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LIFE☆RELIVE  作者: ゆーしゃエホーマキ
序章《鈴が哭く》
5/28

Episode5 : 天使が異変を感じ取った

ブクマさんくすです!(^q^)

引き続きお楽しみください<(_ _)>

「背中……痛くない?」



 ベルはそう言って水を含ませた布で、ルフトラグナの背中を優しく撫でるように拭く。

背中の方が翼より傷が酷い。特に、翼の根元。まるでルフトラグナの翼を取ろうとしているような傷の付け方だ。



「……わたし、追われてるんです」



 ルフトラグナは静かに話し始めた。今日食卓を囲んで、気を許してくれたのだろう。



「中央大国 《ヴァルン》……そこの王が命じたらしいんです。天使狩りを……」


「天使狩り……? そんな物騒なこと何のために……」


「よくわからないです。ただ、いきなり黒い鎧の人に襲われて……右腕はその時に斬り落とされました。でも多分、腕よりもわたしの翼が目当てなんだと思います。ヴァルン現国王は愛翼家だと聞きましたから」


「それはまた特殊な趣味をお持ちで」



 ベルも人のことは言えないが。ここまでする必要があるだろうか。必要以上に痛めつけているようにも見える。ルフトラグナが抵抗した結果かもしれないが、恩を返すならその天使狩りとやらを止めることが一番の恩返しだろう。



「……っ、あれ……なんか……」


「ん? どうかし……ってルフちゃん!? なんか目が光って───」



 その瞬間、森がざわめく。涼しかった風がやけに生暖かい。



「……来る、来ます……魔龍が……っ!」


「なっ、そんなことわかるの!?」


「わ、わたし自身に何かを予感する力はないです。ただ、何か声が聞こえて……と、とりあえず服を! 凄く嫌な予感がします!」


「お、オッケー! 了解!」


 ルフトラグナの真剣な顔に、ベルは急いで服を着る。濡れた身体を拭く時間はなさそうだった。


 森で地竜から逃げてる時に聞いた、あの咆哮。魔龍の話をルフトラグナから聞いて、まさかと思っていたが……その日のうちに襲来してくるとは思いもしていなかった。



「───グランツさん! ルフちゃんが嫌な予感するって! ってなんかもう準備してる!?」


「森の異変くらいわかる。異常事態を察知出来たのは驚きだが……とりあえず、身体を拭いてから服を着てくれ」



 グランツは顔をそっぽに向け、ノールックで上着とタオルをベルに投げた。



「あ、す、すみません急いでたもので……」


「……ルフトラグナは、服破っていいからな」


「あ、は、はい! ……えいっ!」



 ルフトラグナは服を破かないように着ていたため、翼がぎゅうぎゅう詰めになって今にも服が大破しそうだった。ルフトラグナは翼にちょっと力を込め、翼だけ服の外へ出す。



「武器の扱いは?」


「ナイフと銃なら!」


「棒を振り回すことなら!」


「……ジュウ? が何かわからないが、とりあえずベルはナイフ、ルフトラグナは……片手剣でも持っておけ。いいか、どんな生物でも目や口内、喉、とにかく顔が弱点だ。襲われたら外を狙え」


「「が、がってん!」」



 グランツに渡された武器を片手に、ベルとルフトラグナは外へ出る。



「わっ、動物がこんなに!?」



 ベルの視界に飛び込んできたのは、慌ただしく一定の方向へ逃げ去る動物たちだ。皆、振り返らずに走っている。そして奥から、怪しげなオーラを身に纏った犬っぽい生物が、ゆっくりとこちらに近付いてくるのが見えた。


 敵対種族……通称()()。一般的に()()()()と呼ばれる種だ。自我はなく、ただ本能的に他種族を襲う。動物に比べたら遥かに高い魔力を保有している危険な生物。

ベルたちの前に現れたのは魔種獣型に分類されるもの。犬の魔物 《ボイソフンド》だ。



「あれは群れで行動する! 一先ず逃げるぞ! 動物たちと同じ方向へ走れ!」


「りょ、了解!」



 後ろからボイソフンドを目視したグランツがそう叫ぶ。いろいろあったせいで疲れた身体、もう寝たいと悲鳴をあげているが、もう少し頑張れとベルは鞭を打つ。こうして逃げるのは今日で二回目だ。



『ガウッ!!』


「まずい、仲間を呼ばれた」


「な、仲間!?」


「ボイソフンドの群れの規模は最大で数百匹、群れの長……ディーソフンドには会いたくないがっ!」



 グランツは走りながら弓を引き、ボイソフンドに向けて威嚇射撃をする。すると、少しだけ走る脚を遅くして様子見に入った。さすが狩人と、ベルは感心する。



「……あー、ディーソフンドとかいうのって、もしかしてあれ?」


「君、悪運強いな!?」



 一回り大きな赤黒い毛の犬。ボイソフンドのリーダー、《ディーソフンド》。ボイソフンドが統率の取れた動きが出来るのも、リーダーあってのことだ。つまり、ディーソフンドを討つことが出来れば、ボイソフンドは追ってこない。



「森を燃やす訳にはいかないか……ッ!」



 グランツはそう言って二本目の矢を放つ。ディーソフンドを狙ったが、横から割り込んできたボイソフンドに当たってしまう。



「な、なに今の動き……! まるで庇ってるみたいに……!」


「ディーソフンドが生きていれば群れは拡大出来る! 奴らにとっては命よりも守るべきものだ! 気を抜くな、反撃してくるぞ!」


「足止めします! 【ヴィントム】ッ!」



 吠え、速度を上げて噛み付こうと飛び跳ねたボイソフンドに向けて、ルフトラグナは手をかざす。


 風魔法【ヴィントム】────。


 ルフトラグナのイメージ通り、放たれた風はボイソフンドを吹き飛ばし、竜巻を形成する。木が近くにあるせいで威力は弱いが、一本道を塞いで少しの間の時間稼ぎにはなる。

だが、道をはずれ、脇からディーソフンドが接近してくる。さすがに頭が良い。



「仕方ない……俺が迎え撃つ! ベル、ルフトラグナを連れて真っ直ぐこの道を行くんだ、町がある!」


「で、でも! グランツさんは!?」


「ディーソフンドなら何度か狩った! 心配するな!」


「───ッ!?」



 心配するなと言われた瞬間、ベルは視線をグランツから()へ移していた。


 ……巨大な穴だ。空に、渦巻く黒い穴が出現していた。全てを呑み込んでしまいそうな黒。そして、そこから覗く紅い瞳が、ベルの恐怖心を煽る────。

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