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イセカイロセカイ  作者: Elisu Arina
橙の章
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第101話 風邪


 マゼンタがすぐさまコチニールの傍に近づいた。

コチニールは薄っすら目を開けており意識はあるようだ。

「コチニールどうしたっ⁈」緋色(ひいろ)が立ち上がって叫ぶ。

ぼんやりとしていた柑子(こうじ)や憤っていたビスタやラセットもはっとし、マルーンも息を吞んだ。その間にもマゼンタがコチニールの額に手を当てている。

衛生部所属のヘンナはコチニールに近づくと、「頭は打ってない……⁈」と冷静に尋ねる。

「ああ、倒れる時先に手をついていたから」と、マゼンタ。

「よく見てたわねっ」

「だが熱がある」

「それは保健室に運んだほうがいいかも……!」

「なら私が……!」葡萄(えび)がそう言いかけた時、既にマゼンタは兄をお姫様風に抱えて立ち上がっていた。

「あ」緋色、ビスタ、ラセットの声が揃う。

「私が連れていく」

マゼンタはコチニールを抱えたまま足早に階段を降りた。

「なら私も……!」すかさず葡萄がマゼンタを追う。

「オレも行くっ!」

緋色はマゼンタと葡萄の後を追いかけようとした。しかしヘンナがそれを押し留める。

「ちょっと!大人数で行ったらかえって迷惑よ!緋色はここにいて!」

そう言いつつ、ヘンナはマゼンタたちの後を追いかけた。

「ヘンナは行くのかよっ⁈」

「衛生部員だもん!」

緋色にそう返したヘンナはさっさと講堂から出て行った。

「なんだよそれっ!」

地団太を踏む緋色を横目に、マルーンが呟く。

「コチニールさん、大丈夫でしょうか」

「うん……」

柑子は講堂の扉を見つめたまま、それだけ返事をする。

と、ラセットがとあることに気づいて呟いた。

「てかさ、マゼンタとコチニールのポジション、普通逆じゃね?」

「お、おう」

それはビスタも思ったことだった。

マゼンタがコチニールを抱えて立ち上がった時、彼らは同じことを思ったのである。

 講堂内では生徒たちがざわついていた。

クラスメイトが突然倒れたのだ、それは気になって仕方ないだろう。

当然ながら、後方の席に座っていたマロウ王子も、マゼンタたちが去った講堂の扉を見つめていた。この時ばかりはいつもの微笑みを絶やして……



 中央棟の保健室はそれほど広いわけではない。

白い扉を開けると目の前にカーテンが引かれたベッドが二つ、左側には保険医の机が置かれ、机の背後には光が差し込む窓が設置されている。

無論今日は大雨のため、太陽の光は差し込んでこないが、日が当たればこの部屋も相当な暑さとなるだろう。

 コチニールが寝かされたのは、室内に入って左側のベッドだった。

ベッドは至ってシンプルな作りで、枕が一つと毛布が一枚用意されているだけである。

その周囲には天井に備え付けられたレールからカーテンが伸び、中に誰がいるのか外からはわからないようになっていた。

コチニールはそのベッドに仰向けで眠り、ベッドのすぐ横に置かれた椅子にはマゼンタ、葡萄、ヘンナの三人がちょこんと座って彼の容態を見守っている。

「私がもっと気をつけておくべきでした……そうしたらこんなことには……!」葡萄が言った。

「いや、私も気づかなかった、私の責任だ」マゼンタが反論する。

「そんなことは、これは明らかに私の監督不行き届きです……!コチニールが体調を崩していたことに気づかないだなんて……!」

そこへヘンナが小声で割り込んだ。

「ちょっと、コチニールが起きちゃうでしょっ」

「すみません……」葡萄がうなだれる。

ヘンナはマゼンタと葡萄の様子を見て思った。コチニールってすごい愛されてるわね、と。

こんなに心配してもらえるだなんて、守人(もりひと)の、次期頭首だっけ?だからなのかしら……

