第121話 ラブレターと色光基礎クラス
「マジでっ⁈色光っ⁈」
緋色の瞳がキラリ輝いた。
「ああ、午後の授業からだ」葡萄の問いにマゼンタが答える。
「いいなーっ!色光、マジスゲーっ!」と、緋色。
「輸送機クラスの筆記と実技テスト合格したもんね」コチニールも微笑んだ。
「いいなーいいなー、マゼンタマジうらやましいなーっ」
「僕たちもいずれは受講出来るよ」
「そうだけどさぁ、マゼンタなんつーか、進むの早えーんだよ」
緋色の言葉に葡萄がはっとする。
「緋色……!」
「あ?」
「初めて意見が合いましたね……!」葡萄は感動しながら目の前に立つ少年を見た。
「え?」
「そう、そうなんです……!」
葡萄は立ち上がると、緋色の隣に立って赤紫色の少女を見下ろす。
「マゼンタ、あなたは進むのが早すぎなんですよっ!もう何回も何十回も何百回も聞かされてうんざりしているかもしれませんが敢えて言わせてくださいねっ!もっとコチニールとスピードを合わせてくださいっ!」
ベンチに腰掛けたコチニールはポカンとし、隣に座るマゼンタは無表情で葡萄を見上げた。
「そーだそーだ!つーかなんならオレにも合わせろっ!」と、割って入る緋色。
「あなたは自分でもっと早く進んでください」すかさず葡萄が緋色に突っ込む。
「ぬあっ⁈」
「で、でもさ、マゼンタは色んなことに長けているから先へ進めるわけで、わざわざ僕に合わせなくても……」
戸惑うコチニールに葡萄は顔を近づける。
「いいんですか、そんなことを言って」
「え?」
「このままだとマゼンタはあなたを置いて先に卒業してしまいますよ」
「そ、卒業っ⁈」コチニールと緋色の叫びが揃った。
「それはいくらなんでも早すぎんだろっ!」と、慌てる緋色。
「でしょう?そうでしょう?私が口酸っぱく言ってるのはそのためなんですよ、わかってくださいましたか?」
葡萄に言われて、コチニールは戦闘部のカリキュラムを思い返す。
(確かに、色光基礎クラスを受講したら次は色光実技クラス、そうしたら次はもう……!)
葡萄を見上げていたマゼンタは、何か反論しようと口を開きかけた。
が、突如として彼女の手首に付けた時計型端末が音を鳴らし、全員の意識がそちらへと向けられる。
「ん?」と、コチニール。
緋色も「なんだ?」
「メールだ」言いつつマゼンタは端末に触れる。
すると、端末から飛び出した透ける画面に、橙星語でびっしりと書かれた文章が浮かび上がった。
彼女はしばしその文章を読んでいたが、なぜか氷のように固まっている。
「どうかした?」
隣に座っていたコチニールが、端末から浮かび上がっている文章を覗き込んで内容を口に出した。
「なになに?えっと……はじめまして。突然メールを送ってしまって、申し訳ありません。でも私は不審人物ではないので、どうぞご安心ください。私は、いつも陰ながらあなたを応援している者です。あなたは他の学生とは比べ物にならないほど優秀で、学園始まって以来のスピードでクラスを進み、今日の午後からは色光基礎クラスを受講されますよね。おめでとうございます!私にとってあなたは憧れの存在であり、希望の光です。あなたに勝る者はこの学園にはおりませんし、私が知る限り、これまであなたのようなお方を見かけたこともありませんし、今後出逢うこともないと思います。あなたが先へ進んでしまうことは、悲しくて切なくもありますが、それがあなたの才能なのだと、私は充分に理解しているつもりです。だからどうかお体に気をつけて、誰よりも強く、誰よりも美しく進んでいってください。最後にやはり陰ながら、いつまでもあなたのことを応援しております……」
自分たちの前に立っていた緋色と葡萄が口をポカンと開けている。
メールから顔を上げたコチニールは、
「これ……ラブレターっ⁈」
「ええっ⁈」緋色と葡萄は思わずメールを覗き込んだ。
「ラブレター?」
マゼンタは彼らにメールを見せながら、首を思い切り横に傾けた。
色光基礎クラスの授業は、戦闘部の敷地内にある校舎の一室で行われる。
