プロローグ「The man who is lose peace today」
Hello,nice to meet you everyone.
「X-code"ZERO"」
突如世界が青紫色に光った。
プロローグ
耳に空気がたまる感覚。もう何度とも感じたこの感覚が今でモ不快感となって居心地の悪さを演出する。慣れない上空での環境に、いら立ちを覚えながらも手早く準備を進める。やたらと重たい装備を、各規定の場所に取り付けると、自室に備えてあるベッドに腰を下ろす。重たい腰が降りた時にベッドが若干悲鳴を上げた。日々の疲れをいやす暇もなく、ただちょっとした時間の休息に、ほっと息をつく。ちらと備え付けの窓から下を覗く。今は海上にいるようで、航空管制駆逐艦「夕立」が、この機体のすぐ下についてくる。少し距離が離れたところに、まばらに軍艦が散らばり、火力の低い夕立の護衛をしている。少し前までならこの光景を見て、ほかの軍艦が夕立を護衛しているとは思えなかっただろう。それにしても眠い。とうとう力尽きて、ベッドに吸い込まれるように横になる。もうどちらがベッドに抱かれているのかわからない絵面だが、気にせず、どっと流れてきた疲れと睡魔に身を任せた。
次の目覚めはだいぶに早かった。どういう事だかわからないが機内放送の音が妙にうるさい。その五月蠅さで起きた。体を起こすと、世界が白く染まった。そんな感じがした。それに伴う痛みでそれが太陽光によるものだとすぐに理解できた。視界に黒いシミの様なものが残る。寝起きの人間の第一視が太陽の光は、この世で一二を争うほどつらい。この調子だとすぐに白内障になりそうだ。というのはさておき、どうやら先ほどの機内放送。俺の事を読んでいるようだった。寝起きの人間で、なおかつほとんど休憩なんてもらってない人間が休んでいるのにこんな大きな音で呼ぶとは非常識人が...とくだらない事を内心で言い放ち、さて、一仕事するかと意気込んで身支度の済んだ怠さをまとった体に鞭を打つと勢いをつけて立つ。あいつのための、不可能作戦ミッションインポッシブル。
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目覚めはだいぶに早かった。どういう事か、体が馬鹿みたいに重たい。長い夢から覚めたはずなのに、時間は正しく5;57分を指す。そこで俺は、人間は夢の中で虚数時間という科学的に証明できない時間を持っていると習ったことを思い出す。それにしたっても異常な迄な早起きだ。俺の平均起床時間は既定の7:30。起床時間からだいぶ早かった。こんな異常な状況に違和感を覚えつつ、気にするだけ無駄だと自分に言い聞かせて、これからの予定を考える。が、時間があまりに余った。勉強するにも、本日分の勉強は済んでるし、日記もつけた。それに、もう一度寝ようにも寝れるような眠気ではなかった。すでにすっきりしていて、おそらく快眠だったらしい。こうして考えると久しぶりにしっかり寝れた気がする。ここ最近は学業に専念していたおかげで、自分の体調管理を厳かにしていたかもしれない。少しは体調管理に気を付けるか、と考えながら、俺は気分を変えるために、カーテンをただっぴらに開け放つ。強い直接光。カーテン越しから今日の天気がかなりいいことは予想で来ていたが、まさかこれほどの快晴だとは思わなかった。目を指す日光が遮るもの無しに全力で降りかかる。この調子だと、すぐに白内障になりそうだ。
さて、そんな他愛のないことはさておきだ。今日は大事な大事な予定がある。それは、孤児だった俺を預かってここまで育ててくれたあの人と会うことだ。倉敷京子。今の年齢はおそらく五十一寸だろうか。最近は顔も見れておらず、ずっと連絡がつかなかった。その間6年くらいか、あまりにも長い音信不通に心配していたが、三日ほど前、やっと連絡が取れた。彼女曰くどうやら忙しかっただけらしいが、俺はただ忙しかっただけとは思えなかった。だがとりあえず、これから十分に余裕があるらしい。だから今日はその手始めということで約束をしているわけだ。何か怪しいが、気にしたら負けだろう。
