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イセカイロセカイ  作者: Elisu Arina
赤の章
45/130

第44話 涙と隠しごと


 全ての照明が消え、外に通じる扉も閉じ、完全に闇に包まれた中、二人の楽師が向かい合っていた。

マゼンタは舞台上から、ホールの真ん中にはポピーが立ち、互いの呼吸の音から居場所を確認していた。

「あなた、マゼンタでしょう……声でわかるわ」ポピーの声が怒りで震えている。

「さすが楽師」

「ふざけないで!どうしてあなたがここに……!」

「おまえこそどうしてこんな犯罪現場に?」

「あ、あたくしは、犯罪に巻き込まれてるだなんて、思ってなかった……!だいたい、届が出されてたっていうのだって、あたくしのは絶対に出されていないはず!家の者は、あたくしが今も楽坊にいるって信じてるはずだもの!あたくしがいなくなったって、誰も心配しない、誰も必要としない!あたくしは、あたくしは……!」

マゼンタはポピーを見つめ続けた。

「いったいどうしてくれるのよ!あたくしはお屋敷に勤めて、お抱え楽師として生きていくつもりだったの!なのに、なのにいつもこう!おまえが現れてからというもの、いつもあたくしの場所を奪っていく!楽坊も、お屋敷も、どうしていつも……!あたくしにはもう行く場所がないのに……!もうあたくしの居場所はどこにもないのにっ!」

ポピーの目から熱い何かが流れた。

マゼンタはステージから跳び降りると、彼女に向かって歩を進める。

「あるだろ」

「えっ……?」

「おまえの居場所」

「ないわよそんなもの……!」

「王宮楽坊」

「はっ、何を言って……」

「楽坊も、桃色(ももいろ)も、パステルも、おまえが帰ってくるのを待っている」

「あなた頭がおかしいんじゃないの?あたくしはその桃色様に楽坊を追い出されたんですのよ……!」

「それはおまえが色々とやらかしたからだろう」

「うっ……」

「謝って、本当の自分の気持ちを伝えれば、桃色なら許してくれると思うぞ」

ポピーの目から流れ出た液体は一粒、また一粒、と次々に頬を伝っていく。

止めようとしても止まらない、むしろ止める気すら起きなかった。

彼女の前で立ち止まったマゼンタは暗闇の中、ただ相手を見つめた。

「どうして、そんな風に、あたくしを……あたくしは、あなたに……」

「おまえはセキエを壊して持ち去っても、ツキソメだけは破壊しなかったからな」

マゼンタの脳裏にとある光景が思い浮かぶ。

楽坊の自室、他の荷物は全て天井裏へ隠してしまったが、ツキソメだけは部屋の壁に立て掛けてあった。

特に深い理由はなかった。すぐに練習出来るようにそこに置いていたのだ。

しかしポピーはツキソメを目にしたはずなのに、セキエのようにはしなかった。

「そんなの、出来るわけ、ないでしょう……!あたくしが、ツキソメを、壊すだなんて、そんなこと……!」ポピーが鼻をすする。

ツキソメをそれだけ大切に思っているから、壊すという概念さえそもそもなかった、か。

ポピーはやっと顔中の涙を手で拭うと、

「でも、確かにあたくしは、あのセキエとかいう楽器を、壊してしまいましたけど、持ち去ってなどいませんわ」

え?

「本当に?」

「本当ですわよ!なんでそんな壊した楽器をわざわざ持ち去らねばならないんですの……⁈」

マゼンタは首を傾げる。

ポピーが持ち去っていないなら、壊れたセキエはいったいどこに?

