桜
放課後
高校生の至福の時間
部活に精を出す者、アルバイトに勤しむ者
そして…家でゴロゴロする者もいるのであった
「………………」
「………………」
県立北山高校一年の志水風兎と嶋津冷凪は放課後の学校帰りを二人で並んで帰宅していた
風兎と冷凪は運動公園に立ち寄ると運動公園の沿道に植えられていた桜の木はまるでトンネルを形成しているように覆われていた
「おぉ〜!もしやと思って立ち寄ってみたけどここはいつ見てもピンク色のカーテンに全身が包まれているみたいで綺麗だなぁ」
「そうねぇ〜。この花びらがお金かアンタの血だったらもっと綺麗なのに残念ね」
「待て待て待て。花びらがお金だったらっていう意見には至極賛成なんだが俺の血だったら惨劇って話じゃ済まないぞ?」
「早速今日作ってみようかしら…。手伝ってくれる?」
「単純に俺に殺害予告をするんじゃねぇよ!!そんなことして誰が得するんだよ!」
「あたしですが何か?」
「言っていて気づきました…。でも絶対やらせないからな!?」
「キスしても?」
「キスしても!!満開の桜を堪能しているんだから邪魔しないでくれ!」
「そういえば桜って漬物みたいになるんだっけ?」
「あ〜そういえば桜漬けって奴だっけ?見たことはないけどご飯にしたり椀種になったりするんだったとか?」
「椀種?」
「まぁ簡単にいえばお吸い物の具みたいなものだよ」
「へぇ〜。見てよし食べてよしなんてアンタと違って桜って有能なのね。無能男と結婚するなら桜の方がいいわ」
「癪に触る言い方だけどサクラと喧嘩する気にはならないから不思議だ。桜になら負けても全然悔しくないし寧ろ俺も桜になりたいなぁ」
「アンタの桜になりたい願望はゴミ箱に置いておいて、あたしは花見がしたいわね」
「ゴミ箱に置くなっての。でも花見については賛成だ!コンビニで弁当やお菓子でも買って花見にしようぜ」
「あら、ご馳走様」
〜買い物中〜
「お前絶対もずくいらないだろ…これどうすんだよ?」
「何アンタ?食べ物を粗末にしようっての?」
「俺が食うのかよ!どこのどいつが花見しながらもずくを食うんだよ!!」
「アンタよアンタ。3パックあるんだから3パック全て食べなさい」
「3パックあるんだから1パックくらい食べてくれよ…。連続3パックなんて大好物でも飽きちゃうだろ」
「嫌よ。どこの世界で花見しながらもずくを食べる女子高生がいるのよ」
「なら男子高校生もいないと思わん?」
「女子高生よりかはいるんじゃない?知らないけど」
「はぁ…まぁ別に今食べなくてもいいか。ほれ、明太マヨパスタに一口唐揚げ。飲み物は水でよかったのか?」
「ありがと。そんなに飲み物なんていらないわよ…。ってかアンタそんなに食べれるの?太るわよ?」
「デミグラスハンバーグ弁当にチキン×2に和風ツナマヨおにぎりに1ℓカルピスなんて余裕で完食できるよ」
「部活男子のメニューじゃない。運動していない陰キャのアンタじゃブクブク太って事実上のFATMANになるわよ」
「なんでそこだけネイティブなんだよ。ちゃんと運動したりしてるし普段からの食生活は野菜中心に摂っているから心配すんなよ」
「穀物とかが入った牧草とか?」
「牛さんや豚さんの食事じゃないんだよ!」
公園のベンチに腰掛けいつものように風兎をイジメて楽しむ冷凪と冷凪に翻弄されまくり挙句買った弁当の大半を食べられる風兎
二人にとってはいつも通りの放課後だったが、道行く人たちからはどう見ても公衆の面前でイチャ付き合っているカップルにしか見えなかった




