カミサマ
あの子に、カミサマは言いました。
「僕から離れないで、僕を離さないで、僕をどうか独りぼっちにしないでよ。」
カミサマは昔話を語り始めた。
1520年前の話この村に一人の少女がいた。
リィ・ララノア・エリゥーンという娘がいました。
カミサマはこの村ができるずっとずっと前からいました。
気がついたら、見も知らない場所にいたカミサマは、湖に住み着いたのはこの村が出来るのと同じ時期でした。
カミサマは帰れないことに本能的に気がついたので、この村で大切なものを見つけたい。
カミサマはそう願いました。
その後湖にリィという少女が母の病に効くという薬草を独りで探しにきたそうです。
リィという少女は、カミサマに薬草をください。
リィという少女はそう言いました。
カミサマは、リィに薬草を渡すかわりに話に来てくれとそう言いました。
リィは、その後湖に来てカミサマとお話をしました。
この村の起源、毒草と食べれる草の違い、弓、カミサマはとてもとても博識でした。
リィは、カミサマに名前を聞いた時カミサマは何も答えれませんでした。
カミサマは世界を彷徨う旅の途中に名前を失ってしまいました。
カミサマは名前についてこう言います。
名前なんてその人がその人である証明でしかない。
名前なんて意味がない。
リィは、カミサマに朧と名前をつけました。
リィは、ずっとずっとカミサマと一緒でした。
村のエルフ達からはリィのことを化け物を見るように見ました。
リィは、病で死んでしまいました。
カミサマは涙を流し続ける。
涙はやがて村を沈めました。
たった一人のエルフだけがこの村で生き延びれました。
そのエルフはリィの唯一の息子でした。
そしてカミサマは、湖でずっとずっと独りでいよう。
リィの唯一の息子とも関わらないで化け物として見せないために、カミサマはこの村の祟り神になろう。
いつかは英雄に、リィの子孫に殺されたい。
リィの子孫にカミサマのモノ全てを与えてカミサマのことをずっとずっと覚えていてほしい。
誰一人エルフ達も守れなかった。
リィの子孫達は守れなかった。
君を守りたいんだ。
だからアグラリアン・ララノア・エリゥーンよ。
僕を独りぼっちにしないでよ。
ずっと君の隣にいさせてよ。
それも出来ないのなら僕を殺して、殺して、殺しておくれよ。
帰りたかったんだ。僕の妹で料理も出来ないからいつも料理を作っていた大切なモミジ。
僕のことをいつもいつも心配してくれた君のいる世界に帰りたかったんだ。
帰りたかったんだ。
僕のことをマスターと言っていた消しゴム少年
自称ドッペルゲンガーで影に居続けた朧くん。
僕は朧じゃない。僕は君みたいに偉大じゃない。
帰りたかったんだ。
この不幸で幸せで平和で危ない日本に帰りたかったんだ。
日本に帰りたかったんだ。
アグラリアン・ララノア・エリゥーン
じゃあ、必ず一年に一回帰って来てね。