「あなた、あたくしがそのセキエを壊した後、見つかったとおっしゃいましたわよね。それはどういうことですの?その、部屋にもありませんでしたし……」

「ああ、あれはもう一本譲ってもらったんだ」

「なっ……⁈」

驚きという振動がここまで伝わってくる。

これ以上喋るとアガットの侵入がバレてしまうだろう。

「とにかくおまえはもう行け。ここから王宮は近い」

「わ、わかっておりますわ……!」

そう言ってポピーは足元に置いてある鞄を手に持った。

「ああそれから」

「なんですの?」

「今日のことはくれぐれも内密に。そのほうがお互いの為だ」

「と、当然ですわよっ」

ポピーはプイっとマゼンタに背を向けると、ホールの扉に足早に向かっていく。

マゼンタはふっと息を吐いた。

これでポピーの件は一旦解決、と。って、こうしてる場合じゃないな。

マゼンタはポピーとは反対の方向、つまり舞台近くにある扉へと急いだ。


 同じ頃、緋色(ひいろ)は旅館の庭を大勢の男たちから逃げまくっていた。

筋骨たくましい男らは自分たちより一回りは小さな彼を必死に追いかけていたが、どうしてか捕まえられない。そのくらい相手はすばしっこかった。

「なんなんだ、あのガキは……⁈」

「どうしてあんなガキ一匹に、こんな手こずらされなきゃならねえ……!」

息切れする彼らをよそ眼に、少年は余裕で走っている。

彼は走りながら後ろを振り返り、

「はっはー!オレの足について来れるかよ!」

そう笑った時だった。

突然、右脇腹に痛みが走った。と思ったら、地面に勢いよく飛ばされている。

誰かが自分の横から体ごと突っ込んできたのだ。

緋色は「いった……!」と、上体を起こす。

巨体の男がすぐ側で少年を見下ろしていた。

「あ」

「随分振り回してくれたじゃねーか」

男の図太い声が頭上から降ってくる。

表情は陰になってよく見えないが、かなりお怒りのようだ。

「別にそういうわけじゃ……」

筋肉を帯びた男の腕が伸び、緋色の襟元を掴む。

「うっ……!」

彼はそのまま少年を自分の顔の高さまで持ち上げると、

「どこの手のもんだ。警察か、守人か、それとも……」

「そんなの聞かれて素直に答えるヤツがどこにいるんだよっ」

「じゃあ力尽くで答えさせるまでだ」

「なっ……!」

男の右腕が大きく後ろへ引かれた。手の先は明らかに拳の形を取っている。

ヤバっ、殴られる……!

男の拳が緋色目がけて向かった。

その瞬間!

誰かの手の平が男の拳を握りしめていた。

緋色も当の男も目を見開いている。

いったい何が起きたのか?

「子供相手に暴力を振るうとは、貴様クズの風上にも置けないな」

男の拳を握りしめた誰かはそう言うと、もう片方の手で相手の顎下から上空へと殴り飛ばした。

その勢いで巨体の男は背中から地面に倒れ込む。しかもその一撃が相当効いたのか、ピクリとも動かない。

巨体の男の手から逃れた緋色は体勢を整えると、

「あ、あんたに助けてもらわなくても、オレは自分で戦え……」

相手の顔を見上げた。

庭園は暗い。

だが所々背の高い明かりだったり、足元を暖かく照らす照明が設置されている。

そのせいで相手の顔は薄ぼんやりとはしていたが、さすがに少年は気づいた。

「ぎゃっ‼ク、クリムスン⁈ど、どうしてあんたがここに⁈」

見間違えるわけがない!

守人一族クリムスン家頭首、クリムスン!

ウチの最大最悪のライバル野郎じゃねーかっ‼

茜色(あかねいろ)家の息子こそこんな所で何をしている」

バレてるーっ!オレの正体をしっかり知ってやがるーっ!