 ヘンナがそんなことを考えていると、ベッドを囲んでいたカーテンが外側から少し開けられた。

「どうですか、まだ眠ってます?」

救命措置クラスを担当している新人教師の檜皮(ひわだ)が顔を覗かせる。

「倒れてから一度も起きてない」

マゼンタは檜皮を見上げて答えた。

「あの先生、コチニールはなぜ……」不安げな葡萄が尋ねる。

「恐らく風邪だと思いますよ。熱もありますし」

「風邪、ですか」

「ええ、ここ最近は雨も続いていますし体調に響いたのかもしれません。それに新しい環境にやっと慣れてきて、気が緩んだ可能性もあります」

「それは、コチニールなりにストレスを感じていたということでしょうか」

「そうかもしれませんね。ですがそんなに気落ちしないでください。きっとすぐによくなりますから」

檜皮は葡萄にそう言うと、カーテンを少しだけ開けたままにして、室内に設置されたデスクに戻っていく。

葡萄は今一度ベッドで眠るコチニールに視線を戻した。

(なんということだ、コチニールのその状態に気づかないとは、お目付役失格じゃないかっ……!コチニールはクリムスン家次期頭首……!絶対に何かあってはいけない大事な体だというのに……!)

眼鏡の彼が自身を責める隣で、マゼンタも兄をじっと見つめている。

二人の隣に座っていたヘンナはというと、椅子から立ち上がり、デスクに戻った檜皮に近づいた。

檜皮はデスクの椅子に座り、机上に浮かぶ透けるような画面を何やら指で操作している。

「檜皮先生って保険医もやってたんですね、衛生部とかの授業だけじゃなくて」

ヘンナが檜皮に確認した。

「保険医の先生が急遽お休みを取られてしまって、それで代わりに僕が」

「ふうん」

しかし檜皮は思っていた。

(本当ならこれ、僕の仕事じゃないんだけど……)と。

 檜皮が所属しているのは衛生部だ。つまり衛生部に所属している生徒たちのために普段は授業を行っている。

勿論、全生徒の必修科目である救命措置クラスも受け持ってはいるが、はっきり言って保険医の仕事は彼の範疇ではない。

なのにどうしてか人手が足らないとかで、たまたま授業が空いていた自分にお鉢が回ってきたのだ。

新人である、嫌とは言えない、その境遇や性格も災いして、檜皮は頼まれごとをしっかりこなす羽目になってしまった。

「そういえばそろそろ次の授業が始まるから、君たちは戻ったほうがいいんじゃない?」

檜皮に言われて、マゼンタと葡萄は互いを見やる。

「私が残る」マゼンタが頑として言った。

「いえ、私が残ります、それが私の使命ですから」葡萄も譲らない。

「次の授業は丁字茶(ちょうじちゃ)だろう?だったら葡萄は出席したおいたほうがいい。ただでさえ体術クラスから次のクラスに進めるかどうか怪しいのだから」

「しかし……!」

「コチニールなら私がちゃんと見ておくから心配ない」

「でもっ……!」

言い合う二人にヘンナが近づく。

「そうそう、それに二人もついてたらコチニールだって休めないでしょう?だから行こう葡萄」

真っ当なヘンナの意見に、葡萄はマゼンタを切実な眼差しで見つめた。

マゼンタは彼の目を真剣に見返す。

やがて折れたのは、葡萄だった。

「わかりました、私は授業に出ます。でももしコチニールの身に何かあったらすぐに連絡してください」

「わかった」

「絶対ですよ……!」

「ああ」


 葡萄とヘンナが保健室を後にすると室内はしんと静まり返り、屋外の雨音だけが鳴り響いた。

新人教師の檜皮は窓を背に置かれたデスクの椅子に座って、机上に浮かぶ画面を眺め、やるべき仕事を続けようとする。

けれども彼はどうしても、手前のベッドを囲うカーテンの隙間から見える少女に、嫌でも視線が行った。

鮮やかな赤紫色の髪と瞳を持つ彼女は、ベッド横の椅子に座り、眠っている兄をひたすら見つめ続けている。

檜皮は思った。

こうしてただ座っているだけなら、可愛らしい女子生徒なのに……あんな……

(あんな怪力だなんてえーっ‼)

