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洋上の戦士たち  作者: ただかた
第七章 愛
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第二話 キューベルとローラ・その二

 食堂を後にしたローラは、そのまま<イフリート>の外に出た。そして艦を降りると、真っ直ぐに軍港にある建物の方へ向かっていった。

 その建物のすぐ脇には、彼女が所属する戦車小隊<ウルフロード>の戦車が、これからの訓練に備えて待機していた。


「おおローラ、ようやく来たか。今日の訓練についてなんだが・・・」


 彼女の上司であるキューベル=アース陸軍中尉は、姿を見つけるとそう話しかけた。

 ローラはそれには答えず、黙って彼の側に近づいた。そしてキューベルの腕をガッシリと掴んだ。


「お?」

「すいません、少しお時間をいただけないでしょうか?」


 ローラはポツリとそう言った。そしてキューベルを引きずるようにして建物の陰に連れて行った。

 その様子を部下である二人の下士官は、唖然とした表情で見つめていた。


「なあ、どうしたんだ参謀長?」


 しばらくしてアコー=グラント准尉が口を開いた。


「さあ?」


 モニカ=ランダー曹長は、それを受けて肩をすくめた。

 そして二人は顔を見合わせ、お互いに首を傾げた。




「痛ててて・・・一体どうしたんだ、ローラ?」


 彼女に引っ張られた腕を軽く振りながら、キューベルはローラの背中に尋ねた。

 二人は今、軍港にある倉庫の脇に立っていた。ここは彼らの部隊のいる場所からは死角になっていて、二人きりで話をするには丁度いい所だった。


「・・・私、少し思い違いをしていました」


 キューベルの問いには答えずに、そのままの姿勢でローラは言った。


「自分は今まで、人の好意というものはさりげない仕草や言葉で向けさせるものだと思っていました。それが自分にとって一番嬉しいことだし、それになによりも憧れていました。ずっとそれを続けていればいつかきっと振り向いてくれる、そう考えていました」


 ローラはそこまで言うと、一度言葉を区切った。


「だけどこのような大事なことは、きちんと自分の口から正直に言うのが一番だと気づきました。そしてそれが、何よりも人としてあるべき姿だと思いましたから・・・。だから今、ここで言います!」


 そこでローラはキューベルに勢いよく振り返った。そして深く頭を下げて、しっかりと目をつぶった。


「隊長!私はあなたのことが好きです!だから私と付き合ってください!」


 ローラは渾身の言葉をキューベルにぶつけた。




(隊長、どんな表情をしているの?突然のことに呆然としている?それとも何を言っているんだと思っている?)


 そのようなことを考えながら、ローラは恐る恐る顔を上げた。そしてゆっくりと目を開けた。

 そこには彼女の告白を受けて、明らかに動揺しているキューベルの姿があった。


「え・・・いや・・・その・・・まさか・・・そんな・・・」


 彼は顔を真っ赤にしながら、そのようなことを口走った。

 その様子を眺めながら、ローラはある疑問を口にした。


「あの~、隊長?」

「ん?何だ?」

「私、今まであなたの気を引こうと色々やってきたんですけど・・・?」

「うん、それで?」

「もしかして、全く気付いてなかったんですか?」

「ああ。変なヤツだなとは思ったけど」

「なっ―!?」


 それを聞いたローラは、急に全身の力が抜けた。そしてガクッと両膝を地面についた。


(つ、つまり、今まで私がやってきたことは、全て徒労だったと・・・)


 両手を地面につけてローラはうなだれた。


「だ、大丈夫か、ローラ?」


 そんな彼女に、キューベルは心配そうに声をかけた。


「そうか、そんなに俺のことを想ってくれてたのか」


 キューベルは静かにそう言った。そしてローラの近くに寄ると、彼女の側に片膝をついた。


「ローラ、お前も知っての通り俺は不作法な男だ。加えてこんな側近くに自分を慕ってくれている人間がいるのに、それに気づかない鈍感なヤツだ。だからこんな俺がお前にどんな言葉をかけたらいいのか、正直よく分からない」


 そう言ってキューベルは、一瞬押し黙った。


「だけどお前が俺のことを心の底から想ってくれているのは、確かに伝わってきた。これからもどうか俺の側にいてくれ。そして俺や部隊のために力を貸してくれないか?」


 キューベルはそう言うと、ローラに向かってニッと笑った。

 ローラは彼が何を言っているのか一瞬分からなかった。しかしすぐに理解して、ハッとした表情になった。そして彼女は顔を真っ赤にして俯いた。


「よ・・・よろしくお願いします」


 小さな声で、ローラはそれだけ言った。




「やれやれ、どうやら上手くいったみたいだな」

「全く、一時はどうなることかと思ったけれど」


 倉庫の陰から上司たちの様子を見つめながら、アコーとモニカは口々にそう言った。

 上司二人が建物の向こうに消えてすぐに、二人は後を追いかけた。そして、自分たちの参謀長が隊長に告白しているのを目撃した。隊長の方は予想通り参謀長の好意には気づいていなかったが、それでも彼女の真心は彼に伝わったようだ。そして二人は何とか結ばれたようだった。


「今後どうなるのかね、あの二人は?」

「さあ?ただあの二人の様子だと、この後も上手くいくんじゃないの?」

「そうだな。隊長はああ見えて人望があるし、参謀長も真面目な人だからな。あの二人、意外とお似合いなのかもしれないな」

「意外とお似合い・・・」


 モニカはそう呟くと、じっとアコーの顔を見つめた。


「どうしたんだ、モニカ?」

「何でもないわ。さ、持場に戻るわよ。まだまだ仕事はたくさん残ってるわ」


 そうモニカは言うと、先に立って歩き始めた。

 アコーはそんな彼女の様子に首を傾げた。そして彼女の後について歩き出した。

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