第106話 守人の腕
剣道場は赤星紅国クリムスン家の敷地内にある、道場のような作りだった。
板張りの床と壁の上にどっしりとした三角屋根が乗せられて、剣道場自体が床の底を何本もの柱で支えられ、地面よりも少し高い位置にあった。
広さもかなりの人数が収容出来そうで、これなら直射日光を浴びずに授業が受けられる……生徒たちはそう思ったが、実際彼らが通されたのは剣道場の中ではなく、外にある地面の上だった。
剣道場の正面に薄茶色の土で敷き詰められた地面は、建物とほぼ同じくらいの面積だろうか。さらにその周りは低い茶色の植込みが、地面と建物をぐるり囲んでいる。
剣術クラスを受講する生徒は、剣道場の中に入ることを許されず、植込みで囲まれた土の上にぞろぞろと立たされた。当然ながら土の上に屋根はない。直射日光万歳だ。
剣術クラス担当教師の黒茶は剣道場正面の雨戸を全て開け放ち、足元の床板にどっかと座り込むと、毛色の珍しい新入生を含めた彼らを一切の無表情で見下ろす。
黒茶、五十六歳。背丈はマゼンタよりも低いが筋肉質で、相当鍛錬を積んだような雰囲気を醸し出していた。スキンヘッドで瞳は小さく色はほぼ黒に近い茶色、服装は黒い道着を着込んでいる。
彼は各々木刀を持って土の上にたむろする生徒たちに言った。
「さあ、突っ立ってないでさっさと試合をせんかっ!相手を打ち負かすまで次の授業には進ませんぞっ!」
担当教師の言葉に、生徒たちが慌ててペアを組み出す。
しかし彼らに交じってそれぞれ木刀を持っていたマゼンタ、コチニール、葡萄は黒茶を呆然と眺めていた。
「やっぱり体術や剣術の先生ってあんな感じだよね」と、コチニール。
「イメージ通りお厳しそうですね」葡萄もコチニールに賛同する。
コチニールと葡萄がそんな会話をしていると、彼らから少し離れた所にいたビスタとラセットが、いつものように互いの腕を組み合わせた。
「じゃあいっちょやってやるかっ!」
「毎度ながら手加減してくれよっ!」
なぜか意気込む彼らを眺めてコチニールが言う。
「なんか、ビスタとラセットってほんと仲良しだね。いつも一緒にいてペアを組む時もいつも二人で」
「ああ」とマゼンタ。
「あ、僕たちも同じか」
ビスタとラセットに対して思った感想が自分たちにも当てはまることに気づいて、コチニールははっとしたが、彼の隣に立つ葡萄はマゼンタを意味深な目で見ていた。
学園の戦闘部の敷地は中央棟の裏側左に伸びていたが、その反対の右側は衛生部の敷地だった。
衛生部は戦闘部ほど敷地は広くないが、基本的に屋内で授業をすることが多く、中央棟の側には衛生部の校舎が綺麗に整列している。
校舎はほとんどが四階建てで、中央棟と同じく横長に伸びていた。
その校舎の一つ、三階の端にある窓から、とある女子生徒が戦闘部の剣道場を眺めている。
衛生部の校舎から、戦闘部の剣道場はほぼ丸見えだったのだ。
その女子生徒は気だるい表情ながらも、剣道場を先程からずっと見つめていた。
と、彼女の後ろをたまたま通りかかった生徒が声を掛ける。
「何見てんの?」
衛生部のヘンナだった。
実はヘンナはその女子生徒と必須科目のクラスも一緒だった。つまりマゼンタたちと同じクラスメイトでもある。
ヘンナは彼女の隣に立つと、同じように窓から外を覗き込んだ。
目の前にちょうど戦闘部の剣道場、正面がしっかりと見渡せる。
「おーやってるやってる。あれ?ビスタとラセットじゃん」
