川野夢理 14歳 死因:病死
体調はあまり良くなかった。
目の前にある四角のタイルが嵌められた白い天井を、私は何度見たことだろう。ベッドに横になりながら、思わずため息が漏れ出た。
ここは病院の個室だ。白い天井に白いベッド、窓の外はもうすぐ夏だ。夜の夏の風が私の体を触れる。私にはどうせ季節なんて関係無いのに嫌というほど夏を感じさせる。
それは突然だった。カーテンがぶわりと脈打つ様に揺れた。私は風に思わず目を瞑り、どうにか目を開けた。
そうすると、目の前に男の人が居た。
黒い髪に、黒い瞳。身長は180cm位だろうか。
黒いスーツを着たモデルさんみたいな人。
顔も整えられていて、どこか人間らしくない雰囲気がある。その人がこちらを見下ろしている。
「初めまして。貴女は、川野夢理さん14歳ですね?」
「え、えと……。貴方は?」
きっとやばい人だ。不審者って感じ??
看護師さん呼んだ方がいい…かな。
私は、ナースコールを手に持ち、相手の出方を待った。
男の人は、私の困惑に冷静に対応する。
「これは失礼しました。私は、死神レインです。こちらは、猫のクロです。」
そう言って深々とお辞儀をして、名刺を差し出す。
死神レイン…名刺にはそう書かれていて、隅っこに黒猫が歩いている絵が描かれている。
「ニャア」
レインさんの足元に居た黒猫が、大きくジャンプをしてベッドの上に登ってくる。
そして、こちらをじっと見つめてくる。
今の現状に驚きつつも、病院生活が長く動物に触れる機会が無かった私はその大きな瞳と、揺れる尻尾に釘付けだった。だって、あまりにも可愛すぎる。特殊な状況に驚きつつも、頭を撫でようとしたその時だった。
「オレ様はクロだ!!可愛いオレ様を撫でたければ思う存分撫でれば良いだろう!!」
「えー!!猫が喋った!?」
大きな声を出して仕舞えば、看護師さんがこちらの部屋まで来た。
「夢理ちゃん!?どうしたの。」
「あ、あの。猫と知らない男の人が居てっ。」
走ってきた看護師さんは、焦ってる私を見るときょとんとした様に首を傾げた。
「誰も居ないじゃない。」
え、だって目の前に猫と男の人が居るのに…。
看護師さんは、全く気づかず「夢理ちゃん、寝ぼけているのね。」と部屋から出ていった。
「お分かり頂けたでしょうか?私が死神であるという事を。」
レインさんは、口角を上げた。そして、お辞儀をする。夏なのに、シワひとつない黒いスーツ。
シャツから覗くネクタイは、黒地に白猫が描かれている。この人、猫好きなのかな?
「あなたは、明日亡くなります。」
淡々とした口調で、告げられたその言葉にどきりとする。
「死神の仕事は、亡くなる方に対し告知をさせて頂く事です。」
レインは、こちらを見つめ告げた。
「貴方の命を終わりにしに来ました。24時間後貴方は亡くなる。それまでにやり残した事を無くし、現世との未練を断ち切ってもらいます。」
あまりに非現実的な話だが、私はあっさりと受け入れていた。真摯な瞳だったからというのと…もうそろそろ私の体が寿命というのを、私は痛いほど知っていたからだ。
「私は、24時間後亡くなるんだ。…当たり前か。逆に今までよく持ってたよね、この体。」
「じゃあ、今から24時間貴方を健康にしてあげましょう。この世に未練無く、死後の世界へと行ける様に…。」
そう言うと、レインさんは私に声をかけた。
「それでは横になって目を瞑ってください。」
