ハイスペック超人は魔法を使いこなしたいそうです。
「どうかしましたか?まだ何か用ですか?」
「この詠唱って短くできないのか?」
「えっ?」
どうやら思ってもなかったことを聞いてしまったようだ。仕方ない、今回は諦め--
「やろうと思えば可能ですが、結構大変ですよ?」
「え、出来るの?」
「はい。そのかわり、使いこなせるようになるまではかなり大変ですよ?」
「ぜひ、やり方を教えてくださいっ!」
速攻でナビさんに教えを乞うのだった。
「それではまず、先ほどの様に土に触れて壁を作るイメージをしてください。この時に詳細にイメージしないといけませんので、ぜひ頑張ってくださいね。」
さっきと同じように、土が集まって壁を築くイメージをする。
「では次にそこに魔力を流してください。先ほど魔法を使ったときに流れたと思うので、何となくですが分かると思います。大量に流し込むと操作しやすいですが、魔力枯渇や魔力暴走を起こすこともあるので気を付けてくださいね?」
言われたとおりに俺の腕から不可視の何か、魔力を土に流し込んでいく。⋯⋯まあ、こんなものだろう。
すると目の前の土が俺の背を優に超える大きな壁を築き上げていき⋯⋯崩れ落ちた。
「あれ?なんでだ?壁のサイズもちゃんとイメージしたし、MPもちゃんとつぎ込んだのに。」
「おそらくですが、土を集めるイメージが足りていなかったのではないですか?多分ですが密度が足りなくなり、自重に耐えきることが出来ずに崩れ落ちたのだと思います。」
そう言われてみれば一理ある。ということで、今度は大量に土が集まる姿をイメージしてもう一度壁を作る。
すると今度は壁が出来上がる速度が遅い。
「おそらく操る土が増えたことで必要な魔力の量も増えたんでしょうね。」
「じゃあMP追加するか。それっ。」
「あっ、駄目です!下手に魔力を追加すると
ドパンッ!
魔力暴走を起こして暴発する恐れがあるのでと言おうとしたのですが、遅かったですね⋯⋯。」
腰辺りまで出来上がっていた土が爆散して、もろに土をかぶってしまった。
「ゴホッゴホッ⋯⋯。次からは気を付けるわ。じゃ、もう一回!」
壁を築く。今度は薄っぺらい。こんなんじゃまともに防げない。
壁を築く。込めたMPが多すぎて速攻で壁が築かれ、すぐ近くにいた俺はもろにアッパーを食らう。
壁を築く。なんか泥っぽい。すぐに崩れ落ちた。もろに泥をかぶってしまう。
「なかなかうまくいかねえなあ⋯⋯。あの金髪錬金術師みたいにやってみたいんだけどなあ。実際に錬金術を併用してみたら案外うまくいったりして。」
「あ⋯⋯。」
「ん?ナビさん、どうかしたのか?」
「錬金術を一緒に使えばうまくいくと思います⋯⋯。」
「そういう事は先に言って⋯⋯。で、どうするんだ?」
「心の中で錬金術を使いたいと念じれば、後は分かるはずです。」
「分かった、やってみる。」
言われたとおりに念じてみると、頭の中に何かが入ってくる。錬金術は基本的に物質を理解し、それを任意の形に再構築する技である。
土の壁を築くイメージをすれば、どれくらいの土を集めればいいのか、どれほどMPを込めればいいのかが自然と理解できる。
目の前の土が壁を築き上げる。イメージ通りに自分と同じくらいの大きさの壁が出来上がる。
「⋯⋯強度、大きさ、共に申し分ないようですね!成功です!」
ナビさんが壁を叩いた後、振り返ってそう告げる。
「よっしゃぁぁぁ!!!」
その後、俺はナビさんと一緒に様々な魔法の特訓をするのだった。