ヘンナが道場手前の土の上で向かい合う大男と腰巾着に気づいた。
ところが自分の隣に立つ女子生徒が言う。
「あいつらには興味なし」
「えっ、じゃなんで見てんの?」
ヘンナが隣の彼女に目を向けた。
彼女の名はトパーズ。年は自分より一個上の十八。身長も自分より僅かに高い。そのくせ、出る所は出てるのに締まっている所はしっかり締まっている、同じ女として羨ましい体形をしていた。
髪型は背中までの髪を毎日どんだけ時間をかけているのか丁寧に大きくカールさせ、化粧もばっちり施して、日に焼けた肌をキレェェェイに彩っている。衛生部じゃなかったら、きっと爪までギラギラを塗りたくっているだろう。ちなみに髪と瞳の色はラセットに似ているが、奴より黄みがかった明るい茶色だ。
ヘンナはトパーズと同じ新入生で必須科目のクラスメイトで、そのせいもあって衛生部のクラスも被ることが多かったが、やる気満々のヘンナからすると彼女はやる気のひとかけも見せたことがない怠け女だった。
まさか衛生部の校舎からヘンナとトパーズが自分たちを見ている、なんてことに気づかない戦闘部剣道場のビスタとラセットは、互いに木刀を構えて叫ぶ。
「じゃあ行くぜっ!」
「おーよっ!」
彼らが相手に向かって同時に走る。そしてすぐ側に近づいたかと思うと、カンカンと木刀を合わせていった。
周囲の生徒たちが二人に顔を向け、マゼンタ、コチニール、葡萄も一応彼らを眺めている。
「おりゃっ!とりゃっ!おいやっ!」ビスタがラセットに木刀を振るえば、
「ちょっ、マジっ、手抜きしてっ……!」ラセットが自分の木刀で何とか受け止める。
その様子を、マゼンタたち三人はポカンとしながら見ていた。
「なんだか」と、マゼンタ。
「ゆっくり、だね」と、コチニール。
葡萄でさえ「私の目でも追えます……」
剣道場の中に座っている担当教師の黒茶は、生徒たちの注目を浴びるビスタとラセットを眺めて溜息を吐いた。
(奴らはお遊戯をしているのか)
やがて満足したビスタとラセットは、自分たちを囲んでいる生徒たちの輪の中へと戻ってきた。
「ああ、いい汗かいたぜ」ビスタが額の汗を手で拭う。
それに対しラセットは「もっと手加減してくれって言ったじゃんよぉ」
「悪い悪い」とビスタ。
二人の会話を耳に挟んだコチニールは啞然とした。(もっと手加減⁈)
葡萄も思う。(ビスタは剣術より体術のほうが得意なようですね……)
そこへ黒茶の怒号が飛ぶ。
「くぉらっおまえらっ!人の試合を見てないでさっさと自分の試合をせんかっ!」
教師の唾を受けて、生徒たちは途端に相手と向かい始めた。
コチニールも「じゃあ、葡萄と僕でやろうか。マゼンタは後でね、強いから」
「ああ」
「はぁ。私であなたの相手が務まるでしょうか」葡萄が自信なさげに言う。
「ちゃんと手加減するよ」
「お願いします……」
そうして二人はマゼンタをその場に残し、開けた場所へと移動した。
その頃、剣道場に向かってこそこそとやって来る者たちがいた。彼らは背を低くして、植込みの陰に隠れながら前へと進んでいる。
彼らの真ん中を歩いていた柑子が、先頭を歩く緋色に言う。
「ねえ、今私たちは体術クラス中なのに抜け出したらマズイよ……!」
「大丈夫だって、オレは自主勉中だから」
彼の返答に柑子が心の中で突っ込む。(緋色はねっ……!)と。
すると後ろをついてくるマルーンが聞いた。
「今ここにはマゼンタさんたちが?」
「そうそうっ、コチニールもいるらしいから覗いて行こうぜっ」
「覗くって……」