室内はまるで中央棟の必修クラスで使用する講堂を一回り小さくしたような作りで、階段状のテーブルと椅子が黒板のほうを向き、窓からは日の光が燦燦と降り注いでいる。
授業内容は基礎クラスなだけあって、毎回この場所で机に向かい、色光に関する基礎知識を徹底的に叩き込まれるらしい。
受講する生徒はほんの数人。
理由はほとんどの新入生がまだこのクラスに到達していないことと、上級生に限っては既に先に進んでいるか脱落しているかのどちらかだからだ。
このクラスを受講するのは今までよっぽど授業をサボっていたか、よっぽど進みが遅い留年組か、反対に異様に進みの速い新入生のみだ。
受講生は階段状の席のあちこちに点々と座り、黒板の前で授業を開始した教師を見下ろしている。
彼らの中に含まれるマゼンタは窓側の中腹辺りに座り、同じく輸送機クラスを合格したマロウ王子を演じるモーヴは中央後方に席を取った。
マゼンタは通常ならば、どんな授業でも一応真面目に受講している。時に授業を抜け出すこともあるにはあったが、それはよほどの事態に限定された。
彼女は常に授業の最初から最後まで、居眠りなどすることなく担当教師の文言に耳を傾けていたのだ。
ところが今は、その状態から大きく外れている。
彼女は担当教師が扉を開けて壇上に立つ間に、まず一つ溜息をついた。
そして授業が始まって、さらに溜息を重ねた。
これが溜息をつかずにいられるか。
(よりにもよって……)
マゼンタはまた溜息をついて壇上に目をやる。
そこには戦闘部教師、チェスナットが立っていた。
二十九歳、背は葡萄より少し高く、日に焼けた肌に程よく筋肉のついた体、緩くカールした顎までの髪に、何より生徒からも教師からも愛される爽やかさを絵に描いたような教師。
だがその煌めく瞳と信じられないくらい爽やかな笑顔の向こう側で奴がやっていることは、生徒を監視したり、調査のために手段を選ばなかったり、何なら自分の家族まで傷つけたり……とにかく、マゼンタにとっては今後一切関わり合いたくない人間第一位だった。
授業を続ける彼は生徒たちに言う。
「というわけで、色光になるためにはまず自分自身に集中すること、そして信じること。自分は色光になれるのだと絶対的に信じ込むこと。これがまず第一ステップです」
チェスナットはちらりマゼンタに視線を向けた。
彼女の眉がぴくりと反応する。
(そう。以前君に言ったこと……)
チェスナットの脳裏に、キャンプ実習での出来事が蘇った。
夜、マゼンタたちがテントを張った野営地へ、チェスナットは衛生部教師の檜皮と共に赴いた。理由は生徒の一人が湿疹によってパニックを起こしていたからだ。
実際その生徒は特に問題はなかったのだが、彼らの野営地には、絶対にいてはいけないはずの動物が横たわっていた。
そのため動物を捕獲したというマゼンタから事情を聴いていたのだが、話は違う方向へと進んでいった。
「とにかく、私たちは今後一切おまえには関わらない。だからおまえも私たちを放っておいてくれ」
彼女がチェスナットを突き放した。
「それは無理な相談です」
チェスナットは続ける。
「あなたならこの言葉の意味がおわかりなのでは?」
彼の意識が現在へと戻った。
壇上から鮮やかな赤紫色の少女を見上げると、相手は席から自分をじっと見下ろしている。まるで親の仇だと言わんばかりに。
チェスナットはそんな彼女に心の中で呟く。
(戦闘部色光学科色光クラスの担当は私だ。だから必然的に君やコチニールはまた私と関わらずを得ない)
そして彼女からさっと視線を外して授業を続けた。
「その後に想像。自分の体が大きな光となり上へ上へと巨大化していく。頭頂部から手の指先、足の爪先まで、細部を具体的にイメージすること。内側から常に光を発光させていること。この時点でもし、君たちに才能があれば、色光には簡単になることができます」
マゼンタは相変わらずチェスナットを自席から見下ろしている。
これから色光基礎も色光実技も、この男から教えを授からなければならないなんて……!