俺は変なことを考えすぎないよう頭の中を入れ替えるつもりで大きな背伸びをする。あたたかな日に当たりながらの伸びは最高に気持ちがよい。真夏とはいえ、朝方はまだ涼しい。ちょうどよい温度が体を和ませる。俺は、待ち合わせ時間を確認するために机に置きっぱなしの携帯電話を手に取る。それから慣れた手つきでロックパスワードを入力し、メールのショートカットを触る。そして、昨日最終確認用に送ってもらったメールを確認する。9:00~目黒区の元競馬場前の停留所での待ち合わせだ。俺は心の中で遠いなぁ....とつぶやく。現在地は神奈川県横須賀市追浜駅徒歩四分程度のところにある、ただ東京に行くだけでもかなりの時間がかかるところだ。そうだ。ここから目黒まで行くには一時間はかかる。むしろこれだけの早起きは好都合だったんじゃないか?俺はそう思うと、まだ寝てるルームメイト。「浅間結友」のことも考えずどたどたと部屋の奥に走っていく。だが結友は、それでも起きる気配はなく、ただ気持ちよさそうによだれを垂らして寝ていた。
結友と俺の寝室から抜けると、そこはリビングになっている。学生寮にしてはかなり豪華な作りで、さすがは国内最大規模の学校だといえる。寝室のドアから見てすぐ左手に、玄関までの廊下がある。簡潔なつくりだが、しっかりしている。廊下を歩き、すぐに両側にドアがある。左はトイレ。右は風呂だ。俺は迷わず右のドアのドアノブを軽くひねる。そこであることに気が付く。さっきから妙にカタカタ五月蠅い。なんで気が付かなかったのかわからないが、ずっとリビングにある大きな窓がカタカタ音を立てている。何かで揺れている。普通なら風だとおもうはずだが不思議とそれは風の影響で揺れているわけではないと認識した。俺は不快感を感じた。何か良くないことが起きている気がして、リビングまで戻り、窓の確認をした...特に問題はない。外の景色にも何ら問題はない。俺は気のせいだと思い、もう再び風呂に戻った。
俺が風呂を出たころ、ちょうど結友も起きたらしく結友の呼ぶ声が聞こえてきた。
「辰巳~?たっつみぃ~?」
甘い、高い声。同じ男とは思えないほど女性的で、守りたくなるという本能をくすぐられる。その容姿もこの上なく女性的で、丸っこく、非常に童顔でよく小学生と間違われる顔に、垂れ眼気味の黒い、日本人的で奥深い瞳は、見つめられたものを魅了しそうなほど的だ。黒く三つ編みに結ばれている髪の毛は、まとまりをもち、太陽の光で反射して輝くほどに洗礼されていた。
俺は結友に対して、大きな声で返事をする。
「風呂だ!それと今日、八時から外すぞ!」
「なんでぇ?」という間抜けな声が聞こえる。
「前にも言っただろ!ある人に会いに行くって」
少しの間、返事は来なかったが、俺が風呂から出たタイミングでドアの先から結友の声が聞こえる。
「ある人って言ってたけど、誰?」
俺は、返答に困った。別に言って悪いことはない。だが、彼女の仕事柄言うと面倒くさい。
彼女の仕事は現在日本、アメリカ、イギリス。ロシア、ドイツ、フランス間で起きている戦争の日本軍の軍事関係者だ。アメリカ、日本イギリスは同盟国。ロシア、ドイツ、フランス他が連合国という立ち位置において、戦争が繰り広げられている。今の戦争の傾向として、陸軍が主な種戦力となっている。理由は主に二つ。一つは今の戦争では基本的にどの国も二足歩行兵器を用いていること。二つ目はワシントン条約改正という異例のことから、軍艦の生産バランスが大きく乱れたことだ。ワシントン条約の軍備拡小の一部が書き換えられた。軍備の拡小は海軍のみとなり陸軍、空軍はその影響を受けない、ということになった。それに対し、ロシアが宣戦布告したことでこの戦争は始まった。
そんな戦争の関係者だ。なかなか普通の奴は言う気にはならない。
「あ、あぁ....おばあちゃんだよ。たまたま、呼ばれたから、行くんだ」
あからさま過ぎた。語句切れで、つなぎが不自然だ。これには結友の返事も遅れたが、特に気にしなかったことにしたのか、納得した様子で返事を返してきた。その後、この場から離れるように足音が遠のいていく。彼の性格上、おそらく部屋に戻り勉強を始めるのだろう。