不意に顔を掌で覆われる。
暗くなった視界で、耳元で囁かれる。
「貴方の死に幸福を。」
甘く優しい声は何故か落ち着く。
「あらあら、疲れているのですね。まだ時間はありますから、ゆっくり休んでください。」
そうだ、私急に色んな事が起きて疲れていた。
瞼を閉じふわふわとした心地の中、頭の奥底で昔の事を思い出していた。
私の心臓は生まれた時から、よく誤作動が起こる。普通に動いていたと思ったら、急に動作を止めようとしてきたり。
かなり厄介な心臓だ。
そのため昔から入院が多く、外に出ることはあまり無かった。両親は、私のこの病気に育てにくさを感じ、家庭に寄り付かなくなったお父さんが不倫して離婚。親権を勝ち取ったお母さんは、あまりお見舞いには来てくれなかった。寂しさはあったが、大丈夫だ。だって、友達がいるから。
心臓の動きが今よりスムーズに動いていた頃…保育園の頃に仲良くなった友達。山内あかりちゃん。
中学生になった今もよくお見舞いに来てくれて、色んな話をしてくれる。
部活は、テニス部に入っているせいか焼けた肌が似合うクッキリとした目鼻立ち。背も私より高く、ショートカットがよく似合う。
あかりちゃんは、コロコロと表情を変えながらよく話してくれる。
学校では、テニス部に力を入れていてもうすぐ大会がある事。でも勉強は苦手で、テストは赤点ギリギリ。
部活とクラスに友達が沢山いる事。沢山話してくれて、彼女の言葉で紡がれる外の世界を私は愛おしく感じた。
…そんな大好きな友達を、良い加減解放しなくてはならない。
朝目が覚めたら、本当に健康的な体になっていた。胸の痛みも無く、体も軽く怠さもない。
このあまりにも健康的な回復に先生も驚いて、何度も私を見返していた。余命僅かと言われた私が元気に生きている、その姿に驚きを隠せないみたいだった。
先生に一時退院をお願いしたらあっさりと許可が降りた。
きっと、私の寿命が短くて今後いつ体調が大丈夫なのか、分からなかったからだろう。
周りには、人が多く電車の音も騒々しい。ここは駅だ。
一時退院の許可が出て、すぐさまここにやって来た。
目の前には、一人の少女がいる。
英語のロゴの入ったTシャツに、ショートパンツからはすらりとした健康的な足が出ている。そして黒いサンダル。彼女があかりちゃん。心配そうにこちらを見つめている。
「本当に大丈夫なの?」
「うん、全然大丈夫だよ。」
背の小さい私と違って、あかりちゃんは長身でモデルさんみたいにスタイルが良い。
私はちらりとあかりちゃんの後ろにいる男の人へと目線を向けた。レインさんと、クロちゃんだ。
クロちゃんがこっちにきて、あかりちゃんの足元に駆け寄った。
『ふーん。こいつがあかりか。お前が凄く美人だと言っていたからどんなもんかと思ったら、オレの方が美しいではないか!!』
そう言い尻尾をふりふりと揺らした。あかりちゃんには、勿論見えていない。
実は、あかりちゃんと待ち合わせをする前に病院でこれからの事をレインさんと話したのだ。
昨日色々な事がありキャパオーバーですぐ寝てしまったので、具体的な事を何も聞かなかったのだ。
未練を無くすための24時間は自分で好きに使ってよく、またレインさん無しで良いと言っていたが、この24時間暇そうだったので彼らについ声をかけてしまったのだ。
健康な体は深夜0時までだと言う。
普通の人には姿が見えてないと言っていたが、本当に見えてないんだ…。
