ハイスペック超人は本気を出すようです。
遅くなってすいません、ようやく話がまとまりました。
地の牢獄を取り込んだでかスライムは見る見るうちにHPを回復していき、ほとんど満タンになってしまった。
「ボスが回復するのは反則じゃね?」
シュバッ!
「うおっ!危ねぇっ!!」
でかスライムが何本も針を飛ばしてくるのを、傾斜のある壁を築いて左右にそらす。
「遠距離攻撃するわ、魔法を吸収するわ、ホントえげつねぇなぁ⋯⋯。こうなったらネタとして考えてたあれをイチかバチか使うか?でもほとんど使い慣れてないしなぁ⋯⋯。」
でかスライムの対策を考えている間にも、壁はスライムの攻撃を受けて少しずつ、しかし確実に崩れていく。このままでは壁が破壊されるのも時間の問題だろう。
「くそっ!やるしかねぇ!」
覚悟を決めた俺は、地面に手を付ける。周囲の土が集まる、俺の腕に纏わり付いていき、元の太さから考えると二回りも大きな腕が形成される。
前から考えていた、しかしネタとしか思えない戦闘スタイルである、魔法を使った肉弾戦である。
「地の装甲、完成。手は⋯⋯問題なく動くな。MP消費を除けば。」
確認を終えた俺はいまにも崩れそうな壁に手を置き、魔力を流す。魔力暴走により壁が爆散し、破片がでかスライムに当たって少しの間ひるませる。
その隙をついて俺はでかスライムの懐へ飛び込む。全力で殴りつけ、そこから拳に針を形成して追加ダメージを与え、さらに過剰なMPを込めて爆発させる。
「オラオラオラオラァァ!!」
殴る。針形成。爆発。爆発で飛び散った土も、瞬く間に腕に戻っていく。そして再び殴る。針形成。爆発。ただひたすらに繰り返してでかスライムのHPをガリガリ削っていく。
でかスライムも負けじと土を取り込んで回復を試みるが、土は周囲からいくらでも補充される。しかも取り込んだ土が魔力暴走により爆発し、回復どころかさらにでかスライムのHPを減らしていく。
シュババババッッ!!
土を取り込むのを諦めたでかスライムは、今度は俺に向かって針を飛ばしてくる。その数が尋常じゃない。さっきは1,2本だったが、10本を軽く超えている。
「効かねぇよ!」
しかし俺は飛んでくる無数の針を両手で掴む。手の中でもがいているがそんなことお構いなしに
ドパァァンッッ!!ドパァァンッッ!!ドパァァンッッ!!
手の内側を爆発させる。何度も、何度も、何度も。10回ほど繰り返すと手の中の反応がなくなったので、掌を開く。針の残骸は見る間に光となって消えていく。それにつられてでかスライムのHPをぐんぐんと減っていき、ついに残り2割弱となった。
「もうさっきのような失敗はしない、ハァァァ!!!」
両手を合わせて指を使って筒を作り出し、中に土とMPを圧縮するように詰めていく。でかスライムはさっきの攻撃の反動なのか、ひるんで動けずにいる。その間にも筒の中は満たされていき、周囲に銀色の光が漏れ出している。
「大地の染みになりやがれッ、地の魔導砲ァァァァァ!!!!!」
ドゴォォォォォッッッッッ!!!!!
筒から発射されたそれは質量の暴力となって進行上のすべての障害物、でかスライムやその背後の木々を貫いていく。そして次の瞬間、
バババババァァァァァンッッッッッ!!!!!
極限まで入れられた魔力が爆発、否、爆裂を起こし、貫かれた全ての物を木っ端微塵へと変えていく。
《プレイヤー名キジンにより、エリアボス、でかスライムが討伐されました。エルフの街、ミストフォレストへの道が開かれました。》
〈エリアボス、でかスライムを討伐しました。初回討伐報酬を手に入れました。ソロ討伐報酬を手に入れました。〉
どうやらこれで次の街へ行くことが出来るようになったらしい。しかし今俺は
「ぐはぁっ!」
地の魔導砲の反動で空高く吹っ飛び、今ちょうど落下ダメージで死亡し、街へと送り返されるのであった⋯⋯。