俺は、一安心すると、一気に体をふき去り、用意しておいた下着と、服を着たら、洗面所の入り口上部に備え付けられた時計を見る。7:28。結構長風呂をした。俺は、食事の時間を含めると、間に合う気がしなかったから、急いで食事の支度をしようと思い、入り口のドアを引く。するとそこには、部屋に戻ったと思っていた結友の姿がある。その顔は策略通りといった感じで、俺は、思わず一歩後ずさる。まぁ、その後語る事なく伝わるであろうが、俺は優に捕まった。正直あっけなく捕まった。
結友に捕まったため、結友にしたがってリビングに従っていくと、テーブルにすでに朝食が準備されていた。トーストにみずみずしさの伝わるレタス、トマトをのせ、そこにマヨネーズを塗り、白身があふれんばかりに出ていることをいとわず、また同じように上に重ねる。しっかりとパンの耳は切りそろえて袋詰めにされており、いつでもつまみたいときにつまめるときに便利な風になっていた。
俺はその用意されていたサンドウィッチというべきであろうそれを見て感嘆した。結友にも見た目に相応した女子力があったなんて!と。
結友は、いつの間にか椅子に座っていると、反対側の椅子に指をさす。俺はそれを座れと言っているのだと判断し、律義にそれに従った。
結友は、俺の目の前にあるサンドウィッチを食べるように催促する。俺はワンドウィッチを両手で持つと、それを口へと運ぶ。サクッ!という音と、レタスのシャキッ!という音が同時に口の中で鳴る。噛めば噛むほど、その音は次第にリズミカルな音に聞こえて、おいしい!俺は手が止まらなくなっていた。どんどん口に運びたくなる。俺は、そして、最後の一口を、一気にほおばった。それと同時に、話を吹っ掛ける。
「さっき、今日会いに行く人の事、はぐらかしたよね。」
思わずむせかえった。既に飲み込んでいたからよかったが、唐突な質問に焼けたパンの粉とパンが突っかかった。結友はその様子を見てくすっと笑うと、自分の目の前にも置かれたワンドウィッチを口に運ぶ。また彼の方からもサクッという音が鳴る。彼は一口口に運んでから、ワンドウィッチを一回置くと、話を続けた。
「実際はどんな人なの?」
俺は、少しばかり悩んだが、こればっかりは隠しても仕方ないと思い、ついに叔母さんの事を話した。
結友は俺が言うことを、一門一句しっかりと聞いてくれていた。嘘だという顔もしなかった。俺は、それで安心した。そして少しばかり自分を恨んだ。こんなにいいルームメイトを持っておきながら相手のことを信用できていなかったのだから。
俺はそのすべてを話し終えると、結友が少しだけ暗い雰囲気で言った。
「そう...か...辰巳にはそんな過去があったんだね。」
「別に隠すつもりもなかったし、これを鼻にかけて生きていくなんてしたくない。悲劇の主人公を演じ切るのは御免だからな。ただ...彼女の立場的にむやみにいうべきではないと思ったんだ。」
結友は「わかってる」と相槌を打つ。結友は、俺に何か言おうとしたが、寸前で止めた。俺は不意に時計を見る。指しているのは、8:27。だいぶ長いこと話したおかげで時間に間に合いそうにない。俺は、焦りを感じ、すでに身支度ができていたから、ダッシュで玄関へと向かった。だが、俺が靴をはいた段階で、結友に止められた。俺は、焦りを隠し切れない様子で結友の事を見る。
「ねぇ..僕もついて行っていい?」
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俺と結友は結局十分近く遅刻した。いや、まだついてすらいない。行きの電車の中だ。俺は、底知れぬ焦りと不安につぶされそうになりながら、電車に揺られる。俺は、取り合えず何か連絡が来ていないか確認するために携帯電話を開く。着信はなかった。こういうとき、京子さんは連絡してきそうだが..と思ったが、特に気にする事でもないと、割り切った。
「御免...僕のせいで...」
結友は非常に申し訳なさそうにいう。俺は、目を見開いた。普段の彼の発言や行動からは、想像できないほどおとなしい。いつもはもっと自信に満ち溢れ、自分は悪くないとでもいうように、ものを上から語るのだ。そんな結友が今じゃ借りてきた猫の様にしゅんとしてしまっている。俺は、そんな結友を見て、どことなく懐かしみを覚えて、結友の頭をなでる。男の頭をなでるという感覚にはならなかった。俺は、結友の顔を見ながら、今出せる最高の笑顔で言った。
「別にお前のせいじゃねぇよ。気にすんな」