彼女はいつもの無表情ながらも、奥歯を必死に嚙みしめた。
マゼンタとチェスナットの間に何かを感じ取っているモーヴは、二人を交互に見比べながら、その様子を淡々と窺っていた。
「ラブレターっ⁈」
夜の食堂にヘンナ、ビスタ、ラセットの素っ頓狂な声が響いた。
三人の声はかなり大きかったが、周囲の生徒たちはそれに負けないくらい楽しく談笑しながら夕食を取っている。
ビスタとラセットの隣に座った柑子とマルーンは、驚きの知らせに口を呆けていた。
柑子のさらに隣に掛けた緋色が叫ぶ。
「そーなんだよっ!もらったの!マゼンタが!ラブレターっ!」
「マジでっ⁈」緋色の向かい側に座ったヘンナが確認する。
「ああ」ヘンナの隣でマゼンタが答えた。
その途端、大男ビスタと腰巾着ラセットの意識はぷつりと途切れた。まさか自分たちを差し置いてマゼンタがラブレターをもらうだなんて、夢の夢のそのまた夢にも思っていなかったのだ。
「きゃあっ!今時ラブレターだなんてロマンチックじゃないのっ!」ヘンナが顔を両手で覆う。
彼女の行動に、マゼンタのさらに隣に掛けたコチニールは(ヘンナが照れてる)と、思わず微笑んだ。
しかしコチニールの隣に座っている葡萄が口を挟む。
「いや、あれから文面をよく読み解いてみましたが、必ずしもあれは恋文というわけでは……」
「えーっ⁈あれは絶対ラブレターだよっ、なあコチニールっ⁈」と、緋色。
「え、あ、うん」
紅国人の感覚としてはそうだと思ったんだけど……
コチニールはパチパチと瞬きを繰り返した。
「マゼンタさん、すごいですね……」呆然としたままの柑子が呟く。
橙星第一王子のその姿に、マルーンは思わずフォローを入れた。
「で、でも柑子殿下にもたくさんのファンレターが届いて……!」
「この学園に入学してからはいただいてないかな、一度も……」
マルーンは驚愕の表情を浮かべて息を吞む。
(僕としたことが、何という失態を――‼)
チェスナットの手先として密かに暗躍しているマルーンは、自分の不甲斐なさを心から悔いた。
その間にもビスタとラセットは下を向いたまま、意識をどこかへ飛ばしている。
「まさかこの怪力女のほうが先に春を迎えることになるだなんて……」ビスタだ。
ラセットも「俺たちにはラブの〝ラ〟の字も降ってこないってのに……」
するとヘンナがマゼンタのほうへ身を乗り出す。
「でっ⁈相手は誰なのっ⁈」
「それは……」
マゼンタが言い淀むと、すかさず兄コチニールが情報を付け足した。
「差出人の名前が書いてなかったんだ、ね?」
妹はこくりとうなずく。
「この学園内から送信されてるのはわかったんだけど」
「えーっ、何それつまんないっ!それじゃあそっから先は進展しないじゃないのっ!」コチニールの言葉にヘンナは若干憤慨した。
それでも兄コチニールは思う。
(本当はマゼンタのハッキング能力で差出人を調べることも可能なんだろうけど、彼女はそこまでするつもりはないらしい。まあ、今はセキエの練習や色光基礎クラスが始まったばかりでそんな余裕はないだろうし、マゼンタにとってあのラブレターはあまり興味を引かないみたいだ)
そこへ緋色が口を挟む。
「差出人が誰かわかったらソッコー茶化しに行くのになっ!」
「ちょっ、緋色」と、コチニール。
ヘンナも緋色の肩を持つ。
「だよねだよね!マゼンタのどんなとこが好きになったの?とか聞いてみたいよね!」
「なーっ!」
二人の会話にコチニールは一瞬固まった。
(〝マゼンタのどんなとこが好きになった〟か……?)