「ここ駅だけど…。これからどこに行くのか決まってるの?」
「ふっふっふ。愚問だね。あかりちゃん。」
「愚問って…あんたは、何者なんだよ。」
じろり、と何言ってんだこいつと呆れた目で言ってくる。うう…愚問って言葉を使ってみたかったんだよ…。
「まあ、気を取り直して…服見に行こうよ!!」
近所のショッピングモールに洋服を見に来た。平日と言うこともあって然程人は入ってきていない。
最後くらいは可愛くなりたい。
その想いでここに来た。入院中は、パジャマくらいしか着る事は無かった。
あかりちゃんには、私が明日亡くなることは伝えてはいない。
だって悲しませてしまうから。
「可愛い〜!」
久しぶりに来た地元のショッピングモールは、店構えも変わっていた。最後に来たのは、何年前だろうか?確かお母さんと一緒に来たと思う。
若い人向けの可愛らしい内装の施された店内に入る。
「あ、これ似合うんじゃ無い?」
あかりちゃんが指さしたのは、可愛らしいワンピースだった。ピンク色の生地に花柄が施されている。
「わ、可愛い〜!!これ、買っちゃおうかな。」
マネキンの前でニコニコしている私を横目に、レインさんとクロはマネキンの後ろに並べられているお洋服を見ている。
「ふむ…現世ではこういう服が流行っているんですね…私が最後に服屋に行ったのはおおよそ50年前くらいでしょうか。その頃はこんなに色とりどりの服は置いてませんでしたね。」
レインさんは、女性物のワンピースを見てうんうんと考えている。なんだろう、死神なのに…妙に人間ぽいなぁ。
「なんだ、ここは!?猫用の服は置いてないのか。せっかく可愛いオレ様の服でも置いてないか探しに来たというのに。」
ぷんぷんと、レインさんに抱き抱えられながら服を見ているクロ。
「な、なんか。普通の人間と猫みたい…。」
「んー?夢理どうしたぁ?」
あかりちゃんが不思議そうに、こちらに問いかけてきた。
「わー!!いや!!何でもないよ」
私はどうにか誤魔化した。
買い物が終わり、購入したワンピースを着用し、その後はカフェに向かった。白い外装に、室内は水色で可愛らしい。
ここはSNSで有名な所だが、平日のせいか人はそこまで居なかった。
「お待たせしました。」
「わぁ。」
持ってきた料理は、とても美味しそうだ。
カルボナーラとクリームソーダ。どちらも私が好きな物だ。あかりちゃんはというとミートソースのパスタにアイスコーヒーを頼んでいる。
私はコーヒーがあまり得意ではない。やっぱりあかりちゃんは大人だなぁ。
「ここの美味しいね。」
ニコニコと笑いながら、こっちを見てくる。
だが、私は話しているあかりちゃんでは無くその後ろに立っている人をガン見してしまった。
「これは、これは。美味しそうですねクロ。私も食べてみたくなってしまいますよ。」
料理をあかりちゃんの後ろ側から覗き込んでいる。美形な人なのに、言動が残念だな…。
クロは丸く丸めたレインさんの背中に乗って、料理を品定めしていた。
「オレ様は、人間の料理なんかに興味はねえなぁ。」
そう言って毛繕いをし始めた。
「ちょ、ちょっと!!そんなにあかりちゃんの後ろで話さないでよっ。」
シーン…。
「夢理何言ってるの??」
周りから痛い視線が私に突き刺さり、椅子へと腰を落とした。
「いやいや、何でもないよ!!」
そう言いながら元凶を見ると、レインさんは笑顔でこちらを見ていた。恥ずかしいことをさせてくれたな!!
