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呪われた姫の婚姻  作者: 翠葉
プロローグ 呪われた姫
3/10

胡蝶の夢

 それからの『私』は寝ている時と授乳の時以外はほぼ泣き通しだった。

 そりゃあ、転生とか逆行とかいう設定のアニメや漫画、小説だってたくさん読んだよ?マイパソコンのブックマークにはその手のサイトが真っ先に来るくらいに。


 でも、だからって自分自身が転生したって信じられるはずがない。そもそも『私』は死んだ記憶すら残ってなくて…


 そして、質が悪いことに…眠ると毎回――――ものすごくリアルな『現代日本にいた私』の夢を見る。

 多分、今の赤ん坊の生活に刺激がなさすぎるせいで、夢がやたらと鮮やかになったんだろう。脳が刺激を求めてのことだったんだろうけど…


 目が覚めたら赤ん坊で。泣いて、授乳やらおむつやら世話されて、疲れて眠ったら『赤ん坊になる夢』を見た『私』が飛び起きる…


 割と本気で気が狂うかと思った。胡蝶の夢ってやつは体験するもんじゃない…


 でも、発語どころか泣くことしかできない赤ん坊がそんな事情話せるはずないし。感情の抑えも効かないから本当にギャン泣き。泣きすぎて熱を出すくらいに絶え間なく泣いてた私の事、正直乳母や侍女も持て余していたんだと思う。

 王家の人間の世話役に選ばれるくらいだから、みんなやる気も責任感もある人達なんだけどね…何事にも、限度があるって事。


 ただ、間の悪いことに…私たちを生んだ母親。この国の正妃にあたる人が、産褥期から回復しきれず死んでしまった。双子だったし、初産でもあったから母体への負担が大きすぎたんだと思う…それに、この国の医学はまだ未熟みたいだし。


 オマケに…っていうか、これに関しては本当に私のミスなんだけど。

 授乳が終わって、歩き始めて…そう、私たちが1歳とか、それくらいの時期の事…『私』の異常性がはっきりと周囲に知られてしまったの。

 訳の分からない言葉(日本語なんだけど)を喋り、意味不明な文字を書き(これも日本語だったけど)訳の分からないことを言う(この国と日本じゃ常識そのものが違うし)


 こんな条件が重なって、私はいつの間にか周囲に『呪われた姫』とか『悪魔憑き』とか呼ばれるようになってしまった。

 それだけならまだしも、お母様が死んだのは私のせいじゃないか、だとか…

 そんな噂が貴族達の中で囁かれるようになって、それを聞いたお父様が、真に受けてしまったのか…あるいは、悪魔憑きとして教会が私を『始末』しないよう手を打ったのか。


『私』マリアンヌは、二つを少し過ぎた頃、唯一残った乳母とともに、この塔の最上階の住人になる事になったの。



 ――――――――――――――――――――――――――――


「――――あれから、13年…」


 小さく呟いた自分の声に意識が現実に戻ってくる。

 お茶を飲んだ後一心不乱に刺繍していたせいか、出来上がった薔薇のブーケの図案はそれはもう細やかで鮮やかな仕上がりになっていた。


(うん、いい出来)


 前世じゃエプロン一枚縫えなかった私だけど、外出は週に1度、監視付きで塔の屋上に行くのみって監禁生活を送る内に、刺繍やレース編みは特技になっていた。読書は昔からの趣味だけど、本は割と高価なので次々新しいものを買うわけにはいかないし。

 あとは、得意じゃないけれど静物画のスケッチとか、カードゲームなんかもよくやる。要するに、室内での暇つぶしはだいたいやってるかんじだ。楽器は高いから、音楽は全然なんだけどね。


「姫様、そろそろ手を止めて下さいまし?夕食前に掃除を致しますから」

「そうね、刺繍の後だし。床は掃いた方がいいわね」


 ドレスに糸くずがつかないように、膝の上には布を広げてるんだけど床まではカバーできない。私は素直に頷いて膝の布をローラに手渡した。


「やはり今回の事不安に思いますか?」

「え?」


 床を手際よく掃きながらローラは言葉を続ける。


「姫様は何か悩んでいると、決まって作業に熱中なさいますから」


 流石生まれた時からの付き合い…私の本音はすっかりお見通しであるらしい。

 そういう相手がいることはすごく嬉しい事に違いない…それでも私は笑ってこう口にした。


「大丈夫よ。なんとかなるわ」




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