子の隣に座る朱色(しゅいろ)王が不思議そうに首を傾げる。

「ん?おまえはあいつのことを知っているのか?」

 紅国特別室の韓紅花姫は、慌てて口に両手を当てていた。

上段中央の席に着く紅色(べにいろ)王が姫に尋ねる。

「どうした、姫。何をそんなに驚いておる?」

韓紅花は両手を外して紅色王を振り返ると、

「イ、イィィィィエッ!ナッ、ナンデモ、ナイデスッ……!」

まるで片言の赤星語(あかほしご)を喋るように答えた。

「そうか?」

紅色王が微笑み、韓紅花姫はまた窓ガラスにへばりついた。

(緋色とのこと、だれにも言わないって、やくそくしたんだった!)

姫は少年との約束を(かたく)なに守り通していた。

 朱国特別室では真朱王子が自慢げに報告する。

「この前屋台で肉巻きを買わせてやった!」

「なにっ⁈茜色家の息子と友人なのか⁈」

朱色王が目を引ん剝くその斜め後ろで、王の忠実な右腕である洗朱(あらいしゅ)は瞬きを繰り返す。

(買わせた?それは友人とは言わないのでは……)

決してそんなことを口には出さないが、王と王子はすっかり友人だと思い込んでいるらしい。

「ああっ!準決勝の前に仲良くしてやったぜっ!」

「はあっ⁈おまえは準決勝の前に何をやっとるんだっ!相手は敵方の息子じゃねえかっ!」

「最初はそれがわかんなかったんだよ。後で女官に教えてもらって知ったっていうか」

「我が息子ながら何をやっとるんだ……」

さすがの王もここでやっと王子の行動に呆れ始めた。


 緋色がリングに立つ父茜色の隣にやって来た。

「父上、ケガは大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ」

目の前の親子が会話を交わす姿を、クリムスンが何とも言えない顔で眺めていた。

この子がマゼンタと戦う……

クリムスンの脳裏に、行方不明事件の際、旅館の庭で緋色とマゼンタの二人に会った時の光景が思い返された。

なんという因縁か……

頭首たちの間に立つ錆色が恐る恐る少年に尋ねる。

「あの、本当に第三試合に出場されるんですか?」

「おーよっ!」

緋色は満面の笑顔で答えた。

「あの、これが赤星武闘大会だということがわかっていますか?」

「もちろん!」

「とても危険だということもご存知で……」

「わかってるよ!しつけーなっ!」

「うっ、で、ですが……」

すると茜色が二人の会話に割って入る。

「大丈夫だよ、この子なら」

それを聞いた審判錆色は心の中で叫んだ。

(大丈夫じゃないでしょおっ‼)

 会場内は色々な意味でざわついている。

西側二階客席のストロベリーも、

「緋色、ほんとに出ちゃうの……?」

「信じられない……」

ローズでさえ首を横に振った。

 東側二階客席でも葡萄が「有り得ません、こんな……」と、それ以上の言葉を失くし、カーマインに至っては「なんで俺じゃなくて、マゼンタなんだ……」と、その台詞ばかりを口から発していた。

 二階客席の通路に立つ塾講師たちは、教え子が選手として選ばれた現実に、呆然と立ち尽くすしかない。

「どうするんだ、これ」

臙脂が一応同僚に尋ねた。

「どうもこうも、私たちにはどうしようも……」

アガットは口を閉じることすら忘れている。


 リングでは茜色が優しい眼差しで息子に聞く。

「緋色、準備はいいかい?」

「オッケー!いつでも来いっ!」

少年は握り拳を掲げて見せた。

それを目にした審判錆色は、

(軽っ!この子ほんと軽っ!)