そう思いながら、静かにしていると次第に周りの視線も無くなっていった。
話題を変えようと、口に出した。
「そういえばさ、あかりちゃんは学校どうなの?」
「んー?まあ、普通だよ。」
あかりちゃんは少しいつもと違う表情で笑った。
私はそれに違和感を感じたが、あかりちゃんが話題を変えた為それ以上触れなかった。
カフェを終えると、新たな場所に来た。
軽快な音楽と、沢山のカラフルなアトラクションが立ち並ぶここは地元の小さな遊園地だ。
「久しぶりだね〜。昔は来てたね、ここ。」
「そうだよね、懐かしい〜。じゃあ、まずは…」
私は一際目立っているアトラクションを指差した。
「あれ、乗ろう。」
高いところから急勾配に降っていく乗り物…遊園地名物ジェットコースターだった。
ウキウキ気分で乗っていく私と、顔を青ざめさせたあかりちゃんが居た。
「次はあれ乗ろっ。」
ジェットコースターをどうにか終えた私たちは、グルグル回る乗り物を指差した。コーヒーカップだ。
…これもあかりちゃんの顔が青ざめていた。
「大丈夫ー?」
アトラクションを終え、近くのベンチに腰掛ける。私は久しぶりのアトラクションに満足だが、あかりちゃんは何十歳も老けた顔をしている。ちなみに、レインさんもジェットコースターで後ろに乗っていたが涼しい顔をしていた。
「うう…、疲れた。」
「……ごめんね。」
俯いていた顔が持ち上がり、こちらを見つめて
くる大きな黒い瞳は、大きく見開かれていた。
「え……、どうしたの??急に。」
驚きを隠せない様に、すこし掠れた声が聞こえてくる。
「ううん、私が振り回しちゃったかなって。」
そう言って、今度は私が顔を俯かせた。
記憶の中にはあかりとのたくさんの思い出がある。その中には、思わず顔を顰めてしまう様な苦い思い出がある。
今よりももっと幼い、二桁もいかない頃だ。
たまたま体調が良かった頃に、一時退院をさせてもらった。
その時迷子になったのだ。
家族ぐるみで遊びにきたショッピングモール。中々来れない場所に、物珍しさもあったのだろう。その当時流行っていたキャラクター物が、子供向けのグッズ売り場に売られていたのだ。引き寄せられるように、目を惹かれたわたしは1人群れから離れた。
気づいたら周りに知っている人は居なかった。
悲しくて怖くて堪らなかった私を見つけてくれたのがあかりちゃんだった。
「夢理、ここにいたの!?心配したんだよ。」
そう言って手を差し伸べてくれた。
思い切り泣いてしまった私を優しく慰めてくれた。
懐かしい、けど苦々しい思い出だ。
目の前であかりちゃんが不思議そうにこちらを見ていた。
「でも私、夢理と一緒に居ると楽しいよ?本当に。」
そう言って笑った。
そして最後ナイトショーだ、と思っていたのに…。
「雨…。」
ざあざあと振り続ける雨に、私は何とも言えない気持ちになってしまった。
呆然と立ち尽くす私にあかりちゃんは、笑って言った。
「また来ようよ。いつでも、付き合うからさ。」
その言葉に、わたしは思わず言ってしまった。
「またっていつ?私、もう死んじゃうんだよ……!!」
ハッとした様にこちらを見つめる彼女。頭の片隅で悪い事を言ってしまったということは分かっている。だが、止められなかった。雨は強く振り続ける。私も彼女もびしょ濡れだ。でも、それに構っている余裕はなかった。
「そんな事無いよ。夢理が死ぬわけ……。」
「死ぬの!!私は、明日死んじゃうんだよっ!!」
そう言葉を吐いて、私は走り出した。
ぜえぜえ、と早い息遣いが耳元で鳴る中頭の中では、ぐるぐると考えが回っていく。
私の命、これで終わっちゃうの?