彼の脳内に彼女が救命措置クラスで人形の心臓に力を加え、ひび割れ、内部の部品が飛び出す何とも無残な映像が蘇った。

(しかもあの後僕が散々叱られる羽目になってえぇぇっ!)と、瞳を潤ませる。

もし少しでも間違ったらこの場で熱い液体を目の縁からこぼしてしまいそうだった。

(まあ、人形は彼女のお家で弁償してくれることになったから、一件落着なんだけど……)

檜皮は鼻をすすりつつ、深い溜息をついた。

まさか新任早々、こんなことに巻き込まれるとは……先生って、ホント大変な仕事だな……

 彼が自分が就いた職業がこれでよかったのだろうかと、後悔しそうになった、その時だ。

突然保健室の扉が勢いよく開いて、すらりとした人物が部屋の中に入ってきた。

「チェスナット先生?」

入室したのは生徒からも教師からもイケメン認定されている、戦闘部の教師、チェスナットだった。

檜皮は驚いてふらつきながら立ち上がる。ふらついたのは、たった今泣きべそをかいていたせいでもあったが。

扉が開いて誰かが入室した音と檜皮の声に、カーテン奥のベッド横に座っていたマゼンタも、自分の位置から相手の姿が見えないとはいえ扉のほうに顔を向ける。

チェスナットは檜皮に尋ねた。

「コチニールという生徒が倒れたと聞いたのですが……!」

「はい、そこに……」

檜皮は閉じられたカーテンに視線を送る。

それを見るが早いか、チェスナットはコチニールが眠っているベッドのカーテンに近づいた。

「あ、ですが今……!」

檜皮がそう言いかけたが、既にチェスナットはカーテンに手を伸ばし、思い切り横へ引っ張っていた。当然、カーテンの奥ではマゼンタが彼を見上げている。

「君は……!」

驚きのあまりチェスナットの瞳が大きく見開かれる。

(誰だ?先生?)

マゼンタは僅かに首を傾げた。

この教師の授業は受けたことはないが、学園のどこかで何度か見かけたような気がする。

「君もいたのか」急に冷静になったチェスナットがマゼンタに言った。

「ああ」

チェスナットはベッドで眠っているコチニールに視線を移した。

「どうして彼は……」

「風邪、というものらしい」マゼンタは簡潔に答えた。

「そうか……」

 チェスナットの背後で、檜皮は感動していた。

(一生徒が倒れただけでこんなに心配されてお見舞いに来てくださるなんて、教師の鏡です……!僕も見習って……!)

やはり教育者の道を選んでよかった、と檜皮が思っている頃、

「だから心配ない」

マゼンタはチェスナットを見上げて念押しする。

「ですね……」

チェスナットはそう答えながらも、どうしてかコチニールから視線を外さない。

さすがにマゼンタは彼の行動を(いぶか)しんで、チェスナットの一挙手一投足を見つめ続けた。やがて……

「では、僕は失礼します。彼には休息が必要でしょうから」

チェスナットはそう言い残して背中を向けた。

その瞬間、ひらり一枚の紙切れが、チェスナットから舞う。

しかし彼はそれに気づくことなく、保健室の扉へ向かっていった。

紙切れは気流に乗ると、マゼンタの足元に音もなく落下した。

「檜皮先生、後のことはどうぞよろしくお願いいたします」

カーテンの向こうでチェスナットが新人教師に伝えている。

「はいっ、もちろんですっ」

チェスナットに近づいた檜皮が答えた。

そしてイケメン教師が退出すると、檜皮は喜びを嚙みしめる。

(さすが生徒からも教師からも人気があるわけだ……!やっぱり僕も見習って……!)