体重も中身も軽すぎる少年のやる気を心から疑った。

「こっちは準備万端だけど、そっちはどう?」

茜色がクリムスンに顔を向ける。

クリムスンは目を閉じた。

マゼンタ、答えは出たか。

おまえがそのまま楽坊を選ぶのならそれでも構わない。だがそうではないのなら――

クリムスンは目を開く。

(来い)

その瞬間、鮮やかな赤紫色の何かが一階客席最前列の壁を跳び越えた。

クリムスンが気配を察知して振り返る。

マゼンタがリング脇に立って、自分を見上げていた。

茜色が目を見開いて彼女の姿を確認する。

審判錆色が息を吞んだ。

「マゼンタ!」

緋色が喜んで彼女の名を呼ぶ。

赤紫色の少女はリングへゆっくり歩を進めた。


 紅国特別室では韓紅花姫が、

「ええええええっ⁈マッ……⁈」

そこまで叫んで、口を両手で再度塞ぐ。

「姫?」

紅色王が不思議そうに韓紅花を見下ろした。

韓紅花姫は両手を口から外して王を振り返り、

「イ、イヤッ、ナンデモナイデスッ……!」小刻みに首を横に振る。

紅色の斜め後ろに控えている退紅(あらぞめ)が、韓紅花をじろり睨んでいた。

姫はリングに顔を戻すと、

(マゼンタのことを話したら、緋色のこともバレちゃうぅ……!)

少年との約束を絶対に守らねばと身震いした。

同じ室内、上段の席に立ち尽くした執政紅樺は啞然としている。

「マ、マゼンタ……どうして……?」

 東側二階客席のクリムスン家の男たちも、紅樺とほぼ同様だった。

「お嬢、本当にやるのか……?」

男衆の纏め役ワインが言った。

「あなたはなんてことを、クリムスン……!」

葡萄が頭首を非難する。

妹の姿を認識したカーマインは、彼女の名前を呆然と呟いた。

 二階客席の通路に立つ塾講師たちも目を見張り、会場外の病院談話室でもテレビ画面に食いついた猩々緋(しょうじょうひ)が驚愕の表情を浮かべていた。


 リング上でマゼンタがクリムスンの横に立つ。

二人は茜色、緋色親子と向かい合った。

茜色が口火を切る。

「まさかまたこの顔合わせになるとはね」

緋色は目をキラキラと輝かせ、

(マゼンタ元気そうでよかった!この前は電話でしか話せなかったし!)

彼女の姿を間近で確認することが出来、心浮き立たせていた。

二組の親子間に立っている審判錆色は、口をぽかんと開けたままマゼンタを見ている。

何ならこの状況が上手く把握出来ていないようだ。

クリムスンが彼女に尋ねる。

「楽坊は?」

「辞めてきた」

マゼンタは父を見上げて正直に答えた。

「え?」と茜色。

「えっ?」と錆色。

「辞めちゃったの⁈」緋色も驚く。

「ああ」


 数分前。

楽坊特別室のソファから立ち上がったマゼンタは、楽坊の主を真っ直ぐに見て呼びかけた。

「桃色様」

楽坊の主は啞然としたまま立ち上がって返事をした。

楽坊に所属する楽師が武闘大会決勝戦の第三試合に選出された。

その事実がまだ受け止められないでいる。

だが、次に彼女が口にする言葉に、桃色はさらに驚かされることになった。

「私は楽坊を辞めます」

マゼンタが言った。

室内の楽師全員に衝撃が走る。

赤紫色の少女は続けた。

「私は守人クリムスン家の養女です。頭首が私に試合出場を望むなら、私はその命令に従います」

「で、でも……!」

桃色の隣で立ち上がったパステルが、楽坊の主を後押しする。

「何も辞める必要はないのではないか⁈」

マゼンタの隣に座っていたシェルも立ち上がる。

「そ、そうだよっ!これはただの大会でしょ⁈楽坊とはなんの関係も……!」

しかし赤紫色の少女は目を伏せた。

桃色がその仕草に気づいて尋ねる。

「一年間、楽器に触れないからですか……?」

シェルがはっとする。

「もしあなたが楽坊を辞めれば、好きな時に好きな曲を好きな楽器で自由に奏でることが出来る。でもここにいたのではその全てが叶わない、だから」

桃色の言葉にパステルが唸る。

一年も弾くことが出来なければ確実に指は(なま)る……だから……

「それだけではありません」

そう言ってマゼンタは楽師たち全員を見回した。

「楽坊にいた時間はとても充実していました。赤星最高の楽師に音楽を教わり、あなたたちと共に音を奏で、星中の人たちに自分の演奏を聞いてもらえる経験は、そう簡単に得られるものではない。でも、私の居場所は、ここではないと思う」

