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洋上の戦士たち  作者: ただかた
第二章 絆
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第六話 出航・その二

 翌日、航海二日目―。

 この日ヒデカツは、陸軍の装備品の確認を行っていた。揚陸艦の性格上、陸海両軍の将兵は共同で活動する。そのため日頃から双方の連携を円滑にするためにお互いの備品をチェックしておく必要があるのだ。


「ふ~ん、<ウルフロード>の装備品は充実しているね」


<イフリート>内に割り当てられた陸軍の格納庫の中を見回しながら、ヒデカツは言った。


「まだまだこんな物じゃありませんよ」


 と、案内役のモニカは答えた。


「陸軍司令部はこれよりもさらに多くの武器や兵器を備えています。その規模は海軍にも引けを取らず、先の戦争ではそれらが勝利を決定づける役割を果たしたと言ってもいいくらいです」

「そうなんだ」


 実際、海軍が各海域で戦闘を行っている間に、陸軍は大陸各地にある相手国の鉱山を次々と制圧した。それがこの戦争の帰趨を決め、戦後それらを返還する代わりにそこで採れた鉱物資源を優先的に輸入する権利を獲得した。海軍と比較すると目立たないが、陸軍も大きな活躍をしていたのである。


「次は僕たちが海軍の装備品を見せてあげるよ。それについてはオリヴァが詳しいから彼に色々と案内させるよ」

「ええ、ぜひお願いします。それにしてもワタベ中尉は仕事熱心ですね」

「熱心?」

「はい。今まで数多くの海軍の将校と任務を共にしてきましたが、あなたほど我々の仕事に興味を持ってくれる人はいませんでしたよ」


 そう言ってモニカはにっこりと笑った。


「う~ん・・・」


 別に自分は仕事熱心なわけではなく、ただ自らの職務を遂行しているだけなんだけどな。そうヒデカツは思ったが、彼女の純粋な笑顔を見て何も言えなくなってしまった。




 同じ頃―。


「今日の仕事は、ここまで予定通りに進んでますね」

「ああ、そうだな」


 通路の一角を並んで歩きながら、ローラとキューベルはそんな言葉を交わした。

 ヒデカツたち海軍がそうであるように、陸軍にも彼らの仕事があった。先程から二人は、部隊の見回りや隊員の健康管理など、自分たちの職務を行っていた。


「それにしてもこの船、時々揺れますね」

「うん、今この艦は外海を航行しているからな。時々船体に波が当たって、それで大きく揺れることがあるんだろう」

「なるほど」


 と、そこでローラはあることを思いついた。そして心の中でほくそ笑んだ。


(もし次に船が揺れた時に寄りかかれば、隊長は私を受け止めてくれる。そうしたら・・・キャ~~~!!)


 そこで彼女はキューベルの隣にピッタリとくっついた。そして次の波が来るのを待った。

 果たしてその時がやって来て、船は大きく揺れた。


(キタ~~~~~~ッ!!)


 そう思ってローラはキューベルにもたれかかった。しかし当然彼も揺れを感じているわけであって―。


「おおっと!」


 キューベルは身をよじり、身体を支えようと壁に手を付いた。あわれローラは空振って、そのまま廊下に転がった。


「ふう、凄い揺れだったな・・・って大丈夫か、ローラ?」

「いえ・・・お気遣いなく・・・」


 ムスッとした顔で彼女は答えた。

 その表情を見てキューベルは怪訝な顔をして首を傾げた。


(やれやれ・・・)


 その様子を後方で眺めながらアコーは一人溜め息をついた。




 この日も航海は順調に進み、やがて夜になった。


「本日の業務はここまで。ここからは各自交代で休憩を取り、次の任務に備えるように」


 艦橋内にある艦長席から、セーラは言った。

 それを受けて彼女の右隣にいたエリーがまず立ち上がった。彼女はセーラに軽く頭を下げた。そしてそのまま後方にある扉から出て行った。

 次に左隣にいたヒデカツが立ち上がった。彼はセーラの方にチラッと視線を向けると、同じように扉を開けて外に出て行った。


(さてと、私も休ませてもらおうかな)


 そう思ってセーラが立ち上がろうとした時、


「あ、艦長」


 前方の操舵席にいたオリヴァが声をかけた。


「どうした?」

「申し訳ありません。実は重要な書類を先任に渡しそこなってしまいました。大変恐縮なのですが届けていただけないでしょうか?」

「それなら自分で届ければよいのではないか?」

「よろしくお願いします」


 オリヴァはそう言うと書類の入った封筒を差し出した。その口許には笑みが浮かんでいる。

 セーラはすぐに、彼の意図を理解した。そしてニヤリとしたいのをこらえながら封筒を受け取った。




「ふうっ・・・」


 自分の部屋の机に向かって日誌を書きながら、ヒデカツは一つ息を漏らした。

 今日で航海は二日目である。初日に比べると少し慣れたとはいえ、やはり初めての経験に彼はかなりの疲れを感じていた。


(今日はこれが終わったらすぐに寝よう。そして明日の任務に備えよう)


 ヒデカツがそのようなことを考えていると、コンコンと扉をノックする音がした。


「どうぞ」


 そう彼が言うと扉を開けてセーラが入ってきた。


「セーラ、どうしたの?」

「いや、バラック一等兵曹から頼まれて大事な書類を届けにきたの。これがその書類ね」

「え?ああ、ありがとう」


 オリヴァはそういう物は直接手渡すんだけどな。そんなことを考えながらヒデカツは書類を受け取った。

 しかし書類を手渡した後もセーラはその場に立ったままだった。


「どうしたの?」

「ねえ、せっかくだから少し話さない?ここの所忙しくて、ゆっくり会うこともできなかったし」

「え?ああ、そうだね」


 そう言ってヒデカツは立ち上がった。部屋に椅子が一つしかないので、二人はベッドの上に並んで腰を下ろした。


「私たち、付き合ってどれくらい?」

「ええと、君が首都に戻ってきてからだから・・・二〇日くらい?」

「私たち、それまでに色々あったわよね」

「そうだね、色々あったね」

「でも考えてみれば私、まだあなたのことを何も知らないのよね。アース中尉のことも、今回初めて知ったわけだし・・・」

「そうだねえ。でもそれはお互いに言えることなんじゃないかな。以前君が言っていたように、僕も君と同じものを見たい。同じことをして、同じことを感じたい。そういうものを積み重ねていくことによって、互いのことを深く知ることができるんじゃないかな。そう僕は信じてるよ」

「そうね・・・」

「そうだ、今度時間が取れたら二人で一緒にどこか出かけない?君とはまだ逢引きというものをしていなかったね。出かけた先で、僕に色々と教えてほしいな」

「あ、うん、デートね。まあ、考えておくわ」


 そう言ってセーラは、フッと微笑んだ。

 そうして二人は、しばらくの間語り合った。

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