ハイスペック超人はレベリングをするようです。
「⋯⋯とりあえず、ここを出ようか。俺はともかく、アカネさんにとって戦い辛いことこの上ないだろうし。」
そう言って俺たちは森を抜けだすことにした。途中のモンスターは気配察知を使って回避していく。
そして数分後、何事も無く無事に俺たちは森を抜けられたのだった。
「あー、もうすっかり日も落ちて来て夕方になってる。森の中だと全然気付けなかっただろうなぁ。」
実はこのOne More Time OnlineことOMTは、現実世界の4倍の速さで時間が流れている。これは昼間にログインできない社会人や学生がゲーム内で時間限定のイベントに参加できるようにするため、と、説明書に細かく書いてあった。
「そうですね。まずは早く街に戻りましょうか。」
「いや、どうせだからここらでレベル上げをして進化してからにしよう。街に戻ったところでまた勘違いされるのは嫌だろう?」
「あ⋯⋯それもそうですね。では、先ほど話した通りに。」
森を出る際に話し合っていた通りの手順で、まずは
「挑発。」
余っていたスキルポイントを使って、元々取る予定だった『挑発』のスキルを使う。まぁ、今は気配察知と統合されて気配操作というスキルになったが。
挑発を使った瞬間、周囲の空気が大きく変わった。気配察知で感じ取ってみても、周囲のモンスターがまとめて俺たちの周囲へと集まってきている。
「地の壁、からの地の針。」
足元に2メートルほどの壁を作って足場を高くし、近づかれたり上ってこられないように返しを付ける。
そうしている間にも周囲は寄ってきたウサギ型のモンスター、角ウサギによって埋め尽くされている。きっとこの光景はモフモフ好きにはたまらないだろう。
「今度は私の番ですね。火炎・鬼灯。」
アカネさんが魔法を唱えた瞬間、宙に赤く輝く鬼灯が視界一杯に現れる。ほんのりとした輝きで熱さも感じないのに、確かに燃えている。
そして鬼灯はゆっくりと角ウサギに向かって落下していき
爆音と共に爆ぜた。
爆発に巻き込まれた鬼灯がさらに爆発し、どんどん連鎖していく。が、その鬼灯の量がえげつない。
数十秒後には、辺り一面の角ウサギは光となって消えていた。
「うわぁ、えげつねぇ⋯⋯。」
「ほら、今度はキジンさんの番ですよ?」
「あ、ああ。分かった。」
再び挑発を発動させ、辺り一面角ウサギで埋まり尽すまで待つ。
「そろそろかな。地の海、地の針。」
その瞬間、一面を埋め尽くしていた角ウサギは地面の中へと沈んでいく。沈んだ後は針で串刺しにして、一斉にとどめを刺す。
こうして俺たちはアカネさんのレベルが10になるまでレベリングをするのだった。