「マゼンタ……」

シェルが涙ぐんだ。

赤紫色の少女は思う。

(それを父上もわかっているから、私を呼んだのだろう)

マゼンタは赤星紅国王宮楽坊の楽師たち全員を視野に入れた。

「だから私は守人の娘に戻る。そして武闘大会の最終戦に出場する。だから……ありがとう、世話になった」

少女は特別室の出口へ向かうと扉を開け放つ。

室内に残された戦友たちが、再び閉じた扉を見つめていた。

「そんな、こんな、呆気なく……」

シェルの瞳に涙が溢れた。

ソファの隅に座ったままでいたポピーは、自分の心臓を覗き込むように俯いている。

「なによ……なんなんですのよっ……!」

あたくしはまだあなたに勝っておりませんのよっ……!

ツキソメ奏者であるポピーは心の中で叫んだ。

「桃色様……」

パステルの呟きに、楽坊の主は彼女を悲しげに見返すしかなかった。


 リングの上に立つクリムスンが再度問う。

「それでおまえはよかったのか?」

「ああ、いいんだ」

楽坊の楽師として使えないのなら、クリムスン家の娘として役に立ちたい。

それが私の願いだ。

マゼンタの決意は固かった。

 東側二階客席のクリムスン家の男たちは騒然としている。

「もう、なんてことを……!」葡萄が言えば、

「せっかく王宮楽坊に入ったのに……」

ワインも残念そうに肩を落とした。

 西側二階客席に座る紅国王宮専属の密偵たちは、

「そんなあっさり……⁈」ストロベリーが啞然とし、

「数ヶ月前に私たちが君を調べ上げて楽坊にゴリ押ししたっていうのに」

密偵集団の頭首ローズは呆れ果てていた。

 二階客席の通路に立つ塾講師たちの反応もまた同じようなもので、

「まったく」

アガットが額を片手で覆う。

「結局こうなるのか」

臙脂も無表情で呟いた。

 紅国特別室の執政紅樺は、ガクンと自席に座り込む。

楽坊を辞めた……?

私が求婚した時は、楽坊を辞めないと言っていたのに、それがこんな簡単に……?

いや、それよりこれからあなたにどうやって会えばいいのですか……?

家に押しかける?

それはさすがにマズいですよね……

ならどうしたら……!

紅樺はマゼンタに会う方法をひたすらに考えまくった。


 「まあ仕方ねーよな、だって一年も楽器に触れないんだからさ。だったらさっさと辞めて好きに弾けるほうがいいじゃん?」

リング上の緋色少年が言い放つ。

(やっぱ軽っ!この子軽っ!)

審判錆色は少年の軽薄さを突っ込まずにはいられない。

「緋色」

「ん?」

自分の名前を呼ばれて、少年は父茜色を見上げる。

「やけにこの子について詳しいね」

「へっ?そ、そう?」

「なんでこの子が一年間楽器に触れないことを知ってるのかな?」

「え、えと、それは……」

微笑みながら追究してくる茜色に対し、緋色は何とか誤魔化そうとあれやこれや言い訳をした。

まさか電話でマゼンタと話をしたとは口が裂けても言えないっ……!

緋色が必死に言い訳する間、クリムスンはマゼンタを見下ろして言う。

「楽坊に未練がないならそれでもいいが……」

「ない」

はっきりしてるな。

クリムスンは我が娘ながら少々呆れた。

「それに父上はもう、私が楽坊にいることを望まないだろう?」

頭首クリムスンは赤紫色の少女を見つめる。

「楽坊で私が使えるならそこにいる必要はあるが、それが出来ないならもう不要だ」

またそれを言うか……

大男は心の中で溜息を漏らした。

「でも私がクリムスン家の娘として、守人一族の人間として役目があるのなら、私は必ずそれを成し遂げる――たとえ相手が誰であろうとも」

彼女は目の前の少年に目をやった。

その視線に相手が気づいてはっとする。

マゼンタと緋色が互いをじっと見つめた。


















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