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洋上の戦士たち  作者: ただかた
第六章 休暇
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第六話 捕獲

「お前たち観光客だな。だったら丁度いい、食料をよこせ。あと車があるんだったらそれも渡せ。俺はそれで遠くまで逃げる」


 錆びたナイフをこちらへ見せつけながら男は言った。その声には殺気がこもっていた。

 その様子を一同は注意深く見つめ、身構えた。その顔には、皆緊張と警戒が表れていた。


「あなた・・・服役囚ね」


 男が着ている服を見てエリーが言った。


「ほお、勘が良さそうだと思ったらその通りだったな。そうだ、俺はこの近くの刑務所に収監されていた、今世間を騒がせている過激派の一味だ。たまたま看守の中に間抜けな奴がいて、独房の鍵をかけ忘れてくれたんで、簡単に抜け出してここまで逃げてきた」

「やはりあの時の気配はあなただったのね。どうしてそのようなことを・・・」

「どうしてだと?そんなの決まってる。俺はこれから逃げ出して仲間と合流する。そして騒ぎを起こしてこの世界を再び戦乱の世にするのさ!」

「おいおい、本気でそんなことを考えているのか?」


 キューベルがどこかのんびりとした口調で言った。


「大体あんたが逃走した時点で、既に警察は動き出してるはずだぞ。例えここから一時的に逃れられたとしても、捕まるのは時間の問題だ。悪いことは言わないから、さっさと元の刑務所に戻った方がいいぞ」

「何だと!?」


 男は怒気のこもった声で言った。


「そもそもあんたの仲間は、あんたが脱走したことを知って助けに来てくれるのかね?」


 どこまでもゆったりとした口調でキューベルは言った。

 男は忌々しげな表情で彼を睨みつけた。そしてゆっくりと周囲の人間を見渡した。

 その時ふと、川原に腰掛けている白い肌の美しい女性が目に留まった。なぜか彼女はこちらを見ずに川の方を向いていた。


(こいつ、馬鹿にしているな!)


 そう男は思って、彼女の方へ一歩踏み出そうとした。

 その時彼女の前に一人の人物が立ちはだかった。


「おい、何者だか知らないけれど、ここにいる人たちに何かしたら許さないぞ!」


 そうはっきりとヒデカツは言い放った。


「あ?」

「第一自分で罪を作っておいて刑務所に送られたのに、反省もしないで抜け出してまた罪を犯そうとしている。そんな人間に外での居場所なんかない!」

「黙れ!」


 男はそう言うと、ヒデカツにナイフの先端を向けた。


「どうやら命が惜しくないみたいだな」


 そう言って男はニヤリと笑った。そしてヒデカツに向かって駆け出そうとした。

 周りのみんなが取り押さえるため動き出そうとしたその時―。


 ドキュウウウウウゥゥゥゥゥン!


 不意に辺りに銃声が響いた。そしてその瞬間、男の手からナイフが弾け飛んだ。ナイフはそのまま空中を舞い、男の遥か遠くへ落下した。

 突然のことに男が呆然と立ち尽くしていると、


「そこまでだ!」


 凛とした声が周囲に響き渡った。

 その場にいた全員が声のした方へ顔を向けると―。


「ユーリ」

「カッター中尉」


 そこには拳銃を構えたユーリが、背筋を伸ばした姿勢で立っていた。そして彼女の後には、数人の武装した兵士が控えていた。


「アクアフィールド海軍だ。あなたにもう逃げ場はない。無駄な抵抗はやめて、おとなしく投降しなさい!」


 そう厳しい口調でユーリは言った。

 男はじっと彼女の方を見つめた。そして悔しそうな表情を見せると、そのまま地面に膝をついた。

 直後に兵士たちが男を取り囲み、手際良く彼を拘束した。そして男を立たせると、そのまま森の外へ連れていった。




「はああぁ~~~」


 男がいなくなると、ヒデカツは大きな溜め息を吐いた。そしてそのまま地面に座り込もうとした。


「おっと」


 しかし次の瞬間、彼の背中に柔らかい感触が伝わってきた。見るとセーラが彼の身体を後から支えていた。


「大丈夫?」

「うん、まあ、何とか・・・。ごめん、また無茶しちゃったね」

「全くだわ。あの男が私を狙っていることは気配で分かった。だけど私は取り押さえる自信があったから、わざとそのまま泳がせておいたの。そしたら突然あなたが私の側に飛び出してきたのだから、正直少し驚いたわ」

「うう・・・ごめん」

「まあ何もなかったから良かったけどね。それに今回のヒデカツは少し格好良かったかな。だからその・・・ありがとう」


 そう言ってセーラは、ヒデカツをそっと抱きしめた。

 その行為に彼は、少し顔を赤らめた。

 そんな二人の前に、一人の人物がやって来た。


「お久しぶりです」


 そうユーリは丁寧に言った。


「うん、久しぶり」

「今朝サイクロン少佐から、脱走した過激派を捕獲するよう指示を受けました。その逃げた場所が艦長たちが休暇を過ごすと言っていた所の近くだと知って驚きました。だからこうして急いで駆けつけた次第です。到着が遅れてしまい申し訳ありません」

「気にしないで。あなたはよくやったわ。本当に大した腕前ね」

「当然です。誰に鍛えられたと思っているんですか」


 少し得意げにユーリは言った。そしてセーラをじっと見つめた。


「どうしたの?」

「いえ、相変わらずお美しいなと思いまして」


 そうユーリは静かに言った。


「先任将校」


 ユーリの姿を認めたエリーが、彼女に向かって駆け寄ってきた。


「エリー、もう私はあなたの上司ではないわよ。それにあなたの仕えるべき先任将校は他にいるんじゃないの?」


 ユーリはエリーに穏やかにそう言った。

 エリーはじっとユーリの顔を見つめた。そしてヒデカツの方へ視線を向けると、再びユーリの方へ視線を戻した。


「分かりました、カッター中尉」

「分かればそれでいいわ」


 そう言ってユーリはにっこりと微笑んだ。

 やがて彼女は先程過激派が持っていたナイフを回収した。そして周りにいた人たちに頭を下げると、兵士たちの後を追って森の外へ去っていった。

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