「えっ、そ、それは……」

緋色は周囲を見回した。

さっきからなんか騒がしいと思ったら、屈強な男たちが同じく屈強な男たちを相手に殴り蹴りしている。

よく見るとそれはクリムスン家の男たちが、少年を追いかけていた奴らを次々と倒している光景だった。

「えええーーっ⁈」

なんかヤバいことになっているーっ‼クリムスン家の野郎どもがどうしてここにーっ⁈

「答えろ」

「へっ⁈」

少年はライバル家の頭首を見上げる。

「こんな場所でいったい何を。おまえはこの件に何か関わっているのか」

「いやいやいやいや、そういうわけでは……!」

焦りに焦りまくった緋色が首を左右に振った時だ。

「緋色!」

遠く、旅館裏手のほうからやけに通る声が伝わってきた。

その声の主は少年に向かって真っ直ぐ走ってくる。

彼女の姿を視認したクリムスンは、

「なっ⁈」と、声を漏らした。

「無事だっ……」

緋色に向かっていた彼女はそう言いかけて足を止めた。

少年の側にいる大男に見覚えがある。

最初は緋色を襲おうとする武装した男だと思ったのだが、どうも様子が違う。

そうしたらまさか、まさか……⁈

「ち、父上⁈」

「どうしておまえがここに!」

「父上こそどうしてここに……⁈」

クリムスンはマゼンタに近づきながら、

「先に答えろ、どうして楽坊にいるはずのおまえがここにいる……!」

「そ、それは……」

マズイ、これは相当な非常事態だ……!まさかこんな所で父上と鉢合わせするとは……!

緋色はソワソワしながらも二人に近づく。

「マゼンタ、答えろ」

クリムスンの表情は変わらない。

だがその瞳の奥に怒りと戸惑いが混じり合っているのはマゼンタでも感じ取れた。

仕方ない。こうなったら……

「私の知り合いがここから連絡して来て、その、会いに来た」

「ここから?」

意外な答えにクリムスンは再度驚かされた。

「でも会えなかった」

ポピーのことを言うわけにはいかない。さっき約束したばかりだし、言えばアガットが侵入したことまでバレかねない。そうしたら緋色のことまで……

彼女の脳に様々な事柄が芋づる式に浮かんでいった。

「マジ⁈やっぱいなかったの⁈」

「あ、ああ」

マゼンタは緋色に対して視線を下げる。

「なんだやっぱおまえの考えすぎだったんじゃん」

「そ、そうだな」

クリムスンはマゼンタと緋色をじっと観察していた。その上で、

「ここから連絡してきたということは、ここに宿泊していたということか?」

「それは、さあ」

赤紫色の少女は言葉を濁した。

(マゼンタ?)

少年が首を傾げる。

「ここに勤めているのか?」

「いや、それは違うと思うが……」

クリムスンは真意を測るようにマゼンタを見た。

彼女は思わず顔を背ける。

(なんだどうした?)

少女の煮え切らない態度に緋色は首を傾げっぱなしだ。

マゼンタは話題を変えるように、

「あー、父上たちはどうしてここに?」

「無論、例の行方不明事件の調査でだ」

「そうか」

そうに決まっている。

「どうやらここに行方不明者たちが軟禁されていたらしい。まあ、真相は奴らから徹底的に吐かせるが」

そう言ってクリムスンは周囲に目をやる。つられてマゼンタも視線を向けた。

武装した奴らがクリムスン家の男たちに取り押さえられていた。

彼らの中には見知った顔もある。ワインに、ボルドーに……

 彼らを眺めるマゼンタにクリムスンは顔を戻すと、

「何か隠していることがあるなら今のうちに話したほうが身の為だぞ」

それがおまえを護ることにもなる。

頭首は真剣に尋ねた。

ところが彼女は父親を真っ直ぐ見上げ、

「隠してなどいない」

きっぱりとそう答えた。

「それは確かか」

「確かだ」

親子の睨み合いが続く。

完全に嘘だとバレている。しっかり怪しまれてもいる。

それでも隠し事はないと言い切るしかない。

ポピーのために、緋色のために、アガットのために……!

マゼンタはそう固く信じていた。

二人の間に立った緋色少年は瞳を右往左往させている。

「なるほど。で?おまえはその知り合いに会うために王宮楽坊を出る許可を得たのか?」

クリムスンが問う。

「それは……」

「許可を得ず勝手に抜け出してきたんだな」

「……」

「その知り合いというのは余程大切な相手らしい」

少女は下を向く。

そういうわけではないが……

「あ、あの」

たまらず緋色が二人の間に割って入ろうとした。が、

「おまえは黙っていろ」

「うっ」

ライバル頭首の迫力にあっさり負けてしまった。

クリムスンは続ける。

「相手から連絡が来た、それはこの旅館からだった、だから会いに来た。さっき私が〝ここに行方不明者たちが軟禁されていた〟と言ってもおまえは驚かなかったな。つまり全部知っていたんだろう?その知り合いが行方不明事件の被害者なのだろうと、だから助けに来た、違うか?」

「スゲー、当たってる」

少年はいたく感心した。

しかしマゼンタがいつになく恨めしい顔で緋色を見ている。

「えっ」

なんでオレが睨まれんの?

