ハイスペック超人は夜の草原に出かけるようです。
「さて、着いたはいいけど昼間とはだいぶ雰囲気が違うなコレ。」
草原に着いた俺は辺りを見渡しながら言った。昼間はウサギとスライムしか居なかったが、日も暮れて月明かりの照らす夜となっては(とはいっても明け方が近いが)猫と犬?否、狼しか見当たらない。
月明かりが照らしているとはいえ今は草木も眠る丑三つ時。辺りにはちらほらと異郷人の姿もいることが気配で何となくわかるが、こうも暗いと10m先が見えるか見えないかといった具合で不意打ちを受けないかひやひやする。
まあ、気配察知してるから万が一にもそれはあり得ないわけだが。
「猫又に、ウルフか。なんだかファンタジー感が急に出てきたな。とりあえず先手必勝、地の針!」
8メートルほど先の茂みの中にいたウルフに攻撃する。ウルフは空高く打ち上げられたが何とか体勢を立て直して着地し、こちらに向かって襲い掛かってくる。
食い殺さんとばかりの勢いの神月をギリギリで避けるとともにカウンターで殴りつける。それと同時に、俺の右横腹に鋭い痛みが走った。
「痛っ!⋯⋯噛みつきだけじゃなく、爪で引っ掻いてきたのか。これはなかなか侮れないな。」
そう言うと俺は拳に土を纏わせる。一度攻撃が当たったことで俺を格下とみなしたのか、再びウルフが襲い掛かってくる。
「⋯⋯ッ!ここだぁ!」
勝負は一瞬。ウルフがとびかかってきたその瞬間、その軌道上に拳を持ってくる。一度飛び掛かってしまったウルフは空中でその軌道を修正することが出来ず、俺の拳がウルフの顔面を見事に捉えた。
拳に魔力を流すと同時に土が爆発四散し、ウルフに襲い掛かる。文字通り目の前で直撃を食らったウルフはその衝撃に耐えきれず、光となって散った。
「そういえばこの技、名前を決めてなかったな。⋯⋯名前は、そうだな。シンプルに地の拳でいいか。あまりにも長かったりするのもアレだし。」
ウルフも無事に倒し、ウキウキしながらウィンドウを開きドロップ品を見てみると、そこにはウルフの牙が1つ手に入っていた。
「そういえば狼っていえば、よく集団戦のイメージがあるよな。ちょっとやってみるか。」
挑発で周囲のウルフを試しに集めると、今度は3匹のウルフが現れた。
「それじゃあ今度は集団戦の練習でもしてみますかね。いくぞォォォッッッ!」
こちらに向けてうなり声をあげ警戒態勢でいるウルフたちに向かって、俺は駆け出したのだった。