コチニールの様子に気づいたヘンナは、早速茶々を入れる。
「お兄ちゃんとしては気になっちゃう?大切な妹に彼氏ができちゃうかもしれなくて」
「そ、そんなことは……」
そう返しつつもコチニールの心臓がドキッと音を立てていた。
「あー、うろたえてるぅ」
緋色も「コチニール、マゼンタのこと心配なの?」
「べ、別に僕は……!」
兄がうろたえ、ヘンナと緋色が茶化す隣で、当のマゼンタはプレートの豆をスプーンで悠然とすくって食べている。
「わかるっ、わかるよっ、だってコチニールはシスコンだもんね」と、ヘンナ。
「はっ?」
「シスコン?」緋色が首を傾げた。
「姉とか妹が大好きな人のことよ」
「あー!」納得したように大きくうなずく緋色。
「いやっ、僕は別にシスコンじゃ……!」
マゼンタは確かに大切な家族だけど……!
「いいって否定しなくても、周知の事実だからさ」
「周知⁈僕ってそんな風に見られてるのっ⁈」
「うん」
ヘンナの情報にコチニールがガクリとする。
(なんかシスコンって、家族を大切にしているっていうより、ただ単純に妹大好き人間みたいなニュアンスに聞こえるんだけど……)
コチニールが落ち込んでいると、例の男が眼鏡を光らせて会話に入った。
「ですからね」
「ん?」緋色とヘンナが葡萄に視線を向ける。
葡萄はテーブルに両手をバシッとつくなり、
「あれは恋文ではなくただの応援の手紙ですよ、応援のっ!それをさっきから聞いてれば差出人を茶化すだの、コチニールのことをシスコンだのっ、何好き勝手言っちゃってくれちゃってるんですかっ!」額中の血管を切りまくって唾を飛ばした。
「あ、ごめん、言い過ぎた?」と、苦笑いのヘンナ。
緋色は唇を尖らせ「半分冗談だったんだけど」
「赤星紅国守人一族クリムスン家の人間に対してその冗談は通用しません!」
葡萄の怒りはすさまじかった。今にも鼻から真っ赤な息を吹き出しそうだ。
「はい……」さすがにヘンナはしゅんとする。
「ごめんなさい……」緋色も素直に謝った。
二人の謝罪を受け取った葡萄は、大きな溜息をつく。
マゼンタのクラスの進みの早さ、彼女に何らかの意図を持って近づくマロウ王子、そしてマゼンタが言っていた〝コチニールから離れたほうがいい〟という思い……これらだけでも面倒だというのに、また新たに恋文問題まで追加されたら私はもう、どう対処したらいいのか……
葡萄が様々な問題を考えつつ、ふと目の前に座る柑子、マルーン、ビスタ、ラセットに目を向けると、四人はそれぞれの思いから大いに落ち込んでいた。
「って、いつまで凹んでるんですかっ!」
眼鏡の彼が今度は四人に唾を飛ばすと、彼らははっと我に返った。
その時、何も事情を知らない洗柿がマゼンタたちのテーブルにやってくる。
洗柿は自らを〝特別スペシャル顧問〟と名乗っているが、実際はこの食堂を仕切る柿渋渋紙夫妻の息子で、普段は厨房の手伝いを担っている。
「こんばんは!どう?今日の夕飯は進んでますか?」
洗柿が軽いノリで挨拶をすると、ブチ切れたままの葡萄が叫んだ。
「進んでなんかいませんよっ!」
その場の全員が葡萄の反応に唖然とする。
「ちょ、葡萄、どうしたの?」コチニールが彼に尋ねた。
柑子も「お食事、美味しくないんですか……?」
マゼンタも持っていたスプーンから豆をポトリと落とした。
はたと意識を取り戻した葡萄は、
