第七話 決行・その二
「ヒューッ、派手だねえ」
次々と飛んでいく超小型ミサイルの軌跡を追いながら、キューベルはそう呟いた。
つい先程、<ワイバーン>からの指令を受けて彼は戦車小隊<ウルフロード>の兵士たちに新型兵器の使用を命じた。それから間を置かずしてそれは他の部隊のものと共にたて続けに発射された。打ち出されたミサイルは敵が誇る巨大砲に相次いで命中し、それをことごとく粉砕していった。
「しかしとんでもない威力だな。まさかこんな隠し玉を海軍が持っていたなんてね。俺たち陸軍にも少し分けて欲しいもんだよ」
そうキューベルは、目の前の光景を見ながらひとりごちた。
「感心している場合じゃないですよ、隊長。我々の出番はこれからなんですから」
彼の側に立っていたローラが言った。
「ああそうだ。よし、急いで発射装置を撤去しろ。これから上陸の準備に移る」
キューベルの指示を受けて兵士たちは素早く動き出した。その様子を見つめながら、彼はこうポツリと言った。
「それにしても本当に凄いな、あいつ」
(鮮やかだな・・・)
空中に描かれた無数の線を見つめながら、ロックは思った。
先刻、彼は作戦の開始を揚陸艦三隻の戦車部隊に命じた。程なくして攻撃が始められ、弾は次々と要塞に向かって飛んでいった。そして、相手の保持していた能力を急速に喪失させていった。
(作戦開始前までは、本当に上手くいくのか正直半信半疑だったが、まさかこれ程までとは・・・。このような兵器の存在を知らなかったなんて、俺もまだまだ経験が足りないな)
そこまで考えるとロックは、小さく首を振った。
「艦長、要塞正面にある砲台、全て無力化されたことを確認しました」
「艦長、三つの戦車部隊から連絡。上陸準備、全て完了したとのことです」
艦外からの報告が続々と艦橋に届けられた。
「よし」
ロックはそう言うと、一度深呼吸をした。そして続けてこう指示をした。
「揚陸艦三隻を前に出せ!作戦は次の段階に入る!」
(さあ、いよいよだな)
目の前に迫って来る陸地を見ながら、キューベルは気持ちを高揚させた。
旗艦の新たな指示を受けて、三隻の揚陸艦は要塞へ向かって動き出した。その速さは徐々に上がっていき、陸地までの距離を一気に縮めた。
やがて陸地のすぐ前までくると、艦は速度を緩めた。そして、一斉に主砲からの砲撃を開始した。
「上陸、開始!」
キューベルはそう指示を出した。彼の指示を受けた五台の戦車は、他の部隊のものと共に敵の立て籠る島の海岸に次々と上陸していった。そしてすぐに要塞への攻撃を始めた。
「よっと」
キューベルは他の幹部たちと共に艦から飛び降りた。そして歩兵部隊に守られながら島へと上がっていった。
要塞では過激派の戦闘員たちが慌ただしく動き回っていた。その内の一人が、こちらへ銃口を向けるのが見えた。
「おっとお!」
しかし相手が撃つより早く、キューベルの拳銃が先に火を噴いた。銃弾を受けた戦闘員は、腕を抱えてうずくまった。
「な?銃なんて当たればいいもんだろ?」
誰に言うでもなくキューベルはそう口にした。
「何呑気なこと言ってるんですか、隊長」
「そうですよ、我々は今戦場にいるんですから」
「油断したら命がいくつあっても足りませんよ」
ローラ、アコーそしてモニカが銃を構えながら口々にそう言った。
「分かってるよ。全く、真面目なヤツらめ」
そういうとキューベルは、相手に向かって銃撃を行っている兵士たちの後についた。そして周囲の様子を注意深く見回した。
「艦長、<イフリート>他二隻、無事予定していた場所まで後退しました」
オリヴァが自分たちの現在の状況をセーラに伝えた。
「了解。艦の後方の様子は?」
「敵の船団が旗艦を目指して攻撃を開始したようです。ですが二隻の護衛艦に阻まれて到達できていない模様です。こちらへ向かってくる余裕はないようなので、一先ず安心してよろしいかと思います」
「了解。見張り台には引き続き後方に注意するよう伝えるように」
セーラはそう指示を出した。そして一つ息を吐いた。
「はあああぁぁぁ~~~~~~っ」
急に盛大な溜め息が彼女の隣から聞こえてきた。見るとヒデカツが、気の抜けた顔をして座席に沈みこんでいた。
「どうしたの?本当に大丈夫?」
「だってこの作戦が失敗したら、セーラが海軍を辞職しなければならないんだと思ってたからさあ・・・」
「えっ?あなた、今までその事をずっと考えていたの?」
セーラは少し驚いた様子で言った。
「全く、大体私は一度海軍を辞めているのよ。ただ元の悠々自適な生活に戻るだけ。だからそこまで心配しなくてもよかったのに」
「そんなこと言ったって、海軍に復帰してからのセーラは、ずっと生き生きとしていたから・・・」
「それに私は、この作戦が失敗するなんて思っていなかったわ。何と言っても、これはあなたが考えた作戦なのだからね。かなりの高確率で成功すると考えていたわよ」
そこまで言うとセーラは、少し穏やかな表情になった。
「でもまあ、自分のことではなくまず他人の心配をするところは、ヒデカツらしいわね。その辺りは感謝しないといけないのかもしれないわ。だから・・・ありがとう」
そうセーラはヒデカツに声をかけた。
「本当に仲が良いわね、あのお二人」
二人の様子を眺めながら、エリーがオリヴァにそうささやいた。
「ええ、本当にそうですね」
そうオリヴァは苦笑しながら答えた。
「艦長、<ウルフロード>から通信」
艦外からの通信に気づいたオリヴァが言った。
「うん、出よう」
セーラは答えると、通信を引き継いだ。
「こちらオルメス。そちらの状況は?」
「こちらアース。多少の抵抗はあるが、比較的掃討は順調に進んでいる。そちらに変わったことはないか?」
「特には。ヒデカツがへたり込んだくらい?」
「じゃあ大丈夫だな。俺たちももう少ししたら掃討が完了すると思うから、その時は回収をよろしく頼む」
「了解。必ず回収する」
セーラはそこで通信を切った。そして艦橋内に向かって大きな声で言った。
「さあ、あと一押しだ!気を引き締めていくぞ!」