少年には彼女の意図が上手く読み取れなかった。

 クリムスンが溜息をつく。

「そんなとこだろうと思った。でもはっきり言っておくぞ。おまえがそこまでやる必要はない、これは我々の仕事だ。それを子供二人で勝手に動き回って、何かあったらどうするつもりだったんだ」

「それは問題な……」マゼンタと緋色が同時に言いかけ、互いの顔を見やった。

そして改めて、

「私は問題ない」と、マゼンタ。

「オレだって問題ねーよっ」と、緋色。

クリムスンが二人を見下ろしている。

「本当か?」少女が少年に聞く。

「お、おーよっ」

さっきクリムスンに助けてもらったことは絶対バレないようにしなきゃ……!

緋色のこめかみを汗が伝った。

「確かにおまえの強さならそうかもしれんが、なぜよりにもよって……!」

と、父は緋色に視線を向けた。

「だ、だって……!」

「緋色は関係ない」

「へっ?」

何か言い訳をこしらえようとする少年に、マゼンタが言葉をかぶせる。

「ほお、関係ない奴がなぜここにいて男に襲われていたんだ」

襲われた?

少女は若干呆れたように目をやる。

「襲われてねーよっ!ちょっと捕まっただけってゆーか……!」

「それを助けたのは誰だった?」

「ぎゃーっ!それ以上は言うなーっ!」

マゼンタは父と緋色のやり取りに啞然とした。

つまり緋色を助けたのは父上ということか。

 彼女は話を戻すように咳払いをすると、

「とにかく、こいつとは私がここに来る途中たまたま会って、そしたら私のことが心配だからと勝手についてきたんだ」

「いやそういうわけじゃ……!」

そう言いかけた緋色の尻を少女は指でつねった。

途端に少年が言葉を失い涙ぐむ。

「たまたま?」

クリムスンがマゼンタに問う。

「たまたまだ」

マゼンタは言い切る。

父であり頭首でもあるクリムスンは娘をじっと見つめた。

おまえの真意はどこにある、と。

養女であるマゼンタは父を見返した。

私は噓は言っていない、と。

二人の視線がぶつかり合う間で、緋色はつねられた尻を撫でながら涙ぐんでいた。

「マゼンタ、私は〝たまたま〟という言葉をよく使う奴を知っているが、そういう奴に限ってそれは〝たまたま〟ではない。言っている意味がわかるか?」

クリムスンが言った。

少女はしばし考える。が、こう答えた。

「わからない」

わからないんかーい⁈

緋色が心の中で叫んだ。

さすがの少年でもその意味は理解することが出来たのだ。

「でも私が言ったことは事実だ。緋色は何の関係もない」

マゼンタがまたも言い切る。

それに対しクリムスンは溜息をついた。

緋色は思った。(もしかして、マゼンタはオレのこと守ろうとしてんのか?)と。

 その時だ。

少し離れた場所から少年の名を呼ぶ声が聞こえてきた。

「え?」

緋色が声のしたほうへ顔を向け、マゼンタとクリムスンもそちらに目をやる。

暗がりでも彼らの姿は認識可能だった。

周囲の筋骨隆々とした男たちの中では、やけにほっそりした体格は目に付くし、隣には背丈の低い、髪をツンツンとさせた男を連れている。

しかも二人の背後には、何十人ものいかつい男たちがぞろぞろとついて来ていたのだ。

これなら彼らの正体は一目瞭然だろう。

(くそ、面倒なのがやって来た)

