Episode1 : 転生したら竜の鼻先に倒れてた
立ち塞がる運命を殺せ。
そして望む未来へ行き着け。
「もう誰かが死ぬのは見たくない」死が怖い転生少女のn回目の人生、開幕────。
異世界暦・八百九十一年、通称 《魔木の森》。
その木々から漏れる陽の光が、金髪のポニーテールを靡かせながら走る少女を疎らに照らしていた。
「も、もうちょっと別の場所に転生してくれないかなぁ!?」
森の名前なんて知る由もない少女は、もう声の届かぬ相手に向かってそう叫んだ。叫びたくもなるだろう。
気持ちよく目覚めたら、ドラゴンの鼻先で寝っ転がっていたのだから。
「なんで起きて早々私は死にそうなの!」
走る足を止めずに、ちょっと振り返ってみる。予想はしていたことだが、予想よりもちょっと、ほんの少し。
……いや、かなり豪快に木をなぎ倒しながら、ドラゴンがこちらに突っ込んできているのがわかる。
赤砂のような色をした鱗を持ち、ワニのような四足。翼は刺々しく、木を簡単になぎ倒していた。
なぎ倒された木の傷から、何やら青っぽい光が漏れ出ているのが見えたが、そんなことを気にする余裕はなかった。
「人間の足の速さで逃げ切れるわけないしッ! こっちは武器どころか服もボロっちいし……!」
そう文句を言いながらも、木を背に逃げることで上手く身を隠し、迫るドラゴンが見失うように動く。
……が、この竜は鼻が良いのであんまり意味はない。
「イヤだ、死にたくない! 死にたくないよッ! 絶対に死ねない……! 死んだら……またあの痛みを味わうことになる……ッ!」
朧気な記憶に唯一残る、言い表せない痛み。ただ、それを感じたくない一心で少女は逃げる。地面に出来た亀裂を飛び越える。すると、ドラゴンからはその亀裂が見えていなかったのか、前脚が亀裂に挟まり身動きが取れなくなった。
「よ、よし……! もっと遠くへッ!」
チャンスとばかりに少女はもっと速く走って逃げる。が、ドラゴンは不格好に翼をバタバタと激しく動かし、無理矢理に空中を飛ぶ。
「ハァァ!? くっ、あーもう、これで死んだら恨むからねアイン!」
少女は、ここに来る前に出会った神……代行者の名を叫ぶ。叫んだところで、ドラゴンが止まるはずもなく、その差はどんどん縮まっていく。
だが、少女とドラゴンの距離がゼロになろうとした瞬間─────。
『グァァァァァァァッ!!!』
まるで空から落ちて来るかのように、ズンッと風圧を感じるほどの咆哮が森に響き渡る。少女は、思わず空を見上げてしまう。ドラゴンもまた、少女と同じように空を見上げていた。───しかし何もない。何もいない。
(幻聴……? こんな時に……?)
青空が今は不気味に感じるが、結局、謎の咆哮の正体はわからずじまいだ。
そういえばと少女が我に返ると、すぐそこにいたドラゴンと目と目が合った。
『グルルル…………』
「ひゃああああっ!!?」
少女は悲鳴を上げ、また走り逃げる。だが一度埋まった差だ。逃げても一瞬で捕まってしまう。もう死を覚悟しなければならないのかと、少女は絶望した。
そんな時、誰かの声が少女とドラゴンの耳に聞こえた。
「アニムスマギア、【隔離図書室】ッ!」
その声が聞こえた瞬間、少女の姿は森から消えていた。ドラゴンは突如消えた少女を探そうと匂いを嗅いだり、周囲を見渡すが……すぐ完全に消えたと理解して、唸りながら巣に戻っていく。
そして、消えた少女は今…………見事に本棚へ衝突していた───。
一話をお読みいたたぎありがとうございます!
はじめましての方ははじめまして!
勇者を名乗るほどの者ではない自称・地球外生命体、ゆーしゃKuroです!
さてさて、少し前に書いた『光芒で音は生り、響く ~天使と一緒に本を読む~ (1)』を直してこの作品を解き放ったわけですが(光か星の違い(※意味は変わってない件について))。今後どうなることやら……順次更新していくので、どうか生暖かい目で見守っていてください!
それでは!
『星芒で音は生り、響く ~天使と一緒に本を読む~ (1)』をよろくろお願いしまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!!!!!!!!