 その間に、マゼンタは自分の足元に落ちた紙切れを拾った。

紙切れは指先から第二関節くらいまでの長さのほぼ正方形で、表面に人の顔が映し出されている。

その人物が誰なのかマゼンタには皆目見当がつかないが、とりあえず裏返してみた。

裏面には右端に橙星(だいだいぼし)語で小さな文字が書いてある。

あまりに小さくて読みづらいが、それでも彼女の瞳はその文字を捉えた。

「……カメリア?」

 ふと、マゼンタがベッドのほうに顔を戻すと、コチニールがぼうっとした様子で瞼を開けている。

「コチニール、気づいたか?」マゼンタは立ち上がって兄を覗き込んだ。

「あれ……僕……ここは……」

「講堂で倒れた、ここは保健室だ。今おまえには熱があって、ここで休んでる」

「そっか……僕、倒れたのか……」

コチニールはぼんやりしたまま答えた。

「目が覚めたかな?」

外側からカーテンを少しだけ開けて、檜皮が顔を見せた。

「先生……」

「たぶん風邪だと思うけど、今はまだ横になっててね。もう少し体調が落ち着くまで」

「はい……」

それだけ言うと檜皮は立ち去り、コチニールはふうと息を吐く。

「風邪で熱を出すなんて、何年振りだろう……」

「長雨のせいや、新しい環境に慣れて気が緩んだかららしい」

マゼンタは今一度椅子に腰を下ろした。

「そっか……」

コチニールは天井をぼうっと眺める。室内には相変わらず雨音だけが鳴り響いていた。

「マゼンタ……」

天井を眺めたまま、コチニールは妹を呼んだ。

「なんだ?」

「さっき何か、言わなかった……?」

「さっき?」

「僕が、目を覚ます前に、何か……」

何かが、聞こえたような……

「カメリア」

マゼンタはコチニールの問いに素直に答えた。

「……え」

マゼンタは手に持っていた紙切れに視線を落とす。

そして再度書かれた文字を口にした。

「カメリア」

瞬間、コチニールがガバッと上体を起こしたかと思うと「今なんてっ⁈」と大声で叫んだ。




 中央棟の裏の道を向かってずっと左に進んでいくと、そこは戦闘部の敷地となる。

戦闘部と言ってもその中で学科は主に二つに分かれているわけだが、その学科に進む前、戦闘部に所属する者なら誰もが受講しなければならないクラスが幾つか存在し、敷地の手前にある施設は、そのためのクラスに充てられていた。