柑子は呆れたが、振り返った緋色が真剣な表情で言う。
「王子、マジあいつらの剣術スゲーから、いい刺激になると思うよ」
「え?」
緋色たちがマゼンタたちの元へ向かっている頃、剣道場の土の上ではコチニールと葡萄が木刀を持って向かい合いっていた。
マゼンタ、ビスタ、ラセットに加え、何か異なる気配を感じた他の生徒たちも、自らの試合を止めて彼らを見守っている。
同様に教師の黒茶も、屋内から二人をじっと見下ろしていた。
「じゃあ、行くね」
コチニールが木刀を構えると、
「は、はいっ」
葡萄も慌てて木刀を構える。
それを確認したコチニールは、葡萄へゆっくりと走っていった。そして相手の元へ辿り着くと、彼に木刀を振るっていく。
コチニールのスピードはマゼンタからするとかなり穏やかなものだったが、受け止める葡萄にとっては必死だ。
目の前で木刀が次々と自分に襲いかかり、一向に止む素振りもなく、しかも自分は受け止めるだけでやり返すなんてことは到底出来ない。
きっと相手が葡萄だからコチニールも相当手加減してやっているのだろう。
マゼンタがそう思う側で、ビスタとラセットは口をあんぐりとさせていた。
戦闘部の剣道場を隣の衛生部校舎から覗いていたヘンナは、コチニールたちを見下ろして言う。
「おー、今度はコチニールと葡萄じゃん。やっぱさすが守人、やるわね」
「いいっ!もう最高よっ!」
「えっ、何が?」
ヘンナが同じく自分の隣で彼らを覗いていたトパーズを振り向くと、なぜか彼女は非常に感動していた。
トパーズは満面の笑みで叫ぶ。
「コチニールに決まってるでしょっ!」
ヘンナは耳を疑った。
「コチニールっ?えっ、あんたコチニールがタイプなのっ?」
「もちろんよっ!」
普段から怠けまくって活力ある態度とは無縁だと思っていたトパーズが、瞳をキラキラと輝かせてコチニールを見下ろしている。
別にコチニールの見た目がどうとか、中身がどうとか、出自がどうとか、身分がどうとか、決していちゃもんをつけたいわけじゃないが、ヘンナの理想とする相手とトパーズが理想とする相手があまりにもかけ離れていたせいで、ヘンナは彼女に唖然とするしかなかった。
剣道場では尚もコチニールが葡萄に木刀を振るい続け、眼鏡の彼はそれを何とか受け止めている。
彼らを囲む生徒たちはその光景に呆然とし、マゼンタは二人を見守って、ビスタとラセットは口を開けっ放しにしたまま閉じるのを忘れていた。
「マジ……?」と、ラセット。
ビスタも「つ、強い……!」
担当教師の黒茶も、剣道場の屋内から彼らを眺めて思う。
(赤星紅国守人、さすがに少しは使えるか)
また、コチニールと葡萄の試合を見ているのは彼らだけではなかった。
剣道場を囲む植込みに隠れながら、授業を抜け出した緋色、柑子、マルーンの三人も勿論試合を覗き見ていた。その様子は、緋色はワクワクし、柑子は呆然とし、マルーンは目をパチクリとさせている。
緋色が言った。
「おー、葡萄もちょっとは出来んだな。てかコチニール手ぇ抜きすぎ」
「え……」柑子が緋色に顔を向ける。
「え?」呆然とする柑子を緋色も見返した。
「コチニールさん、手を抜いてるの……?」
「うん、思いっきし」
緋色の返答に、柑子は愕然とした。
しばし続いたコチニールと葡萄の試合だったが、コチニールが葡萄の目前で木刀を寸止めした所で、流れは強制的に断ち切られた。
「勝負あり」
そう言ってコチニールは木刀を下に下ろす。
