霧が晴れたら
見ようとしても、見えない景色があります。
うまれてから、ずっと見ていたその山を
また見ただけで、うれしくなってしまった。
窓いっぱいに大きく見える、その山は、
どこにでもあるものでは、なかったんだ。
みんなと駆け回りながら、ずっと聞こえていた鳥の声を、また聞いただけで、うれしくなってしまった。
列をなして飛んでいく白い鳥の声は、どこでも聞こえるものではなかったんだ。
お金もなく、お腹がすくと手を伸ばして食べていた、その木の実を、また食べただけでうれしくなってしまった。いつでも食べられるものではなかったんだ。
大きくなっても、ずっと甘えていたあの人の、写真を見ただけで涙が溢れてくる。
いつまでも甘えていてはいけなかったんだ。
あなたが言っていた、言葉の真実を分からずにいて、ごめんなさい。
霧が晴れたら、景色がはっきりするように、あなたが伝えたかったことが何だったのか、少しずつでも分かるように生きていくから。
あなたが、愛したものたちを、わたしも大切にして生きていくから。
心が晴れると、見える景色があります。