第三話 再会
次の日―。
この日もヒデカツは、早朝の街の中を歩いていた。
冬の街の朝の空気はひんやりとしていて心地よく、人影はまばらで静かな雰囲気が漂っていた。
そんなのどかさを身体に感じながら、ヒデカツはゆっくりと歩を進めていた。
どのくらい時間が経っただろうか。
ふと彼は、何かの気配を感じ取った。そして立ち止まり、後方を確認した。
しかしそこには、静かな通りの景色が広がっているだけだった。
(気のせいかな?)
そう思ったヒデカツは再び前を向き、また歩き始めた。
だが次の瞬間、彼は先程よりも強い気配をその身に感じた。そして恐怖でその場に足を止めた。
強烈な殺意が、彼自身に注がれていた。そしてそれは一人や二人ではなく、一〇人を超える者たちのそれだった。
ヒデカツは状況をすぐに悟った。そしてその場から全力で駆け出した。
同じ頃―。
彼女はこの日、久しぶりに街を散策していた。
この街に来てからというもの、彼女は部屋に籠ることが多く、あまり人の集まる場所に出ていくことはなかった。それでもたまにはこうして、街の中を気晴らしに散歩することがあった。
彼女は街の空気を一身に受けながら、ゆったりと道を歩いていた。
急に遠くの通りから喧騒が聞こえてきたので、彼女は立ち止まりそちらの方を向いた。そして次の瞬間大きく目を見開いた。
そこには二日前に会った軍服の青年が、通りを走っていく姿があった。そしてその後からは、人相の悪い男たちが何か大声でわめき散らしながら、彼を追いかけていくのが見えた。
彼女は今何が起きているのか瞬時に理解した。そしてすぐに彼が向かった方向へ走り始めた。
(くそ、何だってんだあいつら)
通りから外れた路地裏の隅に身を潜めたヒデカツは、荒い息を吐きながら思った。
先程の連中の動きから察するに、あれが昨日の男たちの仕業だという事は明白である。しかし、前日の出来事の腹いせにしてはいささか大袈裟すぎるような気がした。それに奴らの動きには一定の統率があった。あれは並の不良にできることではない。
(一体この街で何が起こってるんだ?)
自分は何かとてつもない事件に巻き込まれているのではないか。そんな疑念が彼の脳裏に浮かんできた。
しかし今はそんなことよりも、この状況を切り抜ける方策を考えなければならない。
はっきり言って、この街から脱出することは不可能だろう。どこかにこの事を報せようにも、その前に奴らに発見される確率が高い。
(どうしたものかな・・・)
そんな事を考えながら天を仰いだ時、不意に右腕を掴まれた。
(しまった、奴らの仲間か?)
そう思って振り向いた先には―。
「こっち」
そこにはヒデカツが二日前に浜辺で出会った、あの女性が立っていた。