葡萄は全身の力を抜いて言った。
「やはり私では相手不足ですね」
「葡萄は違う方面で優秀だからいいんだよ」
彼らを眺めていたビスタとラセットは、口の中をカラカラにさせている。
「弱っちい奴だと、思ってたのに……」と、ビスタ。
「コチニールぐらいになら、勝てるかもとか思ってたのに……」と、ラセット。
二人の思惑がものの見事に外れた瞬間だった。
その間にコチニールと葡萄がマゼンタの元へ戻ってくる。
彼らを出迎えたマゼンタは、眼鏡の彼を見上げて言った。
「葡萄が木刀を振るう所、初めて見た」
「お恥ずかしい……」葡萄はほんのり頬を赤らめる。
「一応振るうことは出来るんだな、受け止めることも」
「一応ですが……」
彼らの様子を衛生部の校舎から覗いていたトパーズは、コチニールに対し大きな拍手を送っている。
その隣に立つヘンナは呆れながら言った。「あたしにはあんたの趣味がわからん」
剣道場の植込みに隠れたマルーンも、微笑みながら褒め称える。
「さすが守人一族ですね、素晴らしいです」
だが同じようにしゃがみ込む緋色は「まあなぁ」と渋い顔だ。
「ん、何か?」
「あー、葡萄はともかく、コチニールの本気はあんなもんじゃねえから」
「へえ、そんなにスゴイんですね」
「そりゃなー」
クリムスンの長男、クリムスン家跡継ぎだし。
そう思った所で、緋色はふと隣の柑子に目を向ける。
柑子王子は奥のコチニールを見たまま呆然としていた。
「ちょ、王子大丈夫か?」
緋色に言われて柑子は我に返る。
「へ、あ、うん、たぶん……」
「コチニールごときでそんなビビっちまって、マゼンタの見たらどーすんだよ」
「え……?」
マ、マゼンタさん……?
柑子がごくりと唾を飲み込むと、視界の奥に立つコチニールが赤紫色の少女を誘っていた。
「じゃあマゼンタ、やろうか」
「ああ」
「なるべくお手柔らかにお願いします」
「わかった」
マゼンタとコチニールが空いている場所へ進もうとする。その時、
「あの」
背後からやはり透き通る声が響いた。
マゼンタとコチニールが振り返ると、木刀を手にした紫星の王子がそこに立っていた。
「ちょっとよろしいですか?」
「マロウ殿下……⁈」
コチニールが驚き、マゼンタは彼をじっと見つめ、側にいた葡萄は彼を警戒した。
紫星の王子は言う。
「実は私も稽古をしていただきたいのですが、あいにくどなたも相手になってくださらなくて困っているのです」
コチニールは思った。
(そ、それはそうでしょうね、王子様のお相手ですから……何かあったら大変でしょうし……)
「なのでマゼンタさんにお相手していただけないかと思いまして」
「えっ⁈」と、コチニール。
葡萄もはっと目を見開いた。
しかしマゼンタは相手をじっと見たまま視線をそらさない。
紫星の王子は続ける。
「マゼンタさんの腕はとても確かだと風の噂で伺っております。なのでいかがでしょう、私と一つ腕試しというのは」
コチニールが啞然としたまま妹に顔を向け、葡萄も彼女を凝視した。
「わかった、相手になる」
「マゼンタ⁈」
「あなた本気で……⁈」
そう葡萄が言いかけたが、マゼンタはさっさと空いている場所へ歩き始めてしまった。
「ただの稽古だ」背を向けた彼女が言う。
「ちょ、マゼンタっ、ほんとのほんとに手を抜いてあげてよっ!絶対だよっ!」
「わかってる」
紫星の王子は微笑みながら彼女の後に続いた。
「マゼンタ、お願いだから……!」
マロウ王子に怪我とか絶対にさせないでっ……!
