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洋上の戦士たち  作者: ただかた
第二章 絆
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第三話<ウルフロード>

 戦車揚陸艦<イフリート>が停泊している船着き場に、四つの人影があった。

 そのうちの一人はグレーの帽子に同じ色の制服を着た、短い金髪が特徴の陸軍将校であった。背は高く、年齢は二〇代の半ば程。


「戦車小隊<ウルフロード>隊長、キューベル=アース陸軍中尉です。この度の訓練にご同行させていただきます」

「戦車揚陸艦<イフリート>艦長、セーラ=オルメス海軍大尉です。今回の任務にご一緒できることを光栄に思います」

「よろしく・・・」


 そう言いながらセーラの後から出てきた人物を、キューベルは見逃さなかった。


「って、あれえ、ヒデカツじゃないかあ!」

(うっ・・・やっぱり気づくよなあ)


 ヒデカツは思わず渋い顔をした。


「いやあ、お前、配置転換されたって話は聞いてたけど、まさかここの艦だったなんて。何だ何だ、そんなかしこまった顔しちゃって!」


 そう言いながらキューベルは、ヒデカツの両方の肩を手でバンバン叩いた。


「ワタベ先任将校、知り合いなのか?」


 セーラがそう尋ねてきた。


「あ、はい。彼は僕がこの国に来た時からの友人で、最初の頃に色々とお世話になりました」

「ふ~ん」


 それを聞いたセーラは、不意にいたずらっぽい笑みを浮かべた。


「では改めてアース中尉、ヒデカツ共々これからよろしく頼む」

「ん?呼び捨て?お前ら一体どういう関係なんだ」


 キューベルはそう言って、ヒデカツとセーラを交互に見比べた。

 しかしヒデカツは困ったように顔をポリポリかいており、セーラはもう説明は済んだとばかりに横を向いていた。


「隊長」


 そんな三人のやり取りの間に、キューベルの後にいた小柄な将校が割って入った。茶髪を短く切り揃えた、二〇代前半くらいの女性だった。


「友情を深めるのは結構なことです。しかし今は勤務中です。もっとご自身の立場をわきまえていただかないと」

「ん?いやまあ、それは分かってるんだけどな」


 そう言って頭をかくキューベルを脇に押しやるようにして、彼女はヒデカツの前に立った。


「<ウルフロード>参謀長、ローラ=ハワード陸軍少尉です。以後お見知りおきを」

「ええと、僕は・・・」

「ヒデカツ=ワタベ海軍中尉ですね。お噂はかねがね耳にしております。これからよろしくお願いします」

「ん?噂?何の話だ」


 そうキューベルがローラに尋ねてきた。


「隊長は能天気だから困ります。実はですね―」


 それからローラは、一カ月前の出来事を楽しそうに語り出した。




「聞いてないぞ、おい!」


<イフリート>の通路の奥でキューベルは叫んだ。


「しいっ、声が大きいよ」

「これが大声を出さずにいられるか。お前、東の街に潜伏していた過激派を制圧したんだって?何で言わなかったんだ」

「何でって・・・別に言う必要もないだろ?」

「いーや、俺だったら周りに言いふらして自慢するぞ!」

「そんな大袈裟な・・・」


 大体その話にはいくつか事実と異なる点がある。過激派を制圧したのは近くを航行していた駆逐艦の乗員たちである。ヒデカツたちは通報とその後の足止めを行っただけである。


「それに足止めをやったのは主にセーラであって、僕はただ彼女の後について行っただけというか・・・」

「セーラ、ねえ・・・」


 キューベルはそう言って後頭部をかいた。


「で、そこで知り合ったオルメス家のご令嬢と恋仲になった、と・・・。俺のあずかり知らない所で」

「う・・・それはただ単に言い忘れてただけ。ここの所、配置転換やその後の手続きとかで色々忙しかったから。決して隠してた訳じゃないんだ。気を悪くしたのならごめん」

「ん?いや別に気を悪くしてはいないぞ。それに、謝られるようなことでもない」


 そこまで言うとキューベルは、急にニッと笑った。


「俺はな、ヒデカツ、お前に恋人ができてとても嬉しく思ってるんだ」

「嬉しい?」

「あの根暗でいつもこの世の終わりみたいな顔をして、俺以外とあまり関わりを持とうとしなかったお前に大切な人ができたんだ。友人としてこんなに嬉しいことはない」

「そうなの?」

「ああ。それに、こっちに戻ってきてからのお前は、明るく積極的に周りと関わるようなヤツになった。そして何より希望に溢れた表情を見せるようになった。俺はそれを見て安心したぜ」

「そうかなあ・・・」


 とはいえ、確かにセーラに出会ってからこちらで生きていく希望を見つけられたような気がしたので、あながち間違ってはいないのかもしれない。


「ところで、そう言うキューベルは恋人とかいないの?見た感じ僕なんかよりずっと女性に好かれそう気がするんだけど?」

「ああ俺か。一応何人かに声をかけたことはあるんだが、皆ことごとく断られたよ」

「へえ、それはちょっと意外だな。少し軽い所はあるけど、お前は人の心を掴むのが上手いからな。恋人の一人や二人いてもおかしくないと思ったんだが」

「そんなこと言ってくれるのはお前だけだよ、ヒデカツ」


 キューベルはそう言って溜め息をついた。


「どこかに俺を好きになってくれる人がいてくれればいいんだけどなあ~~~」

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