 弓道場は敷地の中でも割と手前にある施設だ。作りは赤星(あかほし)紅国(くれないこく)クリムスン家にあるものと近しい。

屋根がついた板張りの射場(しゃじょう)が手前にあり、その次に空が開かれた矢道(やみち)があり、一番奥の土が盛られた所に丸い形の的がずらり並んでいる。

 戦闘部を選んだ生徒たちは誰もが、この弓道場に足を運んでクラスを受講した。

新入生も、弓道クラスを何年も合格出来ない上級生も一緒くたになって、弓を射る。

彼らの中には当然、毛色の珍しい生徒も交じっていた。

赤紫色の少女が射場で弓を引き絞れば、隣に立つ紫星(むらさきぼし)の王子も同様の所作をし、二人は同時に矢を射った。

二人が放った矢はどうしてかいつも的の中心に当たり、周囲の生徒たちは口をあんぐりとさせるしかない。

「なんなん、こいつら……」

「てか全部的中って、どういう神経してんだよ……」

「つーか、戦闘部唯一の女子なのに、お強い……」

 実際、マゼンタ以外は全員男子生徒だった。

入学当初ヘンナが言っていたように、戦闘部というのは本当に男子しか所属しない部らしい。

しかし守人一族クリムスン家に養女としてもらわれたマゼンタにとって、そんなことは大して気に留める問題ではなかった。

しかも今はそれ以上の大問題が勃発している。

矢を射終えて弓を置いたマゼンタは辺りを見回すと、早々に弓道場を後にした。

勿論、彼女の後姿をマロウ王子がじっと見送っているとは知らずに。


 弓道場の外に出たマゼンタは周囲を見渡す。

戦闘部専用の体育館に剣道場、射撃場、その他諸々様々な施設が視界に入ってくるが、捜しているものはきっとこの辺りにはいない。

少女は恐らくこの方角だろうと予想をつけると、戦闘部の敷地のさらに奥を目指して走り出した。

 戦闘部といえど敷地内はかなり綺麗に整備されている。

施設の境目にはきちんと平らな歩道が敷かれ、両脇には茶色い葉をつけた木々も植樹されているし、所々にはどこに何があるかを示した看板も設置されていた。

おかげでこの広い学園内でマゼンタは迷子になったことは今の所ないし、クラスごとに受講場所が変わっても目的地がどこにあるのかわからない、なんてことはない。

橙星に来るにあたって葡萄から渡された腕時計の中にも学園内の地図はデータとして入っているし、いざとなればこれを頼りにしてもいいだろう。

 彼女が敷地をひたすら駆け抜けると、周りの景色がどことなく変わってきた。

今まではそこかしこに何かしらの建造物が設けられていたのだが、だんだんそれが姿を消し、ただどこまでも広がる茶色い大地の光景となったのだ。

それでも大地の所々に木々は植えられ、まるで何かと何かを大きく隔てるように形作っているのは確かである。

これは何のためにあるのか、そんなことをマゼンタが考えていた時だ。

ふと前方に並ぶ木々の一つに身を隠すように、お目当てのものがさらに奥を覗き込んでいる。

(見つけた……!)

赤紫色の少女は走るスピードを緩めると、目当てのものの背後に近づいた。

「コチニール」

自分の背後から降ってきた声に、兄は驚きのあまりぎゃっとなる。

「マゼンタ……!」振り返ったコチニールは妹の姿を確認して言った。

「今は弓道の時間だぞ」

マゼンタとマロウ王子に続き、体術、馬術、救命措置クラスの実技と筆記テストを何とか合格したコチニールは、妹たちと共に弓道クラスへ進んだのである。

苦手としていた馬術の実技も、マゼンタに付き合ってもらって練習に練習を重ね、合格したばかりだった。

なのにやっと進めた弓道のクラスを初回からサボるとは、いい度胸をしている。

「うん、わかってるよ……」

妹に指摘されながらも、コチニールは奥の景色を見ずにはいられない。

マゼンタは兄の隣に立ち、彼と同じ方向に目をやった。

彼らの視線の先には、ただどこまでも土が敷かれただけの色光(しきこう)フィールドと呼ばれる場所で生徒たちに授業をしている、教師チェスナットの姿があった。

「チェスナット先生って、優しくて気が利いて、すごく人気があるんだって。生徒からも先生たちからも……」

「へえ」

そう返しつつマゼンタはコチニールに顔を戻す。

「写真、まだ返していないのか」

彼女に言われ、コチニールは制服の腰に縫われたポケットから、一枚の小さな紙切れを取り出した。

 先日、保健室でチェスナットがコチニールの見舞いに来た際落としていったもの、それは写真だった。

写真には一人の女性の顔が写し出されている。年は三十代くらいだろうか。少しくすみのある赤色の髪と瞳はまさに赤人(あかひと)らしく、肌も橙人(だいだいびと)というより赤星紅国の人間と言われたほうがしっくりくるような白さだ。写真の彼女は穏やかに微笑みながら、見る者に視線を向けている。

コチニールはその写真を裏返した。

その右下に橙星語で文字が書かれてある。

「カメリア」

コチニールが再度その文字を口にした。

そして色光フィールドに立つチェスナットに顔を戻すと、もう何百回目かわからない質問を投げかける。

「どうしてチェスナット先生が母上の写真を持っていたんだ」と。




















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