兄が祈る隣で、葡萄は不安げな表情を浮かべていた。
衛生部校舎三階の窓から戦闘部剣道場を見下ろしていたヘンナも、彼らの動向に気づく。
「あ、マゼンタと……マロウ王子っ⁈」
ヘンナが目を見張ると、隣から舌打ちが聞こえてきた。
「え、なんで?ちなみにどっちに対する舌打ち?」
ヘンナは隣に立つトパーズに目を向ける。
トパーズは目を吊り上げて言った。
「あの女に決まってんでしょっ!いっつもいっつもコチニールの周りをウロチョロとっ、目障りなのよっ……!」
ヘンナはやっぱり啞然とする。
「だって兄妹だもん」
「だからってねえ、あんなにいつも一緒にいることないでしょっ⁈」
「まあ……」
ブラコンシスコン兄妹だからなぁ。
ヘンナが心の中でそう述べている間、剣道場の植込みに隠れながら試合を覗き込んでいる少年たちも驚いていた。
「えっ、マゼンタとマロウ王子っ⁈マジかよっ!」と緋色。
柑子も「マ、マロウ殿下が……⁈」
「マロウ殿下は剣術もお強いのでしょうか」マルーンもしきりに瞬きをする。
「どうなんだろっ!」
けど体術の時のあの動き、走るのも速いし、蛇もめっちゃ捕まえてたし、もしかして剣術もいけんのかっ?
緋色がワクワクと心躍らせる隣で、柑子王子は呆然と呟いた。
「マロウ殿下……」と。
剣道場の手前に敷かれた土の上では、マゼンタと紫星の王子が向かい合っている。
その様子を、ビスタ、ラセット、他の生徒たちが円になるように囲んでいった。
「マロウ王子じゃん……!」ビスタが頬を引きつらせる。
ラセットも「まさかマゼンタと……⁈」
担当教師の黒茶も、剣道場の屋内から二人を見下ろしていた。
(赤星紅国守人一族の女と、紫星第一王子。これはまた珍妙な組み合わせじゃないか)
ざわつく生徒たちを傍目に、紫星の王子は赤紫色の少女に微笑む。
「どうぞよろしくお願いいたします」
「ああ」
二人は早速木刀を構えた。
生徒たちに交じって見守るコチニールは両手を合わせて拝み、葡萄は不安げな顔で二人を見つめている。
(マゼンタ、頼む……!)
コチニールが心の中で念じると、二人の木刀が僅かに動いた。
次の瞬間、彼女たちは物凄い勢いで斬り合いを始めた。
その動きはあまりにも速すぎて、一般人の目では全く追いつくことが出来ない。
植込みに隠れていた緋色が言葉を失くし、二人を囲む生徒たちがざわつき、ラセットが「なっ……⁈」とだけ口にすれば、「なんだこれは……⁈」とビスタも瞬きを忘れる。
生徒たちに紛れる葡萄は「マゼンタ……!」と彼女の名を呼び、「頼むから二人共無事でいてっ……!」とコチニールは必死に拝んだ。
衛生部校舎の窓からは、ヘンナとトパーズがポカンとしながら戦闘部の剣道場を見下ろしている。
「何あれ?」
「さ、さあ……」
彼女たちの目は、残念ながらマゼンタと紫星の王子の動きを追うことが出来なかった。
剣道場の植込みに隠れた少年たちは啞然とするしかない。
「す、すごい……」と、マルーン。
「なんて動きと速さなんだ……!」
マゼンタさんも、マロウ殿下も……!
柑子がそう思う隣で、緋色も二人を見ながら息を吞んでいる。
(マゼンタが力を抜いているとはいえ、マロウ王子がそれについていけるなんて……!)
剣道場手前の土の上では、尚もその二人が斬り合いを続けている。
「手加減していただいて光栄です」紫星の王子が目の前の彼女に言った。
「そっちもな」
二人は木刀と木刀を合わせてはまた弾く。
「さすが赤星紅国守人一族のお方ですね。刀に迷いがない」紫星の王子は彼女に微笑んだ。
「ずっと思っていたんだが、その笑顔」
「はい?」
「――気色悪」
「は?」
瞬間、マゼンタが相手の腹を木刀で斬り、そのまま彼と行き交うように止まった。




