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第6話:魔道の力

『まずはお前の精神を鍛える。強い魔力は強い精神から生まれる。それに精神力の弱い者、忍耐の出来ぬ者は必ずいつか負ける』

(どうやって鍛えるんですか?)

『簡単だ。まずは布団に寝転がれ』

(はい)

『そうしたら目を瞑れ』

(え?)

『目を瞑るんだ』

(……はい)

『それじゃあ寝ろ』

(え、寝るだけですか?)

『そんなわけ無いだろがこのたわけ! いいからサッサと寝ろ!! 寝てからが本番なんだ』

(……わかりました)


 そして数分後、気がつくと朱春は草原に立っていた。そして草原の向こうには背の高い男の人が立っていた。男の人は肩まで伸びた赤銅色の髪を無造作に結んでいて、ワイルドという言葉がよく似合う風貌をしていた。


「おう、やっときたか」

「あなたは」

「我は赤嶺山天蒼坊あかみねやまてんそうぼう、焔大天狗とも呼ばれていた」

「天狗!!??」

「そうだ、いまからお前を鍛える。」

「え、ちょ、っと待ってくださいよ! 天狗!!??」

「だからそうだと言っているだろう。そんなことより魔道の訓練の方が先だ」

「天狗が…………僕に」

「何をブツブツ言ってるんだ、早く始めるぞ!」

「はい!」

「それじゃあまずは魔道の基礎からだ。この火をよく見ろ」

「いつまでですか?」

「我がいいと言うまでだ」


 天狗はそう言うと掌から炎の球を一つ出した。炎の球はゆらゆらと動き回り、かと思うと一点にとどまっていたりした。

 朱春はその炎の球をじっと見つめ続けた。しかししばらく続けるとこれも集中力が途切れ始め、段々と炎の球を眺めているだけになってきた。

 すると朱春の体が吹き飛んだ。


「はっ!!!」


 ガバッと起き上がった朱春は自分の体を触ってどこもおかしなところがないことを確認すると、自分の呼吸がものすごく激しいことに気が付いた。肺が痙攣したように呼吸音がブルブルと震えているのだ。

 そんな朱春に天狗が呼びかけてきた。


『おい坊主! 何を勝手に起きているんだ! 誰がやめていいと言った! 集中しろ!!』

(す、すいません)

『早く寝ろ!!』

(わかりました)


 朱春は思った、偉いことになってしまったと。しかし寝ないわけにもいかないので兎に角寝て、あとのことはその時考えることにした。


 再び目を閉じるとすぐにさっきと同じ場所で気が付いた。天狗はさっきと同じ姿勢のまま待っていた。


「どうして体が吹き飛んだかわかるか?」

「集中してなかったからですか?」

「我が吹き飛ばしたからだ」

「…………え?」

「集中していればあれくらい防げるはずだ」

「ふ、防ぐって、どうすればいいんですか! どうしようもないじゃないですか!!」

「そんなもの自分で考えろ、強くなりたいのだろう?」

「そ、そうですけど」

「それじゃあいくぞ、今度はしっかり集中しろよ」


 そうして朱春は再び吹き飛んだ。そもそも何をされているのかもわからないのに、防げと言われても防ぎようがないじゃないかと内心でキレていると、天狗に再び吹き飛ばされた。どうにかして天狗の攻撃を避けようとしたが、結局一度も防ぐことは出来なかった。そうして夜は開け、朱春は寝不足で朝を迎えた。

 学校ではいつものように馬鹿にされ、最悪の気分で家に帰ってきた。すると息つく間もなく天狗に呼ばれ、制服も着替えずに寝てしまった。


「よし、じゃあ訓練はじめるぞ」

「…………はい!」


 そんなことを何日か繰り返すと、しっかり寝ているはずなのに目の下のクマが濃くなるという異常事態が発生した。そんな朱春を見て母さんは夜になると朱春を見張るようになったが、別に朱春は寝て起きてを繰り返しているだけなので、どうしてクマが濃くなっていくのか見当もつかなかった。

 そんなある日、朱春は学校でぼんやりとしていた時にあることに気が付く。


「…………あれって僕の夢の中で起きてるわけだよな。…………てことは僕の夢なんだから僕が自由にしていい訳で…………」


 朱春はその日、学校が終わるのが楽しみでしょうがなかった。今まで散々な目にあわせてきた天狗をギャフンと言わせることが出来るかもしれないのだから。そんなことをしてはいけないのではないかとも思ったが、それでも天狗をギャフンと言わせたいほどに鬱憤がたまっていたのだ。

 学校が終わると朱春はものすごい勢いで家に向かった。過去一で走ったと言っても過言ではないほどに走った。家に着くと宿題も何もせずに鞄を放り出して布団に寝ころんだ。

 家に帰ってくるなり布団に入って寝てしまう朱春を母親は心配そうに見ていたが、今日は何も言わないようだった。

 朱春が布団に入るとすぐにいつもの草原が現れた。


「おうきたか、それじゃあ今日も始めよう」

「はい!」


 朱春の返事を聞いた天狗は掌から火の玉を出すとそれをフワフワと漂わせ始めた。朱春はその火の玉に集中しつつ自分の周りを頑丈な壁が覆っている様子を想像した。すると次の瞬間、朱春(ときはる)の周りの地面がぐらぐらと揺れはじめた。


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