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洋上の戦士たち  作者: ただかた
第二章 絆
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第八話 戦闘

 およそ一〇分後―。

 ヒデカツたち<イフリート><ウルフロード>の幹部ら八人が会議室に集まった。その顔は一様に緊張していて、事態の深刻さを如実に物語っていた。


「状況を説明してくれ」

「はい」


 セーラの問いかけに対し、机の上の地図を指しながらオリヴァが話し始めた。


「現在我々の艦は、半島の先端沖付近を航行しています。その周辺の海域に、艦を取り囲むように不審な船団が展開しています。その数はおよそ一〇隻程と思われます」

「その船団は、一体どこから来たと思うか?」

「詳しいことは分かりません。ただこの海域に面する国々では、最近過激派の活動が高まっていると聞きます。この船団も、おそらくその一部かと思われます」

「そうか。だとしたら早急に対処しなければばならないな」


 セーラはそう言うと、目線を少し上げた。


「だとしたら少し困ったことになったぞ。<イフリート>は軍艦だから当然大砲を装備している。しかし備え付けられている大砲は一門のみ、しかも前方を向いていて旋回は不可能だ。とても周囲を取り囲む船団には対応できない」


 元々揚陸艦は戦車を上陸させるための艦である。実際に戦闘に参加するわけではないので、実戦を想定した作りにはなっていないのである。

 その場にいた全員が頭を抱えていると、不意にヒデカツが口を開いた。


「ねえキューベル、戦車って大砲ついてるよね?」

「え?ああ、そうだな」

「それ、海の上でも使用できる?」

「艦上からの攻撃はしたことがないから分からないが、大砲自体は整備すれば使えると思う」

「よし、じゃあそれで足りない火力を補おう」


 それを聞いて張りつめていた周りの空気が、少しだけ緩んだ。


「これで前方と側面は大丈夫だな。となると残りは後方の守りをどうするかだ」


 そうセーラが口にした。確かにいくら戦車の砲台が旋回可能といっても、後方まではカバーできない。

 再び全員が黙り込んだ時、またヒデカツが言った。


「ねえオリヴァ、海軍の装備品の中にバズーカがあったよね?」

「はい。今回の軍事訓練は大規模なものと聞きます。どんな事にも対応できるように、常に装備しています」

「よし、それを使おう。こうすれば何とか乗り切れるかもしれない」

「それでしたら」


 とモニカが口を開いた。


「陸軍の装備品の中にもバズーカはあります。それを使えばさらに火力を強化することができます」

「ありがとう。でもそれは陸軍の部隊を守るために使ってよ。僕らは僕らで、何とか対応してみせる」

「それで、後方の守備隊の指揮は誰が執りますか?」


 オリヴァの問いかけに、ヒデカツは即答した。


「僕がやるよ」


 それを聞いて、周りにいた幹部たちが一斉にざわめいた。


「いけません、先任!」


 エリーが大声でそう口にした。


「先任はこの艦をまとめる幹部の一人です。そのような方がこの緊急時に艦橋を離れては、職務を放棄したことになります」

「分かってる。でもこれは僕が言い出したことだ。兵士たちを危険に晒す以上、僕が責任を取らなければならない。だから、僕が行くよ」


 そう言うとヒデカツは、会議室の扉に向かって歩き出した。


「ヒデカツ・・・」


 不意にセーラが彼に声をかけた。

 ヒデカツはその場に立ち止まった。そして振り返ると、彼女に向かってにっこりと微笑んだ。


「大丈夫。僕は必ず生きて帰る。約束するよ」

「そう・・・」


 そしてヒデカツは扉を開けると、そのまま通路を小走りに駆けていった。

 セーラはその様子を見てフッと微笑んだ。そして一同の方を向いてこう言った。


「ワタベ先任将校の作戦で行く。全員ただちに準備に取りかかれ!」




「艦長、不審船団の位置を特定しました」


 オリヴァからの報告を受けて、セーラは一つ頷いた。

 あれから彼女たちは艦橋に戻り、戦闘の準備を進めていた。そして艦に搭載されているレーダーには、<イフリート>を取り囲むようにして展開するいくつもの船影がはっきりと映し出されていた。


「艦長、大砲の発射準備、全て完了しました」


 砲台からの連絡を受けたオリヴァが、セーラにそう報せた。


「そうか」


 彼女はそう答えると、左側にある空の席にちらりと視線を送った。そして精神を集中するように一度目をつぶった。

 やがて彼女は目を開いた。そしてはっきりとした口調でこう言い放った。


「これより戦闘を開始する!」


 直後、艦内でも分かるような轟音が周囲に鳴り響いた。




(始まったか・・・)


 頭上を飛んでいく砲弾の軌跡を追いながらキューベルは思った。

 彼は先程から甲板の上に立って、戦闘の準備の指示をしていた。艦上に積載された五台の戦車は、それぞれシートが取られ、大砲の整備が行われていた。


「隊長、大砲の整備全て完了しました。いつでも発射可能です」

「よし」


 報告を受けて、キューベルは一つ頷いた。そして周りを見渡しながらこう指示を出した。


「右側の二台は右方向へ、左側の二台は左方向へ展開、中央にある一台は状況に応じて旋回せよ」


 彼の指示を受けて、五台の戦車それぞれが言われた通りに砲口を向けた。


「発射!」


 キューベルの号令と共に、五つの砲門が一斉に火を噴いた。そして不審船に向かって次々と着弾した。

 相手もこちらの攻撃を受けて砲撃を開始した。しかし兵器が旧式なのか、相手の砲弾はこちらに着く前に全て海に落下した。


「ローラは右側の、モニカは左側の指揮を頼む。それからアコー」

「はい」

「ヒデカツはああ言ったが、やはり心配だ。お前は何人かの兵士を連れて、後方の支援に向かってくれ。バズーカを忘れるなよ」

「了解しました」


 アコーたちを見送ると、キューベルは空を見上げた。そしてポツリとこうつぶやいた。


「しかし戦車を積んだ揚陸艦を襲うとは、間抜けな奴らがいたもんだな」

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