「...辰巳はやさしいな。いつも変わらず!」
結友は、そういうと、俺にも笑顔を返してくれた。そのおかげで、遅れたとか、そういう事の不安が飛んだ。贈れたという罪が消えるわけではないが、遅れたことによって受ける精神的ダメージが少し、いやだいぶ軽減されそうだ。
俺は、出したまま、握りっぱなしの携帯をポケットにしまった。その時だった。不意に覚えのある違和感を感じる。朝に感じたものと一緒だ。俺は反対側窓の外を見る。異常はない。俺は振り返って後ろの窓の外を見る。途端、電車が緊急停車した。瞬間、大きな揺れが、この一帯を襲う。結友は、状況が分からずただ「何!?」と繰り返している。俺も、状況がつかめそうになったが、時に人は、自分が思っている以上の能力を発揮することがある。俺は戸惑うことなく、また窓の外を見る。俺は、眼を見開いた。窓の外の世界にいたのは、二体の巨大兵器の影だった。普通ではありえない光景、住宅街に、日本の二足歩行兵器がいるのもイレギュラーなことなのに、それに加えて、ドイツ機がいる。日本はドイツの兵器を鹵獲した記録はないのだ。つまり、これは日本にとって初めての本土攻撃であり、俺たちの絶体絶命だった。俺は、何とかあの日本の兵器が勝つことを願った。見たことがないということは新型だ。新型なら何とかできるはずだと思った。だが、明らかに動きが鈍い。日本の今の現役の二足歩行兵器はトップヘビーだが、それでもスポーツカー並みの速度で、走ったり、パンチを繰り出したりする。だが、あいつは、いわゆるロボットという感じで、動きが不自然で、動きの重みが凄まじい。あれでは、機動力重視で、怪力のドイツ兵器には遠く及ばない。目の前で戦っている日本兵器が繰り出した、へなちょこパンチは、案の定、ドイツ兵器の怪力に抑えられ、一回り程上回っている、日本兵器を持ち上げた。俺は慄然とした。今置かれている状況において生存できる可能性は一%程度だろう。目の前のドイツ兵器は迷うことなく、日本兵器をこちらへとぶん投げてきた。俺は反射的に結友の事をかばう。体が浮いた感覚。電車のボディがきしみ、歪んで悲鳴を上げる。岩が大量に砕かれ、地面と激突する音、電車に乗っていた人殆どの悲鳴と、電線が切れて電気がバチバチとなる音。そして、かすかに認識できる、大量の赤いもの。それから香る金属臭。そのすべてが混ざり合って、認識が付かなくなっていく。粉塵、そして鉄の香りが混ざり合ってむせかえる。目の前の世界は歪んで何も見えない。何が起きたかも理解できない。理解できるのは、人が大勢死んだことと、その死んだ人間の中に俺も入るという事。
そこまで理解が追い付いたところで、すぐに、結友のことが頭をよぎる。瞬間視界が晴れる。感覚がほとんどなくて気が付かなかったが、すでに俺は地面に寝転んでいた。俺は勢いよく起き上がると、結友を探そうとした。だが、だが俺は、周りを一瞥したところで、固まってしまった。一面に人かも見わけのつかない肉塊が転がり落ちていて、酸素に触れ、どす黒くなった血がそこら中に飛び散っている。その光景だけで嘔吐感が押し寄せる。瓦礫が、そこら中に転がり、その下から手が出ていたり、直ぐ右側を見ると、全体が歪んだ電車が転がっていた。俺は、その中で、俺はうつむきに倒れている人影を見つける。俺は、その人影に向かって駆け寄る。俺はそれがすぐに結友だと分かった。俺はうつぶせになった結友を、起こす。そして戦慄した。同時に涙もあふれ出てきた。結友の胸元に大きな打撲跡と、一部肋骨が見えてしまっているところがあった。俺は、吐きそうになったがそれをどうにか抑えると、とっさに彼の脈を確認する。...ない。息を確認するが当然のごとく呼吸もしていない。恐らく、胸を強打し、心臓と肺は即とまったものだと考えられる。それにこの傷...普通なら生きている望みはあるはずなかった。俺は結友の事を、やさしく抱きしめると、開きっぱなしになっていた瞳を手でそっと閉じる。
そして、死んだ親友を地面にやさしく置くと、俺はドイツ兵器に向かって、にらみつける。それに反応するようにドイツ兵器がメインカメラで俺の事を見る。その無機質な目は、まるでそこら辺の蛆虫を見るようだった。
Thank you for reading.
Please expect next part.