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洋上の戦士たち  作者: ただかた
第七章 愛
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第四話 アコーとモニカ

「むむむ・・・」


 自分の仕事をこなしながら、モニカは一人唸った。

 ここは<イフリート>内にある陸軍のスペース。彼女は今、部屋の下の方にかがんで資料の整理をしていた。

 その作業をしながらモニカは、向かいの棚で備品のチェックをしているアコーに視線を向けた。


(私とアコーが結構お似合い?う~ん、ピンとこないわね)


 先日の休暇でローラに言われたことを思い出しながら、モニカは考えた。


(というか、アコーって陸軍に入隊してからずっと一緒だったから、正直珍しくもなんともないのよね)


 モニカはそう思うと、今までのアコーとのことを振り返った。

 二人が生まれたのは、いずれも首都である。ただ住んでいる地区が異なっていたため、子供時代は全く接点がなく、学校もそれぞれ別の所を卒業した。

 そんな二人が最初に関わりをもったのは、陸軍学校に入学した時だった。身長はほぼ同じ、座学も演習もほぼ同じ成績を収め、さらに真面目で目配りのできる性格まで似ていたため、周囲は二人は双子なのかと噂したほどだった。

 そして二人は実際気が合った。いつしか二人は何をするにも一緒に行動することが多くなり、お互いに助け合う仲となった。

 そのようなことがあったからかどうかは分からないが、陸軍学校を出た後、二人は同じ部隊に配属された。そして二等兵から曹長まで、全く同じように昇進していった。現在は階級一つ分の差がついているが、それはモニカが出世を望まなかったからであり、決してアコーより能力が劣っているからというわけではない。

 そこまで考えるとモニカは、一度大きく首を振った。


(駄目だ、自分ではよく分からない。かといってこのままだと今後の業務に支障が出かねないし、これはもう本人に直接聞くしかないわね)


 そうモニカは心に決めた。そしてアコーの背中に向かって話しかけた。


「ねえアコー?」

「何?」

「あなた私のことどう思ってる?」


 モニカの問いかけに、アコーは一瞬動きを止めた。そしてゆっくりと彼女の方へ振り向いた。


「どうしたんだ、突然?」

「いや、この間のキャンプで参謀長と話しててさ。その時言われたのよ、あなたと私は結構お似合いだって」

「えっ、あの人そんなこと言ったのか?」


 アコーは思わず顔をしかめたが、このような時にローラが冗談を言うような人物ではないことは、彼もよく理解していた。


「それで、どう思ってるの?」

「そうだな、う~ん・・・」


 そうアコーは言うと、真剣な表情で黙り込んだ。


「ていうかさ、モニカとは陸軍に入ってからずっと一緒だったから、正直そんなこと考えたことないんだよな」


 先程モニカが考えていたことと同じようなことを、アコーは言った。


「だろうね。私もそう思う」

「お互いにいるのが当たり前みたいな状況だから、どう思ってるかっていうのはよく分からないんだよな」

「そうねぇ。誰かもっと、私たちを客観的に見ることができる人に聞いてみないとね」

「でも客観視できる人といっても一体誰だい?参謀長は言い出しっぺだし、隊長は僕たちと結構長く付き合ってるからな。とても適任とは思えないぞ」

「そうよね。私たちと親しくて、適度に距離がある人じゃないとね―」


 そのようなやり取りを二人がしていると、


「やあ、仕事中すまないね」


 部屋の扉が開いて、ヒデカツが中に入ってきた。


「どうしたんですか、ワタベ中尉?」

「いやいつもの職務の一環なんだけど、この部屋にある陸軍の装備品をまた見せてくれないかな?」

「それは別に構いませんけど、この前と大して変わってないと思いますよ」

「いいよ別に。それを確認するのも仕事の内だしね」


 ヒデカツはモニカにそう言うと、装備品の棚のチェックを始めた。

 その時モニカはアコーと視線を合わせた。そして互いに大きく頷いた。


((いた!客観視できる人!))




「あの、ワタベ中尉にお尋ねしますが・・・」

「うん、何?」

「中尉には私たちのことが、どのように見えていますか?」


 ヒデカツは一瞬キョトンとした顔になった。そしてモニカとアコーの顔を交互に見比べた。


「どうしたの?何かあったの?」

「いや実は先日参謀長に私たちはお似合いと言われたんですよ。だけど私たちは今までずっと一緒だったから、互いにそのようなこと分からなくて。そこで職場の同志であるワタベ中尉に意見を伺おうと思いまして」

「ああ、なるほど。そうだね、う~ん・・・」


 ヒデカツはそう言うと、真面目な顔をして考え込んだ。


「二人は優秀で何事にも真剣に取り組んで、そして細かい所にも目が届く。それは軍人としてというより、人間としてよくできてると思う」


 二人の一般的な評価と同じことをヒデカツは言った。


「はあ・・・」

「まあそうですよね・・・」

「一方で、二人はそれぞれの得意なところとそうでないところを理解している。そして足りないところを補完し合っている。それは二人がお互いを信頼しているからだと僕は思うよ」

「信頼、ですか?」


 モニカは驚いて、アコーと目を合わせた。今まで自分たちをそのように考えたことはなかったからだ。


「うん。もっとも僕は君たちじゃないから、本当のところはよく分からない。だけど互いのことを信じて、それぞれのことを任せ合える関係。そんなふうに僕は見えるよ。だからこれからも、二人にはその関係を大切にしてもらいたいな」


 それからヒデカツは装備品のチェックを済ませた。そして二人に礼を言うと、扉を開けて外へ出て行った。


「・・・だ、そうだよ」


 扉が閉まった後、しばらくしてアコーが口を開いた。


「信頼・・・信頼かあ~」


 モニカはそう言って天井を見上げた。


「どうやら僕たちは、自分たちの気づかない内に絆を強めてたみたいだな」

「そうね。お互いに無意識だったけど、着実に関係を深めていってたみたいね」


 そこまで言って二人は、互いに顔を見合わせた。


「まあこれから何が起きるか分からないけど、今後も仲良くやっていこう」

「うん、よろしく」


 二人はそう言って笑みを浮かべた。そしてそれぞれの作業へ戻った。

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