「あっ、いえ、こちらの話です。お食事は大変美味しくいただいております、はい」と、額の汗を拭う。
(葡萄?)コチニールが首を傾げ、
緋色は(オッサン、キレてたかんなー、オレらのせいで)と、心の中で呟いた。
洗柿は口角を引きつらせたまま、
「そ、それはよかったっス。ええ、本当に……」
「ええ、本当に」葡萄も彼に愛想笑いを返す。
洗柿と葡萄は冷たい空気が漂う中、そのままぎこちなく笑い合った。
しかしそれがひと段落すると、
「けどそういえば」その場にしゃがみ込んだ洗柿が話を振る。
「柑子殿下はよくここを利用してくださいますけど、紫星の王子っつぅ人は一度も来てくれたことがないんスよねー」
「マロウ王子?」と、緋色。
「そう、その人」
「あー、あの人はね、橙星の料理があんま好きじゃないのよ」当然ながらヘンナだ。
「ええっ⁈マジでっ⁈」
コチニールはやはり思った。(ヘンナ、相変わらずストレートすぎるっ……!)
肉にかぶりついたビスタも言う。
「そりゃそうだろ、だってアイツは紫星から来たんだぜ。きっと食べ物なんか全然違げーよ」
ラセットもビスタに同意してうなずいた。
「そっかー、なんかちと残念」洗柿が唇を尖らせる。
別に自分たちの料理を気に入ってほしいとか、あわよくば大好きになってほしいとか、何なら最高の賛辞をいただけたら……なんて思ってはいないが、橙星そのものの料理が好きじゃないのは、何だか切ない気がしたのだ。
そこへ柑子が「でも王都にいらした時は飲み物でしたらよくお召し上がりになっていましたよ」双方をフォローする発言をした。
が、「宮廷料理で出されるような高級なお飲み物を、でしょう?」ヘンナは嫌味たっぷりで柑子に返す。
(ちょっとーっ!またそんな露骨に言わなくてもっ!)と、コチニール。
ところが柑子は「いえ、それだけではなくて、屋台や市場で一般的に提供されるものもお飲みになっていらっしゃいました」と、真実を述べた。
「ホント?」ヘンナが目を丸くする。
「はい」
コチニールもすかさず「だからマロウ王子は決して橙星の料理が嫌いとか口に合わないとか、そういうわけじゃないと思うよ……!」
「ううむ……」ヘンナは何かを思案しながらプレートの肉を頬張った。やはり我が星、我がカイクウの都のワニ肉は、今日も最高に美味しい。
「ま、真実はわかんねえよな。だってアイツ、寮にも自分の部屋持ってねえし」ビスタが情報を付け加える。
ラセットも「全寮制なのにな」
「そうなのっ?」肉を口に入れたままのヘンナがさらに驚いた。
ビスタらの言葉に、マゼンタもスプーンを止めて顔を上げる。
「そういえば寮でマロウ王子の姿見たことない!」と、緋色。
「確かに」コチニールだ。
葡萄も「一度もお見かけしていませんね」
不思議がる彼らを、マルーンだけは涼しい顔で見渡している。
(それはそうでしょう、あのお方は紫星の王子なのですから)
チェスナットの手先であるマルーンは、マロウ王子に関する情報も無論、把握済みなのだ。
緋色が言う。「柑子王子は寮に部屋あるのにねっ」
「う、うん」一応……
柑子は何とも言えない表情で答えた。
「じゃあその紫星の王子様はいったいどこで生活してんスか?」
洗柿の素朴な疑問に、マルーン以外の全員が唸る。
マゼンタは何を思ったか、スプーンを持つ手を止めたまま、前方をただ真っ直ぐ見つめていた。




