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洋上の戦士たち  作者: ただかた
第二章 絆
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第二話<イフリート>

<イフリート>はアクアフィールド海軍が保有する戦車揚陸艦の一つである。その艦の役目は文字通り戦車を戦略上最も効果的な場所に輸送・陸揚げすることで、先の戦争でも最前線に配備され、戦いの帰趨を決定づける役割を果たした。

 セーラは海軍に復帰した際、元の海軍大尉の地位を回復した。そして今までの指揮官としての経験を買われ、この艦の艦長に任命された。

 そしてヒデカツは、彼女に請われる形で、艦のナンバー2である先任将校に就任した。




 ヒデカツ、セーラ、オリヴァの三人が<イフリート>の側近くまできた時、前方に一人の人物が立っているのが見えた。金髪を肩口で切り揃えた、二〇代前半ぐらいの小柄な女性将校だった。


「お久しぶりです」


 と、その将校はセーラを見るなり敬礼しながら言った。


「うん、久しいな」

「また艦長と一緒に任務が遂行できることをとても嬉しく思います」

「セーラ、この人は?」


 二人のやり取りを聞いてヒデカツは尋ねた。


「ああ、ヒデカツは彼女に会うのはこれが初めてだったな。彼女は次席将校を務めるエリー=ネルソン海軍少尉、かつて私の部下だった者だ」


 それからセーラはエリーに向き直り、ヒデカツを紹介した。


「こちら先任将校を務めるヒデカツ=ワタベ海軍中尉」

「よろしく」


 紹介された彼は、そう言ってエリーに手を差し出した。

 しかし彼女は、


「どうも」


 そう素っ気なく答えると、そのままヒデカツを無視して横を向いた。そして、


「寒空の下、兵士たちが待っています。急ぎましょう」


 そう言って一人先に歩き出した。

 ヒデカツが呆気に取られていると、セーラが申し訳無さそうに話し出した。


「いや、ごめん、ヒデカツ。あの子、先の戦争で私と同じ艦に乗っていたから。だから、それで・・・」

「ああ・・・」


 彼女の言葉にヒデカツは納得した。


(そうか・・・彼女もセーラと同じなのか・・・)




<イフリート>が停泊している船着き場へ行くと、そこには二〇人程の兵士たちが整列して待っていた。どの兵士も若く、これから就く任務に対して少なからず緊張しているようだった。

 ヒデカツたち四人は、彼らの前に横に並んで立った。そして中心にいたヒデカツとセーラのうち、セーラが前に一歩進み出た。その態度は堂々としていて、さすが歴戦の勇士といったところだった。


「諸君らは、心に大きな大志と使命感を持って今ここにいるだろう」


 そう彼女は切り出した。


「諸君らも知っているように、戦争が終わっても今なお世界は不安定な状況にある。我々はその不安を取り除き、人々に幸福をもたらさなければならない」


 彼女はそう続けた。


「君たちは今、崇高な役目を請け負った。戦闘があってもなくてもそれは変わらない。これから私たちと共に、国家や人々を守る責務を果たしていこうではないか」


 そう彼女は語りかけ、話を締めくくった。

 兵士たちは黙って彼女の話を聞いていた。その目はキラキラと輝いており、伝説の英雄に対する憧れに満ちていた。セーラの偉大さを改めて感じながら、これから先しっかりと彼女を支えていかなければならないな、とヒデカツは思った。




「今度陸軍との共同訓練に参加することとなった」


 開口一番、セーラはそう言った。

 ここは<イフリート>の中にある会議室。幹部たちが集まって作戦の立案や計画を話し合う場所である。

 ヒデカツ、セーラ、オリヴァそしてエリーの四人は、先程から今後の予定についての打ち合わせをしていた。集まっていた兵士たちはそれぞれの持場に着いて、各々自分たちの仕事を始めている。


「訓練、ですか?」


 そうオリヴァが尋ねた。


「うむ。揚陸艦の性格上、我々は陸軍と行動を共にすることが多い。したがって我らは、陸軍と良好な関係を築いておかなければならない」

「いや、それは分かりますけど、どうしてこの時期なのでしょうか?」

「先程も言った通り、戦争が終わったといっても世の中はまだまだ不安定な状況にある。各地では戦乱を望む過激派の動きが活発化している。加えて陸海両軍は、戦後その規模を縮小している。軍としては少数の部隊を鍛え上げることで、非常時の際の対応を円滑にする狙いがあるらしい」

「なるほど」


 実際戦争が終結して、各国は軍備を縮小している。それによって軍人の大量退職が発生したため、軍はやや人員不足の状態になっている。ヒデカツが国外出身者ながら海軍に入隊でき、わずか六カ月の間に海軍中尉にまで昇進できたのは、そういう事情も影響している。


「訓練は四日後、本土の西側にある海軍の施設で行う。他の艦は既にそちらに到着しており、後は東側にある我々の艦を待つだけである。当初は別の艦が参加する予定だったが、乗員の都合がつかず我らに回ってきた。出航は明日を予定している」

「それはまた急な話ですね」


 オリヴァはそう言って溜め息をついた。

 そもそもアクアフィールドは、本土の海域が東西に分かれている。それはなぜかというと、領海の間に半島が北側に突き出していてそこに別の国があるからである。したがって双方の港を行き来するには、ぐるっと半島を迂回しなければならない。それには大体片道三日程かかるのだ。ちなみに領土としては他に飛地である東アクアフィールドがある。そこがヒデカツとセーラが最初に出会った場所である。


「ところで、今度一緒に訓練に参加する陸軍の部隊の名前は何ですか?」

「うむ、戦車小隊の<ウルフロード>だ。この後、幹部と顔合わせを行う」

(<ウルフロード>?・・・どこかで聞いたような・・・)


 そう思いヒデカツは考えを巡らせた。そして一つの可能性にたどり着いた時、心の中で叫び声を上げた。


(ああっ、あいつのいる部隊じゃないか!)

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