クリムスンは心の中で述べた。

「父上⁈猩々緋(しょうじょうひ)も⁈」

緋色が叫んだ。なんでここに⁈

マゼンタも緋色の父で守人一族茜色家頭首、茜色を眺めている。

茜色と猩々緋は真っ直ぐ緋色のほうへ向かい、二人が連れた大勢の男たちはその場に留まると、クリムスン家の男たちと早速威嚇合戦を始めた。

「どうしておまえがここに⁈」

「こんな所で何をなさっておいでか⁈」

茜色と猩々緋が緋色に近づくなり言った。

「あ、えっと」

「デジャヴだな」クリムスンは呆れる。

茜色はクリムスンに詰め寄ると、「これはどういうことだ、説明してもらおうか……!」

「そうじゃそうじゃ、クリムスン家頭首よ!」猩々緋も大男を思い切り見上げた。

「それを今こっちも聞いていたところだ」

「はあっ?」

ふと茜色はクリムスンの隣に立つ少女に気づいた。

「どうして君が……!」

茜色ははっとして息子と彼女を見比べると、緋色に視線を下ろし、

「まさかおまえ……!」

「いやっ、だから、これは〝たまたま〟でっ……!」

少年の額から汗が吹き出しまくる。

「あれほどもう関わるなと言ったのに、ずっとこの子と……!」

「なんとっ⁈そうなのですか緋色様っ⁈」猩々緋も声を荒げる。

「違違違違うって!そんなずっと関わってるワケないじゃん!」

「だったらどうして!」

「だから〝たまたま〟……!」

クリムスンとマゼンタは目の前で繰り広げられる親子喧嘩を呆然と眺めた。

まるで数分前の自分たちを見せつけられているようだ。なんという醜態をさらしたものか……

 しかしクリムスンは呼吸を整えると、脳内を颯爽と整理し始める。

(とにかく、マゼンタとの関係については後で言及するとして)

彼は少女を見下ろした。

この子が事件現場にいたことが世間にバレるのはマズイ。だがそれはこいつにとっても同じこと。

と、今度は息子を叱る茜色に目を向ける。

だったら……

 緋色と茜色、猩々緋の三人はまだ喧嘩を続けている。

「どうやったら〝たまたま〟この子と会うことが出来るんだい⁈」

「だって〝たまたま〟会っちゃったもんは〝たまたま〟会っちゃったんだからしょうがないじゃん!」

「そんなの無視すればよいではないですかっ!」

「そういうわけには!」

「だいたい王宮の楽坊にいる楽師とどうやって外で会えたんだ⁈」

「それは……!」

クリムスンが大きな咳払いをする。

怒鳴り合っていた三人は一様に大男に注目した。

「親子喧嘩なら余所でやってくれないか」

「なんだと?」

急に冷静さを取り戻した茜色がクリムスンに食ってかかる。

「さっき自分たちもおんなじようなことやってたじゃん」

緋色が唇を尖らせて言う。

マゼンタは何とも言えない表情で父に視線を送った。

クリムスンはその場から顔を背けるように、

「とにかく、周りを見ろ」

茜色と猩々緋は渋々言われた通りに周囲を見た。

クリムスン家の男たちが武装集団を確保し、茜色家の男たちと睨み合っている。

「犯人を捕まえたみたいだな」

一歩遅かった、こいつにしてやられた……!

茜色は心の中で地団太を踏んだ。

「お陰様で。だが問題が一つある。この子たちだ」

クリムスンはマゼンタと緋色を見下ろした。

茜色は溜息をついて、

「なんで事件現場に……」

「その追求も後だ」

茜色のこめかみの血管がプチっと切れた。

「なぜ君が指揮を執る」

「私たちのほうが先に到着し、解決したからだ」

茜色は大男を睨み上げる。

隣の猩々緋も怒りで拳を震わせた。

「とにかく、この子たちがこの場にいたことが明るみに出るのはマズイ。わかるな?」

「ああ」

茜色の心の中は真っ赤に燃えていた。

でも目の前の奴の言っていることはよくわかる。

賛同は出来ない、出来ないが、これも緋色のため……!

彼は何とか怒りを抑えようと必死に冷静を装った。

けれども相手の次の言葉にその感覚は吹き飛んでしまう。

クリムスンは、

「だからここに二人はいなかった。そういうことで話をつけたい、以上だ」


















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