ハイスペック超人は錬金術に手を付けるようです。
先ほどやった料理とは違い、初級錬金術セットの中身は至ってシンプルである。
「まさか魔法陣の書かれた大きな布1枚だけとはな⋯⋯。」
布には正三角形が互い違いで重なって描いてあり、それを囲むように二重円が描かれ、その外側に六つの円が描かれている。
閑話休題。
それでは始まりました、キジンの錬金術コーナー!
まずは前回のクエストで余っていた薬草1本を外側の円に置きます。
そして錬金術のアーツの1つ、『乾燥』を使います。するとあっという間に薬草が粉末状になりました。
今度は他の円に水の入った小瓶を1つ置きます。ここで今度は『合成』のアーツを使います。すると、薬草が消えて小瓶の中の水が緑に染まります。
そして最後にこれが重要!MPをつぎ込みます。ここでケチったら品質が悪くなるので注意をすること。込めるMPは大体50くらいかな?
すると小瓶がぴかっと光ります。これで初級HPポーションの完成!
初級HPポーション
品質:A
製作者:キジン
一般に売られている初心者向けのポーション。とても苦い。
飲むとHPを50回復する。
「んー、やっぱりおかしいな。なんでポーションが2個出来てるんだ?」
材料は1つ分しかないのに、ポーションが2つある。料理の時も材料に対して出来上がった料理が多いなーとは思っていたが、やはり気のせいではなかった。
「新手のバグか?⋯⋯とりあえずナビさんに連絡しとこう。ナビさん経由で運営に伝わるだろ、きっと。」
ここで直接運営にコールすればいいのを忘れているあたり、キジンが焦っている証拠だろう。
何度かのコール音の後、ナビさんが現れる。
「ナビさん、重要なことがあるんだけど⋯⋯」
「材料と完成品の数が合わないことですね。それなら問題ありませんよ。」
「⋯⋯え?まだ何も言ってないのになんで分かるの?ナビさんってもしかしてエスパーなのか?」
「違いますよ。キジンさんのログを確認しただけです。きっと混乱して連絡が来るかなと思ってましたし。」
言われてみればアカネさんと会った時もログを確認したとか言っていたな。まあそれはそれとして、
「で、数が合わないのに問題ないのはなんでなんだ?」
「キジンさんのスキル、節制の影響ですよ。ありとあらゆる消費を半減する、つまり本来の半分の量で1つの物を作り出せるのです。またそれを返して言えば、1つ分の材料で2つの物が出来るということですよ。」
「あー何となく分かった。だけどありとあらゆる消費って?それを言うなら材料の消費を半減するって表記するだけで済むんじゃないか?」
「んー、この先は言ってもいいのか分からないので、ちょっとお待ちくださいね。」
そう言うとナビさんはちょっと確認してきます、と言って消えたのだった。