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洋上の戦士たち  作者: ただかた
第三章 後押し
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第七話 告白

 家に帰ってから自分の部屋の中に入ると、彼は一人考えを巡らせていた。

 自分は今まで、何をしていいのか分からなかった。彼女のことを想いながらも、具体的にどんな行動をして、どんな言葉をかけたらいいのか思いつかなかった。もう彼女とはこのまま一生顔を合わせられないのではないかと、そんな気持ちにもなった。

 だけどあの人に会って考えが変わった。あの人は自分の悩みに正面から向き合ってくれた。そして彼女に対して自分の気持ちを素直に伝えるように言い、そっと背中を押してくれた。その心遣いは彼の決意を固めさせ、胸に抱いていた不安を取り払った。今の彼には、もう迷いはない。


(よしっ!)


 そう彼は、心の中でつぶやいた。そして外へ出るためにその場を立ち上がった。




「ふう・・・」


 暗い自分の部屋のベッドの上で両膝を抱えながら、レイニーは一つ溜め息を吐いた。

 かつての友人の上官である海軍中尉は、今日も家にやって来た。そして彼女に向かって色々と優しく話しかけた。その心から相手のことを想う姿に、レイニーは好感を覚えた。彼になら心を開けるのではないかと、そう思ったりもした。

 しかし彼女は、その一歩を踏み出す勇気が出なかった。彼との交流を望みながらも、それを行動に移させる何かが足りなかった。それが何なのかは、自分にも分からない。とにかく今、レイニーは自分の不甲斐なさに一人落ち込んでいた。


「はあ・・・」


 彼女はもう一度溜め息を吐いた。そして両膝に顔を埋めようとした。

 その時―。


「レイニーーーーーーーーーーーー!!」


 突然どこかで聞いたような大声が外からして、驚いて彼女は顔を上げた。

 レイニーはベッドから急いで立ち上がると、カーテンを閉めていない窓の側へ駆け寄った。そして勢いよく窓を開けると、下の方を覗き込んだ。

 そこには彼女の幼馴染みであるレオンが、こちらを見上げながら必死に声を張り上げている姿があった。


「聞いてくれレイニー、僕の気持ちを!」


 顔を真っ赤にしながら、そう彼は言った。


「今まで僕は、どうしていいのか分からなかった!君が苦しんでいるのを知っていたのに、何もしてあげられなかった!そんなことを考える度に、僕は君とはもう二度と会えないんじゃないか、そう思うこともあった!」


 そうレオンは、一気に言葉を続けた。


「だけどようやく気付いたんだ!本当に君のことを想っているのなら、悩んでないで正面から向き合わないといけないんだって!そして、自分の気持ちを素直に伝えないといけないんだって!レイニー、君は少し抜けた所があるけど、明るくて、元気で、そして何よりも人一倍頑張り屋だ!そんな君のことが、僕は大好きだ!だからレイニー、お願いだ、もう一度外の世界に戻って来て!そしてまた、素敵な笑顔を僕に見せてくれ~~~~~~!」


 レオンはそこまで言うと、肩で大きく息をした。

 家の一階の窓がバタバタと開いて、レイニーの母親が顔を出した。


「誰ぇ、こんな時間に大声で・・・ってレオン君?」


 彼の姿を認めると、彼女は驚いた表情になった。

 レイニーはじっとレオンの顔を見つめた。その目には少しずつ生気が戻っていくのが感じられた。

 やがて彼女はクスクスと、とてもおかしそうに笑った。そして下に降りていくために、窓の中に顔を引っ込めた。




「ん・・・・・・」


 夜の星空を見上げながら、エリーは思わず声を漏らした。

 正直今まで、彼女は自分のことは自分で解決しなければならないと考えていた。そして自分の性格を考えると、自分のことを気にかけてくれる人間などいないと思っていた。

 しかし今回の件で、エリーは初めて大事なことを人に託すという決断をした。それについては、後ろめたさが完全に消えたわけではない。だけどこれから生きていくうえで、人の助けを借りることの大切さを彼女は認識することになった。

 そしてエリーは、先程まで一緒にいた年下の部下の顔を思い浮かべていた。彼は彼女の性格を嫌いではないと言った。そして彼女の新たな一面を見られて嬉しいとも言ってくれた。その表情は素直で屈託がなく、心の底からエリーのことを気にかけているのが感じられた。


(全く、照れさせるようなこと言って・・・)


 そう彼女は思うと、フッと微笑んだ。そして改めて、目の前に広がる星空を見つめた。


「エリー」


 急に声をかけられたので振り返ると、そこには車の窓を開けて中から手を振るセーラの姿があった。


「艦長」

「どうしたの、こんな時間に?」

「まあ、ちょっと夜の散歩を・・・。艦長こそ、こんな時間にどうしたんですか?」

「うん、さっき街中でヒデカツに会ってね、今兵舎まで送ってきたところなの。そしたら彼、私が一人で夜道を帰るのが心配だと言って、守衛に頼んで車を出してくれたの。だから今、それに乗って帰宅する途中というわけ」

「まあ、先任らしい気遣いですね」


 その時のやり取りを想像して、エリーは思わず笑みをこぼした。


「よかったら一緒に乗っていかない?海軍の車だから料金はいらないし、一人も二人も大して変わらないわよ」

「そうですね。ではお言葉に甘えて」


 エリーはそう言うと車のドアを開け、セーラの隣に座った。


「ところでエリー、今日何か良いことあったの?」


 車が走り出すと、セーラは突然そう尋ねてきた。


「えっ、どうしてですか?」

「いや、何か表情が晴れ晴れしてるような気がして」


 そう言うとセーラは、いたずらっぽい笑みを浮かべた。


「そうですね・・・」


 エリーはそう言うと、問いには答えずに窓の方を向いた。そしてそのまま流れる外の景色を見つめた。その口許は少し緩んでいる。

 その様子を見てセーラはクスッと笑った。そしてそのまま正面を向いた。

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