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呪われた姫の婚姻  作者: 翠葉
第1章 婚約準備
9/10

計画を立てよう

 翌朝。日の出と共に目が覚めた私は、シュミーズのまま机に向かった。

 貴族が起きるにしては早すぎる時間帯だし、仮にも王族が一人で着替えるとメイドの仕事がなくなる。だからと言って人を呼ぶわけにもいかないからだ。今屋敷中の窓を開けたり、かまどに火を入れたり、掃除をしたりと目の回る忙しさで、使用人としては『頼むから寝ていてくれ』と言いたい状況だろう。


 私は塔で過ごしていた時、日の出と共に起きて、日没後は夕食に足湯、歯磨きを終えたら早々に寝てしまう生活をしていたので、自然とこの時間に目が覚めてしまうのだ。


 何故なら、夜はなにもする事がなかったから。

 正直、私にとって蝋燭やランプの明るさでは暗すぎたのだ。電灯と比較する事自体間違っていると解っているけど、手元がぼんやり見える程度の明るさで刺繍や読書をする気は起きず…それならいっそ早寝しようという発想に至った。

 前世じゃ夜型だった私も、今ではすっかり朝方人間。お陰で夜は熟睡出来るし、朝から食事は美味しい。前世で何故早起きしなかったのかと悔やまれるくらいだ。


 …まあ、夜しか自由時間が無いのに早々と眠れる訳なかったんだけど。


 ともあれ、ベッドメイクや着替えはメイドが起こしに来てからでいいとして。これからの計画を立てようと思う。

 

「お披露目の夜会は…確か、1か月後。その後王と王妃、妹に対面して…

 隣国に行くのは、多分もう少し先よね。嫁入り道具の事もあるし」


 分かっている範囲内での予定を書き込み、やらなければならない事を書き出していく。思いつくままに書いて、重要度に応じて数字を振る。


 まず、ダンスを覚える。

 できれば基本のワルツから今流行りのステップが難しいものまで…淑女として、踊れない曲がある事こそ恥になる。先生にはみっちり仕込んでもらおう。


 それと同時進行で、体力と筋力の底上げ。

 ダンスは全身運動。それは筋肉痛で思い知ったから…同じ全身運動を毎日する事で鍛えていく。


「全身運動って何があったっけ…水泳は無理ね。足を見せるのも淑女的にはダメなんだし」


 この時代にビキニやセパレートの水着なんて、下着にしかみえない。ダイバースーツが再現出来たとしてもダメだろう。体の線、丸見えだものね。

 しかし、そうなると他に挙がるのはランニング、エアロビクス、ウォーキングに縄跳び、ヨガとか…ストレッチ。ラジオ体操。

 まず、ランニングは却下。淑女たるもの優雅にゆったりとした動きを求められる。走るどころか小走りでもはしたないと評価されるだろう。王族の姫がそれではいけない。

 ウォーキングは出来るだろう。日傘にドレス、ハイヒール装備なのが不安だけど、早歩きの速度で庭を回ればいい。


「エアロビとヨガは良く知らないから却下して…縄跳びは、保留かしらね。遊びとして広めるのは有りかもしれないわ。

 ストレッチにラジオ体操、ウォーキング。実現できそうなのはこれくらいね」


 ただ、ストレッチは床でするわけにもいかないので、伯爵に頼んで硬めのカウチソファーを寝室に運んでもらう。腹筋や腕立てなんかもそこでやろうと思う。ベッドじゃ中綿が柔らかすぎて不安定だし…

 他には、国内とリンデラント王国の主要な貴族の名前を憶えて、この国にいる間にお茶会を一度主催しておきたい。向こうに行ったら失敗なんてできないんだし。

 

「うん、だいたいこんなところかしらね」


 あとでローラに見せて、足りない部分を書き足して貰うことにする。ひとまず書き物を終えた私は…早速足の筋肉を鍛える為スクワットを開始したのだった。



――――――――――――――――――――


「姫様、今日の午前中に神父様がいらっしゃるそうですよ?」

「神父様が?神学の授業は来週ではなかったかしら」


 朝食をしっかりとって、食後のお茶を飲みながら今日のスケジュールを聞くと、意外な人の訪問があるという。

 神父様は、王宮にある教会の管理者であり、幼い私に神学を教えてくれた先生にあたる。

 なにしろ、呪いだの、悪魔憑き(これは大きくなってから聞いたんだけど)だのと物騒な噂が囁かれる私だ。前世では信仰心なんてなかったけど、今では神様はいると信じているし、何より教会から魔女として告発されてしまうと、リアルに命の危機なので真剣に授業を受けた。有名な聖句は暗唱出来るくらい頑張った。

 おかげで、神父様からは敬虔な信者との評価を貰えている。神父様は時には他の貴族との橋渡しにもなってくれるので、今回の訪問は多分そちらの用件だろう。


「なんでも、クリスチアーナ様から伝言と贈り物を預かっているのだとか。昨日先触れが参りましたよ」

「贈り物?私何かしたかしら」

「お見舞いの品だそうですよ。先日寝込まれた事、噂になっていますからね」

「あ……」


(済みません、ただの筋肉痛と体力切れなんです…)

 

 何だか貰う前から申し訳なくなってきた…妹よ、こんなお姉ちゃんでごめんね。

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