ハイスペック超人は装備の製作依頼をするようです。
コンコン。
「失礼しまーす⋯⋯。」
ドアに張り付けてある、『ノックをしてから入るように』と丸文字で書かれた張り紙の通りノックをし、恐る恐る中へ入ると、目的の人物がいた。
「⋯⋯ん。⋯⋯キジン君。⋯⋯教授から話は聞いてる。⋯⋯⋯⋯素材、出して?」
ベッドの上でぬいぐるみに埋もれていたユイさんが部屋に入ってきた俺に気付くと、ぬいぐるみの山からもぞもぞ這い出してくる。
服の乱れを軽く直し、ぬいぐるみたちをきれいに並べなおすと、ユイさんはそう言って部屋の中央にあるテーブルを指さした。指図通りに俺はテーブルの上にスライムの体液入り瓶、でかスライムの核、角ウサギの角と毛皮、ウルフの牙と爪と毛皮に肉、その他錬金素材等々⋯⋯大量の素材を置いた。
「こんなんだけど、いいのか?魔石とかもほとんど無いし⋯⋯。」
「ん、充分⋯⋯。性能の希望はある⋯⋯?」
性能か⋯⋯。特に考えていなかったが、ウルフリーダーとの戦いではMPの枯渇が原因で負けたのを思い出す。幾らか節制で消費MPが減っているとはいえ、消費MPにMP自動回復が追い付いていない。そう考えるとどうにかしてMPを消費しない有効な攻撃手段を持つべきなんだが⋯⋯。
「格闘術と魔法を使うから武器はナックルみたいなので、防具は動きやすいように軽装が良いな。後、出来たらでいいからMPの消費を抑えられるようにしてほしいです。」
「⋯⋯分かった。⋯⋯今から作るから、どこかで⋯⋯時間を潰してきて。完成したら連絡する⋯⋯。お金はあとで請求する⋯⋯。⋯⋯今は作るのに集中したいから⋯⋯。」
机の上の素材を確認しながらユイさんがドアを指さして言う。確かに集中している最中に声とか掛けて欲しくないし、気配だけで集中が乱れるというのもありうる。
俺は黙々とメモを取り続けるユイさんを邪魔しないように、そっと部屋から出たのだった。
「おや、これはこれはキジン殿ではござらぬか。丁度良かった、今からきらら殿と一緒に鍛錬場に行くのでござるが、キジン殿もついて来るといいでござる。」
「あらら~。キジンさん、貴方も捕まっちゃいましたか~。これで3人ですねぇ~。何かあったらぁ、私が治してあげますから、安心してくださいね~?」
部屋を出て蜂合わせた、いや、待ち構えていた武蔵ときららさんに声を掛けられ、左右から腕を掴まれて反論の余地なく連行される。あ~れぇ~。