まだまだやりたかった事いっぱいあるんだよ。
ショーだって見たいし、学校にだって行きたい。
お父さんとお母さんに会いに行きたい。会って思い切り甘えたい。白い服に着いたシミみたいなわだかまりみたいな物を無くしたい。
無くして、昔みたいに家族全員で仲良くしたい。
やりたい事いっぱいで、どうしようも無いんだよ。
それを全部ずっと心の中にしまい込んでいた。
どうせ、私は何も出来ないんだから。
本当は、諦めのいいふりをしていただけなんだ。だって、いい子で居ないと誰も私を大切にしてくれる人なんて居ないから。
私は最初から愛される資格の無い子供だった。
「ここは…。」
走った先は、公園だった。昔あかりちゃんとよく遊んでいた公園。
ここで彼女は、体が弱い私に変わって遊んでくれていたのだ。
雨は上がっていた。
ベンチに座り込むとポロリ、と涙がこぼれ落ちる。
そうすると急に抱きしめられた。顔を上げるとそこには見慣れた人だった。あかりちゃんだ。
「ねえ、夢理。私謝りたいことがあるんだ。」
涙で視界は歪んでいる。だが、いつも聞いている声が真剣さが増していた。
何?と尋ねると、少し間をおいて話し始めた。
「実は、私学校行けてないんだ。」
「え?」
「本当はさ、全部嘘なんだよ。学校行ってるのも、学級委員やってるのも。友達多いのも、全部、全部。」
ごめん、全部話すね。
そう言ってあかりちゃんは、話し始めた。
中学入学して、クラスの中心の子から何故かあまり気に入られなかったんだ。曰く、身長高くて見下されてるように見えるらしいよ。ほんと生まれ持ったものをバカにするなんて、子供っぽい。
でもその子供っぽい理由が、私を嫌いになる理由としてまかり通ちゃった。
それから、クラスの子から無視されて。
本当に、私居ないみたいな扱いされるんだ。
誰に話しかけても私の声は聞こえず。
そんな扱いされてると、私ってどこにいっちゃったのかなって自分でも思う様になっちゃって。
私って存在しないのに、学校行く意味あるのかなって。
お母さんとお父さんは、突然学校に行かなくなった私にびっくりしてた。そりゃそうだよね。
そして、私に踏み込んだりしなかった。
それは、優しさを感じたと同時にモヤモヤとしたものが胸を圧迫した。
私、夢理にずーっと嘘ついてた。夢理には、かっこいい私を見て欲しかった。馬鹿みたいだよね?本当に。
夢理といると、凄く楽しいんだ。本当にあの病室は夢理にとって苦しいものだったと思うけど、私は現実を忘れさせてくれる場所だった。
「夢理死なないで、ずっと一緒に居てよ…。」
優しく抱きしめられた暖かさに、このまま埋もれてしまいたかった。このままずーっと、辛い事や悲しい事、終わりなんか来ないでずーっと。
抱きしめ合いながら思い切り泣いた。
泣いて、泣いて、泣きまくった。
ようやく涙が枯れ始めた頃、あかりちゃんは呟いた。
「絶対、忘れたりなんかするものか。」
そう言ったのが最期に聞いた言葉だった。
不意に体が重くなった。地面が徐々に近づいてくる。
あかりちゃんの焦った表情が見える。
あ。
公園の時計を見たら0時を回っていた。
そう言えばこんなに遅くなっていたんだ。
そのまま、私は亡くなった。
◇
オレ様は、クロ。この世界で一番カッコよく厳かな存在だ。
そんなオレ様は、こいつレインと一緒に仕事をしてやっている。もうすぐ死ぬ者の未練を無くし、綺麗に死なす仕事だ。
そんなオレ様は素晴らしい猫なので、アフターケアも完璧だ。
先日亡くなった夢理の友達あかりを見に、下界に降りて来たのだ。
あかりは家にいた。自室のベッドに座り、膝にいる猫を優しく撫でている。
その猫は、夢理が亡くなって一週間後に近所の公園で捨てられいた。
名前はユメだ。
「ねえ、夢理。この子は貴女の生まれ変わりなのかな?そうだったら良いな。」
優しく撫でながら呟いた。そして、笑った。
「生まれ変わりじゃ無かったとしても、絶対夢理の事忘れたりするもんか。」
あかりは、まだ現実を受け入れられては居ない。大好きだった夢理が亡くなり、彼女の幸福は一瞬で溶けて消えた。
だが、これからも幸福はひょんな事で顔を出す。
だって、あかりはこれからも生きていくのだから。
◇
「あの子の輪廻転生に関与しただろ。」
天界に戻ったクロは、レインの足元をウロウロしながら聞く。
「さあ、どうでしょうか?」
そう言って唇に人差し指を乗せ、妖艶に微笑むレイン。
こいつは、食えない奴なんだよなとレインを見つめるクロであった。