Episode13 : 魔龍殺しの三英雄
序章Aパート終わりッ!
グランツとクルセルム。灰と青の衝突から数十分。さすがに巨大な角を町中に入れるわけにはいかず、ベルたちはギルドを訪れていた。
「も、もう一度お聞きします! 焔魔龍を……倒したのですか!?」
「そうですよ! もうこれ四回目!」
ベルがそうやって話している受付嬢だけではない。他の受付嬢や、周りの冒険者たち、目の前の受付嬢が驚きから、あまりの大声で聞き返すため、ギルドの外……住人たちまで覗いてくる。
────《魔木の森》という、この大地でも片手で数えられるほどしかない巨大な森林。その付近に存在するたった一つの町。《ユナイの町》と呼ばれるこの町のギルドで、焔魔龍 《イグニアス・グ・ロードヘル》の討伐、及び消滅が確認された────。
その後、ギルド職員や他冒険者の手を借りて右角を慎重に荷台へ運ぶ。
「魔龍の角ということで、通常の売却は不可能です。本物かどうか確かめるためにも、一度こちらで預からせていただきます。……とのことです」
右角を積み終え、ベルたちは受付嬢からそう説明された。
「どこに持っていくんですか?」
「そうですね……超危険災害級の素材なら中央大国の研究機関に引き渡し……いや、この規模ですと《ニンフェ》だと思います」
「ぐ、グランツさん、ニンフェとは……?」
「大陸西部にある妖精国だ。魔法技術が高いからな、魔龍の角を調べるなら中央よりよっぽど手際がいいだろう」
「はい、なのでそこまでお時間は取らせないと思いますが……換金はもう少々お待ちください」
つまり、鑑定して品定めをしてから金額を決めるということだ。魔龍がこの一個体だけなら、慎重になるのもわかる。本当に討伐されたのならそれは、英雄として名を挙げることになる。
「それにしても、たった三人で倒してしまわれるなんて……グランツさんは度々依頼を受けに来ますけど、そこのお二人は初めましてですよね?」
「あ、はい! 私はベル。……で、こっちの子は……」
そうやってルフトラグナを紹介しようとした時、ベルは一瞬思う。ルフトラグナは現在、中央大国……ヴァルンと呼ばれる国に追われている。
そしてここは魔物の素材や、魔物による被害を依頼として掲示する団体 《ギルド》。まさかこの町だけにギルドがある……なんてことはないはずだ。各町、各国にいくつか存在するだろうと、ベルは予想する。
……つまり、ここでルフトラグナの名を出せばヴァルンにあるギルドにも認知されてしまう可能性がある。
ルフトラグナがここにいると知らせるようなものだ。
(今はみんな魔龍の角に気を取られていてルフちゃんのことは気にしてないみたいだけど……)
ベルはカウンターの奥をチラ見する。受付嬢の上司らしき人物たちが、何やらコソコソと話しているのが見えた。
(それにヴァルンが天使狩りをギルドに依頼しているかもしれない……)
「……べ、ベル?」
ベルの険しい表情に、ルフトラグナは心配になって顔を覗き込む。
「あぁ、ごめん。……そうだね」
そうしてベルは答えを出した。
「この子は……ルフトラグナです。私たち三人で、焔魔龍を討伐しました!」
隠れても意味は無い。ルフトラグナはその見た目をどう隠しても目立つし、現に一部には気付かれている。だから、魔龍殺しの異名をわざと表沙汰にする。
天使が英雄となれば、そう簡単に手は出せないはずだ。きっと世間がそれを許さない。
「では、こんな私が代表して言うのもなんだか気恥しいですが……一先ずギルドを代表して、本当にありがとう。私たちの仇を取ってくれて……ありがとうございます……!!」
涙を零しながらも、受付嬢は笑顔でありがとうを伝える。焔魔龍……十年前に渡り、各地に絶大な被害を齎した危険個体。それのせいで、家族を失った者は数多くいる。
受付嬢の言葉を合図に、後ろの冒険者たちも歓声を上げる。町が震えたような勢いだ。皆、拍手をし、涙を溢れさせ、ベルたち三人へ向けて次々とお礼を伝える。
「わ、わたし……こんなに沢山お礼を言われたの……初めてです」
「う、うん……私も……」
「……素直に受け取っておこう。君たちは本当に凄いことを成し遂げた」
「グランツさんもでしょ? 英雄は三人だよ!」
転生して、まだほんの僅かした経っていない。それでも初めの一歩は大きく、ベルの新たな人生はここから幕を上げる……。
さあ、この星の果てで始めよう────。




